四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

文字の大きさ
上 下
117 / 254

110話 安定プレイ

しおりを挟む
 俺達が得た経験をレスティー班に伝えて彼らに交代したのは、最初の十字路へと戻ってからのことだった。
 十字路の左側は探査終了。
 次は中央と右側だ。
 
「じゃ、後は頼んだから」
「まったく、気楽に言ってくれるぜ」

 軽い口調の俺にユーベルトがぼやく。
 その表情はまさに〝鬱だ死のう〟と言わんばかりだ。

「トシオくん、本当に僕達だけで大丈夫かな?」
「危なかったらすぐに援護射撃を入れるから心配するな」

 ユーベルトと同様に不安を口にするアレッシオを安心させるため、昨日言った〝書き肉食い放題だ!〟と同じ明るさで言葉を返す。

 まぁアレッシオに比べて、ユーベルト達前衛の方がよっぽどプレッシャーが強いだろうけど。
 俺のPTにはククというメイン盾が居てくれるので、後方に敵が流れてくる心配が極めて低い。
 それが俺達の支柱となり、後衛は安全に火力や回復などの支援に徹することが出来ている。
 極端な話、前衛のお仕事とは後衛の壁であり、一匹も敵を通さないことに他ならない。
 ましてや俺達の冒険者としての稼働期間は短く、本来ならばまだ駆け出しの初心者といったところだ。
 実戦の経験値が圧倒的に不足している。

 俺は魔法職故か、なんかもう慣れちゃったけど。

「手本は見せただろ? 冒険者なら文句を言う前にやってみせろ」
「はいそうですかって出来るかよ!」

 未だに暗い顔をしているユーベルトに言いつけるも、きっぱり出来ないと言われてしまった。

 ユーベルトは反射神経が良く運動性能もそこそこ高い、敏捷性を生かせばデスナイトにだって引けは取らないはずだとにらんでいる。
 そもそも、クレアル湖のデブワニと比べたら全然余裕なはずだ。
 一体今更何にビビっているんだか。

 ユーベルトの隣では、ディオンも緊張気味といった様子。
 しかし、ユーベルト程あたふたもしていない。

「ディオン、あんたはどうだ?」
「そうだな……最上級職にジョブチェンジした上に、異世界人と同等のステータス補正も入っている。彼女達程とはいかないだろうがやってみせるさ」

 ディオンが遊んでいるトトとメリティエに目を向け、肩を竦めながら言ってのけた。
 流石中級冒険者だ、潜って来た場数が違う。

「あたしもディオンと同意見だ。けどね、迷宮でもデスナイトの居る階層は〝死に易い場所ホットスポット〟と呼ばれるほど危険な場所だ。もしもの時はよろしく頼んだよ」
「任せろ」

 リザードマンのクサンテが珍しく緊張した声音で俺に念押ししてきたので、俺も真剣な顔で頷いた。
 俺のPTのククの立ち位置を、レスティー達のPTはクサンテが受け持つ。
 いくら鬼教官のクサンテ姐さんとはいえ、プレッシャーを感じても不思議はない。

「ユーベルト、お前は兎に角場数を踏め、何も一対一でやり合えって言ってるんじゃないんだから。てかデスナイトなんて倒したらモテるんじゃないのか? 女性冒険者からしたらその辺どうなんです?」
「お姉さんだったら意識しちゃうかな~」

 美少女ロイヤルガードのマルグリットさんに話を振ると、俺の意図を察してか、思わせぶりな視線をユーベルトに向ける。

「お、俺は別に、女にモテたいから冒険者をやってる訳じゃない!」

 その視線を受けたユーベルトが、フンっと鼻息を荒げてそっぽを向いた。
 耳を赤くしながら。

 解り易いのは良いのだが、男のツンデレとか可愛くもなんともない。

 だがよしのん的には良かったらしく、よだれを拭う仕草をしやがった。

 拗らせてるな……。

 そんなレスティー班だが、俺達とはレベルと経験に差があるため二人一組ツーマンセルとはいかず、PT全員による総力戦でデスナイトを討伐していった。
 アーヴィンは相変わらず歌いながらの詠唱をし、詠唱の終わりに合わせてレスティーが牽制と陽動の魔法を使うといった形に工夫をしている。

 でもそのアーヴィンの歌声にうっとり顔のカリオペさんが聞き惚れている様で、全然戦闘に集中できていない風なのなんなの?
 クサンテは前方に意識が集中しているため気付いてないが、もし彼女にばれたら情け容赦の無い893キックが飛びかねんぞ。

 そして彼女と同時加入したディオンは抜きん出た物は見当たらないが、クサンテと同じ周囲を観察して動く冷静派。
 突出しがちなユーベルトのサポートに回り、両手剣で牽制攻撃を繰り出しているので、今までその役目を担っていたクサンテが、PT全体の壁としてデスナイトの前に立ち塞がることに集中できている。

 そしてジルケにつけたエクソシストの神聖魔法による攻撃が、アーヴィンやユーベルトの仕留め損ねたデスナイト相手に要所で刺さる。
 アレッシオにもエクソシストの職をつけているが、彼は回復と補助に専念していた。

 やはりレスティー達の班はPT全体の安定感が高い。 
 俺達の班は個人の殲滅力が高いのと、魔法職が多いせいであんな効率重視のツーマンセルで討伐をしているが、冒険者としては本来こう在るべきなのだろうな。

 レスティー達の戦闘を観察しつつ、PTのスタイルなどについてリシア達と意見を交わしながら迷宮を進んでいく。


―――――――――――――――――――――――
投稿量が少なくて申し訳ないです。
言い訳としては、風邪ひきました。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています

もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。 使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

処理中です...