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108話 難易度
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続けて向かって来たデスナイトへ、レイボウよりも攻撃面積の広いシャイニングブラストを放ってみたが、今度は盾で阻まれる始末。
倍率400%の弱点属性を受けて一撃で死なないのなんなのバカなの死ぬの?
死なないから悶絶してるんだけど。
シャイニングブラストを受け止めながら走ってくるデスナイトを、全員で十倍掛けのシャイニングブラストを打ち込み、なんとか動かない死体に変えて差し上げた。
ここに来てなかなか厄介な相手が現れてくれたものだ。
接敵するたびに指向性散弾魔法〈クラウ・ソラス〉を撃っていては、MP酔いで動けなくなり攻略が進まない。
それに、いくら迷宮内ではゲロが粒子分解されて汚れと臭いが消えるとはいえ、当然気持ちのいいものでもない。
そして全員で全力魔法攻撃による面制圧も非効率だ。
早急にデスナイトの効率的な攻略法を確立する必要がある。
クラウ・ソラスの出力を落とせって気がしないでもないが、全力で放ってこその必殺魔法なので、それをすると負けた気がする。
「この角を曲がったところの奥に1体居ます」
頭の悪い意地を張りながら歩いていると、ククが警告を発した。
サーチエネミーにも1体の敵影を捕らえる。
「OK、ちょっと試したいことがあるから俺にやらせてくれ」
一体のデスナイトを通路の角から視認した。
こちらとの距離は大体30メートルほど。
先程交戦した際の動きを考慮すると、一足飛びで近付かれる距離ではないが、走られると2秒ってところか。
試せる攻撃は2~3発。
まずはと腕だけを奴の居る通路に出し、人差し指に光線魔法〈レイボウ〉の光を灯す。
ショット!
指先から射出した光線は真っ直ぐデスナイトに伸びるも、攻撃を察知した骸骨騎士は、それをあっさりと避けてみせた。
完全な不意打ちを避けやがった!?
だが逃がすか!
除けられた光線を横にスライドさせ、奴の金属装甲を焼き切ってやる。
だがダメージを受けた様子も無く、それを盾を掲げて防ぎ、こちらに猛ダッシュを開始した。
間髪入れずに4条の光線をほぼ同時に追加発射。
ビシュシュシュシュ!
直進する光線の内2本が右胸と腹部に直撃、一点集中された熱線が巨体を貫通するも、アンデッドの騎士は止まらない。
初見時にデスナイトの胸部を貫通させ吹き飛ばした3倍掛けのレイボウを左胸に打ち込み風穴を開け、後ろに吹き飛ばすも、やはり素早く起き上がり走って来た。
痛覚のない相手というのも極めて面倒だ。
レイボウを用いた何かでどうにかならないか?
どうにかってどうするんだよ。
もう一度吹き飛ばして時間を稼ごうと再び発射するも、射出直前に回避行動を繰り出し躱された。
それじゃぁとばかりに、また光線を上半身に向けて横へスライドさせる。
デスナイトが左腕の盾で受け止める動作を見せたところで、ガラ空きの脚へ方向をシフト。
光線に触れた脚部が消失し、巨大な骨が盛大に転んだ。
走る勢いでそのまま転んで滑り、滑ったまま俺の目の前で停止した。
起き上がろうと顔を上げた白い頭蓋骨の窪んだ眼下に、怪しげな赤い光が2つ。
そのド真ん中へレイボウを圧縮した弾丸を打ち込んだ。
バシュッ!
乾いた音と共にデスナイトの頭が消し飛び動かなくなると、粒子散乱を開始した。
レイガンですね、わかります。
昔の漫画にこんな技あったなぁ。
「アレに触れさせもせず一人で倒してしまうとは、トシオはやはり凄まじいな」
俺のすぐ後ろ、お腹の位置くらいから一部始終を見ていたメリティエが、感心しながら頷いている。
「結構ギリギリだったけどね」
モーディーンさんの〝中級冒険者PTがデスナイト一体で全滅する〟という言葉に嘘でも誇張でもないと確信がもてる。
俺達だから魔法射撃でどうにかなっているが、本来魔法を詠唱してやっと一発撃てるこの世界の人からすれば、脅威以外の何物でもない。
しかもこいつは魔法を発射しようとしたところを避ける仕草をした。
攻撃の意図か魔法を事前に察知していると見て良いだろう。
なかなかに厄介極まりない相手だ。
「さらに奥からもう1体来ます」
「わかった、次は皆で相手してくれ」
次の戦闘では、ククが〈サテライトシール〉となる遠隔操作型の盾を2枚展開し、デスナイトを両サイドから挟んで抑え込みにかかった。
だがデスナイトの振るった斬撃が、スキルの盾を2枚とも真っ二つにされてしまう。
攻撃力も半端ないな。
直ぐに自身の盾に強化スキルを発動させ、ぶちかましのシールドバッシュからのシールドプレスで抑え込むと、スキルによる上からの圧力に抗う髑髏の騎士に、トトのクラッシュウォールが一撃の元に右上半身を吹き飛ばし、背後に回っていたメリーの鬼神瀑布によるローキックが左足のスネが蹴り折った。
倒れる髑髏の騎士の骨部分が、唐突に石に変わる。
石に変わりはしたが、片膝立ちとなり、先程と変わらず剣を振り回している。
「〈パニッシュメント〉!」
右に回っていたよしのんが、新たに支給されたアダマンタイトのレイピアに勇者専用スキルの〈光刃〉で光属性を付与すると、パラディンの攻撃スキルによる刺突を慣行。
刺突剣がデスナイトの鎧をぶち抜き腹部にまで達した。
アンデッドが身体を大きく跳ねさせるも、盾を持つ腕によしのんが払い飛ばされた。
よしのんが繰り出したパラディンの単体攻撃スキル〈パニッシュメント〉は、スキルによって発生させたエネルギーで貫通力を高め、貫通後は切っ先から宿したエネルギーの残りを内部に放出するスキルだ。
鎧貫きと榴弾の性質を併せ持つ徹甲榴弾の様なスキルではあるが、相手の防御力が高ければそれだけ宿したエネルギーを鎧貫きで消費するため爆発の破壊力が下がる。
つまり、本来なら爆発四散するはずのものが、その程度で済んでしまったと言う訳だ。
よしのんの攻撃力不足もあるかもだが、アダマンタイトの武器を用いてこれなのだから、物理防御面も相当高いと見るべきだろう。
これがユーベルトやクサンテなら鎧の隙間を通してエネルギーをより多く体内に打ち込む所だが、この辺りは戦闘センスや経験の差か。
後で実技指導しておこう。
最後にはユニスが射かけた矢で全身を爆散させるも、どれだけ重ね掛けをしてのあの火力なのか分からないので、相手の物理耐久性能の具合を聞いておきたい。
だがすぐ近くにもデスナイトの反応がいくつもあるため、こんなところでのんびり作戦会議と言う訳にもいかないので一旦四十三階層まで後退した。
「今までの敵と比べて魔法の耐久性能が明らかにおかしい」
「動く死体の分際で魔法を避けるとは生意気にも程があろう! しかもアンデッド故あらかた状態異常にも掛からぬ上に、石化しても骨が石に変わるだけとは憎らしいことこの上ない!」
「それに奴らの持つ剣や盾に当たれば、その分追加で矢や魔法を放たねばならないのがいただけませんね」
俺の率直な感想にイルミナさんが駄々っ子の様に悔しさを滲ませると、ユニスも自身の肌で感じた意見を挙げてくれた
石化した原因はイルミナさんの石化魔眼か。
てかアンデッドって状態異常にならないのか。
よくよく考えれば、感情でもない限り死体が何かに魅了されるなんて精神構造してる訳無いわな。
麻痺も肉が有れば効果も期待できるだろうが骨しかないし。
というかアンデッドの時点でどういった原理で動いてるのかに寄るか。
生きた対象の脳を支配して筋力で物理的に動いているなら麻痺も有効かもだが、魔力なんかで直接身体を動かしてるなら肉体を痺れさせても動き続けるだろうし。
生きた肉体に霊体が憑依とかなら前者の可能性もあるが、魔法のあるファンタジー世界で死体とくれば、断然後者の可能性が高い。
そしてゾンビなら石化で骨に纏わりつく肉そのものを石に変えてしまえば関節が動かなくなるかもだが、鎧の下が骨であるはデスナイトでは、イルミナさんが言った通り骨の材質が石になっただけなので動き回る。
あ、でもその分脆くなるかも。
だが石化しなければ一体を倒すのに魔法を二十発位撃たなければいけないのは面倒に過ぎるし、MPの消費も馬鹿にならない。
「物理攻撃だとどう? どれくらいの重ね掛けで攻撃してたの?」
「あては力いっぱい攻撃したー!」
「私も〈アンデッドペイン〉と聖属性を乗せて全力」
「あてなんてオーラブレードも使ってたもんねー!」
「それは私も同じだ」
またも謎の対抗心で楽し気に張り合うトトとメリー。
だが両者とも攻撃箇所を一撃で吹き飛ばしていただけに、ただの燃費悪い自慢でしかない。
アホの娘可愛い。
〈アンデッドペイン〉はプリースト上級職のエクソシストにあるアンデッドモンスターに対してダメージが増加する自動発動スキルで、聖属性とは神の力を借りてしか使えない属性で、不浄なモノを浄化する効果がある。
こちらの人は神聖属性を少し略して聖属性と呼んでいる。
「よしのんは?」
「トトちゃんとメリーちゃんが全力で攻撃しそうでしたので、勇者スキルの光刃付与からの3倍重ねのパニッシュメントでした」
「ちなみに筋力のステータスは?」
「ボーナス込みで200です。素の筋力は60です」
ボーナススキルと近接職のジョブスキル込みでそれか、素の筋力もそこそこあったのね。
だが針剣の様な鎧貫きやドア貫きに適した武器なら兎も角、レイピアなんかで鎧貫きをするとはさすが勇者だな。
それでも三倍重ねで爆発四散しないとかどんだけ固いんだよデスナイト。
「そうだ、さっきあのお化けが落としたのを拾ったー」
「ん? ありがとう」
トトが指で摘まんでいた3センチ程の小石サイズの金属の塊を受け取ると、とりあえず鑑定眼を発動させてみる。
ミルトライト鉱石
あいつの鎧ミルトライト製かよ!?
そら防御力がおかしいはずだわ。
ドロップアイテムって装備してるものや魔物の部位に因んだものを落とす傾向にあるためまず間違いないだろう。
しかもドロップアイテムがアダマンタイト以下な為、いまいち旨味が無い。
ヒヒイロカネェ……。
俺達の会話を興味深げに聞いているモーディーンさん達に渡せば、有効活用してくれるか。
そう考えながらも突然の難易度UPについて思考を巡らせてみる。
大量の群体が高速で途切れることなく襲ってくるサンドワーム、統率された群れと火炎のブレスを持つオルトロス、石化と魔法攻撃のゴルゴーン、範囲魔法を僅かな詠唱で連射してくるキ、そして圧倒的な防御性能と身体能力を誇るデスナイト。
オルトロスとゴルゴーンに関しては、異常事態があったため正しい評価を下せないが、明らかに四十階層から難易度が爆上がりしてるじゃねーか。
勇者召喚にダンジョンコアが必要らしいが、そのダンジョンコアも五十階層より下にあり、ケルベロスやエキドナなんて化け物も突発的に湧くシステム。
下手をすると勇者であっても攻略できるのか怪しいところである。
これは俺が思ってた以上にダンジョン攻略は容易でなさそうだ。
だがこの階層に限って言えば、攻略法のヒントが2つ見えた。
一つはレイボウを圧縮させれば、単発でも奴の防御力を突破できる。
もう一つは重ね掛けのレイボウであれば、薙ぎ払いでも切断可能である。
少し憂鬱になりながらも、レスティーやモーディーンさんを巻き込み、効率の良いデスナイト攻略法を皆で模索した。
倍率400%の弱点属性を受けて一撃で死なないのなんなのバカなの死ぬの?
死なないから悶絶してるんだけど。
シャイニングブラストを受け止めながら走ってくるデスナイトを、全員で十倍掛けのシャイニングブラストを打ち込み、なんとか動かない死体に変えて差し上げた。
ここに来てなかなか厄介な相手が現れてくれたものだ。
接敵するたびに指向性散弾魔法〈クラウ・ソラス〉を撃っていては、MP酔いで動けなくなり攻略が進まない。
それに、いくら迷宮内ではゲロが粒子分解されて汚れと臭いが消えるとはいえ、当然気持ちのいいものでもない。
そして全員で全力魔法攻撃による面制圧も非効率だ。
早急にデスナイトの効率的な攻略法を確立する必要がある。
クラウ・ソラスの出力を落とせって気がしないでもないが、全力で放ってこその必殺魔法なので、それをすると負けた気がする。
「この角を曲がったところの奥に1体居ます」
頭の悪い意地を張りながら歩いていると、ククが警告を発した。
サーチエネミーにも1体の敵影を捕らえる。
「OK、ちょっと試したいことがあるから俺にやらせてくれ」
一体のデスナイトを通路の角から視認した。
こちらとの距離は大体30メートルほど。
先程交戦した際の動きを考慮すると、一足飛びで近付かれる距離ではないが、走られると2秒ってところか。
試せる攻撃は2~3発。
まずはと腕だけを奴の居る通路に出し、人差し指に光線魔法〈レイボウ〉の光を灯す。
ショット!
指先から射出した光線は真っ直ぐデスナイトに伸びるも、攻撃を察知した骸骨騎士は、それをあっさりと避けてみせた。
完全な不意打ちを避けやがった!?
だが逃がすか!
除けられた光線を横にスライドさせ、奴の金属装甲を焼き切ってやる。
だがダメージを受けた様子も無く、それを盾を掲げて防ぎ、こちらに猛ダッシュを開始した。
間髪入れずに4条の光線をほぼ同時に追加発射。
ビシュシュシュシュ!
直進する光線の内2本が右胸と腹部に直撃、一点集中された熱線が巨体を貫通するも、アンデッドの騎士は止まらない。
初見時にデスナイトの胸部を貫通させ吹き飛ばした3倍掛けのレイボウを左胸に打ち込み風穴を開け、後ろに吹き飛ばすも、やはり素早く起き上がり走って来た。
痛覚のない相手というのも極めて面倒だ。
レイボウを用いた何かでどうにかならないか?
どうにかってどうするんだよ。
もう一度吹き飛ばして時間を稼ごうと再び発射するも、射出直前に回避行動を繰り出し躱された。
それじゃぁとばかりに、また光線を上半身に向けて横へスライドさせる。
デスナイトが左腕の盾で受け止める動作を見せたところで、ガラ空きの脚へ方向をシフト。
光線に触れた脚部が消失し、巨大な骨が盛大に転んだ。
走る勢いでそのまま転んで滑り、滑ったまま俺の目の前で停止した。
起き上がろうと顔を上げた白い頭蓋骨の窪んだ眼下に、怪しげな赤い光が2つ。
そのド真ん中へレイボウを圧縮した弾丸を打ち込んだ。
バシュッ!
乾いた音と共にデスナイトの頭が消し飛び動かなくなると、粒子散乱を開始した。
レイガンですね、わかります。
昔の漫画にこんな技あったなぁ。
「アレに触れさせもせず一人で倒してしまうとは、トシオはやはり凄まじいな」
俺のすぐ後ろ、お腹の位置くらいから一部始終を見ていたメリティエが、感心しながら頷いている。
「結構ギリギリだったけどね」
モーディーンさんの〝中級冒険者PTがデスナイト一体で全滅する〟という言葉に嘘でも誇張でもないと確信がもてる。
俺達だから魔法射撃でどうにかなっているが、本来魔法を詠唱してやっと一発撃てるこの世界の人からすれば、脅威以外の何物でもない。
しかもこいつは魔法を発射しようとしたところを避ける仕草をした。
攻撃の意図か魔法を事前に察知していると見て良いだろう。
なかなかに厄介極まりない相手だ。
「さらに奥からもう1体来ます」
「わかった、次は皆で相手してくれ」
次の戦闘では、ククが〈サテライトシール〉となる遠隔操作型の盾を2枚展開し、デスナイトを両サイドから挟んで抑え込みにかかった。
だがデスナイトの振るった斬撃が、スキルの盾を2枚とも真っ二つにされてしまう。
攻撃力も半端ないな。
直ぐに自身の盾に強化スキルを発動させ、ぶちかましのシールドバッシュからのシールドプレスで抑え込むと、スキルによる上からの圧力に抗う髑髏の騎士に、トトのクラッシュウォールが一撃の元に右上半身を吹き飛ばし、背後に回っていたメリーの鬼神瀑布によるローキックが左足のスネが蹴り折った。
倒れる髑髏の騎士の骨部分が、唐突に石に変わる。
石に変わりはしたが、片膝立ちとなり、先程と変わらず剣を振り回している。
「〈パニッシュメント〉!」
右に回っていたよしのんが、新たに支給されたアダマンタイトのレイピアに勇者専用スキルの〈光刃〉で光属性を付与すると、パラディンの攻撃スキルによる刺突を慣行。
刺突剣がデスナイトの鎧をぶち抜き腹部にまで達した。
アンデッドが身体を大きく跳ねさせるも、盾を持つ腕によしのんが払い飛ばされた。
よしのんが繰り出したパラディンの単体攻撃スキル〈パニッシュメント〉は、スキルによって発生させたエネルギーで貫通力を高め、貫通後は切っ先から宿したエネルギーの残りを内部に放出するスキルだ。
鎧貫きと榴弾の性質を併せ持つ徹甲榴弾の様なスキルではあるが、相手の防御力が高ければそれだけ宿したエネルギーを鎧貫きで消費するため爆発の破壊力が下がる。
つまり、本来なら爆発四散するはずのものが、その程度で済んでしまったと言う訳だ。
よしのんの攻撃力不足もあるかもだが、アダマンタイトの武器を用いてこれなのだから、物理防御面も相当高いと見るべきだろう。
これがユーベルトやクサンテなら鎧の隙間を通してエネルギーをより多く体内に打ち込む所だが、この辺りは戦闘センスや経験の差か。
後で実技指導しておこう。
最後にはユニスが射かけた矢で全身を爆散させるも、どれだけ重ね掛けをしてのあの火力なのか分からないので、相手の物理耐久性能の具合を聞いておきたい。
だがすぐ近くにもデスナイトの反応がいくつもあるため、こんなところでのんびり作戦会議と言う訳にもいかないので一旦四十三階層まで後退した。
「今までの敵と比べて魔法の耐久性能が明らかにおかしい」
「動く死体の分際で魔法を避けるとは生意気にも程があろう! しかもアンデッド故あらかた状態異常にも掛からぬ上に、石化しても骨が石に変わるだけとは憎らしいことこの上ない!」
「それに奴らの持つ剣や盾に当たれば、その分追加で矢や魔法を放たねばならないのがいただけませんね」
俺の率直な感想にイルミナさんが駄々っ子の様に悔しさを滲ませると、ユニスも自身の肌で感じた意見を挙げてくれた
石化した原因はイルミナさんの石化魔眼か。
てかアンデッドって状態異常にならないのか。
よくよく考えれば、感情でもない限り死体が何かに魅了されるなんて精神構造してる訳無いわな。
麻痺も肉が有れば効果も期待できるだろうが骨しかないし。
というかアンデッドの時点でどういった原理で動いてるのかに寄るか。
生きた対象の脳を支配して筋力で物理的に動いているなら麻痺も有効かもだが、魔力なんかで直接身体を動かしてるなら肉体を痺れさせても動き続けるだろうし。
生きた肉体に霊体が憑依とかなら前者の可能性もあるが、魔法のあるファンタジー世界で死体とくれば、断然後者の可能性が高い。
そしてゾンビなら石化で骨に纏わりつく肉そのものを石に変えてしまえば関節が動かなくなるかもだが、鎧の下が骨であるはデスナイトでは、イルミナさんが言った通り骨の材質が石になっただけなので動き回る。
あ、でもその分脆くなるかも。
だが石化しなければ一体を倒すのに魔法を二十発位撃たなければいけないのは面倒に過ぎるし、MPの消費も馬鹿にならない。
「物理攻撃だとどう? どれくらいの重ね掛けで攻撃してたの?」
「あては力いっぱい攻撃したー!」
「私も〈アンデッドペイン〉と聖属性を乗せて全力」
「あてなんてオーラブレードも使ってたもんねー!」
「それは私も同じだ」
またも謎の対抗心で楽し気に張り合うトトとメリー。
だが両者とも攻撃箇所を一撃で吹き飛ばしていただけに、ただの燃費悪い自慢でしかない。
アホの娘可愛い。
〈アンデッドペイン〉はプリースト上級職のエクソシストにあるアンデッドモンスターに対してダメージが増加する自動発動スキルで、聖属性とは神の力を借りてしか使えない属性で、不浄なモノを浄化する効果がある。
こちらの人は神聖属性を少し略して聖属性と呼んでいる。
「よしのんは?」
「トトちゃんとメリーちゃんが全力で攻撃しそうでしたので、勇者スキルの光刃付与からの3倍重ねのパニッシュメントでした」
「ちなみに筋力のステータスは?」
「ボーナス込みで200です。素の筋力は60です」
ボーナススキルと近接職のジョブスキル込みでそれか、素の筋力もそこそこあったのね。
だが針剣の様な鎧貫きやドア貫きに適した武器なら兎も角、レイピアなんかで鎧貫きをするとはさすが勇者だな。
それでも三倍重ねで爆発四散しないとかどんだけ固いんだよデスナイト。
「そうだ、さっきあのお化けが落としたのを拾ったー」
「ん? ありがとう」
トトが指で摘まんでいた3センチ程の小石サイズの金属の塊を受け取ると、とりあえず鑑定眼を発動させてみる。
ミルトライト鉱石
あいつの鎧ミルトライト製かよ!?
そら防御力がおかしいはずだわ。
ドロップアイテムって装備してるものや魔物の部位に因んだものを落とす傾向にあるためまず間違いないだろう。
しかもドロップアイテムがアダマンタイト以下な為、いまいち旨味が無い。
ヒヒイロカネェ……。
俺達の会話を興味深げに聞いているモーディーンさん達に渡せば、有効活用してくれるか。
そう考えながらも突然の難易度UPについて思考を巡らせてみる。
大量の群体が高速で途切れることなく襲ってくるサンドワーム、統率された群れと火炎のブレスを持つオルトロス、石化と魔法攻撃のゴルゴーン、範囲魔法を僅かな詠唱で連射してくるキ、そして圧倒的な防御性能と身体能力を誇るデスナイト。
オルトロスとゴルゴーンに関しては、異常事態があったため正しい評価を下せないが、明らかに四十階層から難易度が爆上がりしてるじゃねーか。
勇者召喚にダンジョンコアが必要らしいが、そのダンジョンコアも五十階層より下にあり、ケルベロスやエキドナなんて化け物も突発的に湧くシステム。
下手をすると勇者であっても攻略できるのか怪しいところである。
これは俺が思ってた以上にダンジョン攻略は容易でなさそうだ。
だがこの階層に限って言えば、攻略法のヒントが2つ見えた。
一つはレイボウを圧縮させれば、単発でも奴の防御力を突破できる。
もう一つは重ね掛けのレイボウであれば、薙ぎ払いでも切断可能である。
少し憂鬱になりながらも、レスティーやモーディーンさんを巻き込み、効率の良いデスナイト攻略法を皆で模索した。
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