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105話 お風呂DEパニック
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大食い大会は佳境を迎えていた。
「我も混ぜてもらうかのう」
軽いノリで最後に参戦してきたイルミナさん(人間形態)が、スローペースながらもトップを独走するモリーさんを追いかける展開に。
モリーさんも引きはがそうとペースを上げ、次々と目の前の肉を平らげていく。
二人とも酒を飲みながら。
肉を口に運び酒で飲み下すスタイルだ。
焼肉が完全に酒のさかな状態である。
ラミアを嫁にしたと思ったら、なんだただの蟒蛇か。
やはり元の体が人間の1.5倍もあるのは強みか。
けど、人化状態だとその辺どうなんだろうね。
モリーさんの胃袋も、イルミナさんみたく元の体がデカいからなのかな?
そんな半人半牛のモリーさんに牛の肉を振舞うのは、何と言うか背徳感が凄まじい。
「モティナ、これ牛のお肉だけど大丈夫? 俺の居た世界だと宗教の戒律で〝牛を食べない〟とか〝豚は食べちゃいけない〟ってあるんだけど」
「牛のお肉はお母さんも私も大好物だから家ではよく食べてたよ? あとスリープゴートのお肉とかも。でもこんなに良いお肉は初めてかも」
肉を焼きながら隣に居る少女にそれとなく尋ねるも、本性山羊娘の娘さんは、生野菜で巻いた肉を美味しそうに咀嚼する。
この前もトト達が獲って来たスリープゴートの肉も普通に食べてたもんな。
とはいえ、2人が肉より野菜が好みなのは、毎日食事をしていて把握しているけど。
あと、可愛い女の子が嬉しそうにモノを食べる仕草って、なんでこう可愛いんだろ?
その可愛さについリシア達と同じ感覚で頭を撫でる。
「お兄ちゃん、そういうのは好きな人にしかしない方が良いと思うよ?」
「俺はモティナのこと好きだから問題ないな」
「うきゅっ」
モティナが愛らしい鳴き声を上げるなり、真横からしがみ付き俺の腕に顔を擦り付ける。
「ちょ、おま!?」
火を使ってるから危ない!
あと人の服で焼肉で脂ぎった口を拭くんじゃない!?
「……私のことは、どう、好きなのかな?」
上目遣いで甘える様な仕草に、不意に胸が高鳴り、服の汚れなど頭の片隅からも消し飛んだ。
そんな愛らしいモティナの良い点を、今更ながら探してみる。
「ん~、そうだなぁ……可愛いし、人懐っこいし、物怖じしないで誰とでも仲良くなるところ。あと家の手伝いとか真面目にやってくれてる所とか? 俺は家に居ない時間も多いし、結構頼りにしてる」
「最後の方はまるで家政婦じゃない」
「家政婦というより、頼りになる妹だと思ってるけど?」
「余計悪くなってる!?」
「え、どこが!? 家族なんだから良いんじゃないの?」
「良くない! ぜんっぜん良くない! お兄ちゃん、私の気持ちとか全部わかった上で言ってるでしょ!」
「んん?」
何やら急に憤慨しだした血の繋がらない妹に、そっとリシアが近付いた。
「だめよモティナ、あれは本当にわかってらっしゃらない時の顔よ」
「もー、なんで私の時は伝わらないのよ!」
「?」
2人の会話の意味不明さに、小首を傾げながら肉を焼き続けている。
そうこうしている間にも、はす向かいの冒険者が落ち、トトとメリティエが勝負そっちのけでただひたすら肉を堪能し、満足したところで食後のデザートとして果物を食べ終え席を立った。
それでいいのか二人とも……。
こうして勝負の行方はラミアとミノタウロスの一騎討となる。
どう見ても口に入る肉と酒の量がほぼ同じなのだが、誰だよあんなに酒を持ち込んだ奴は。
しばらくすると、モリーさんの上半身がふらつきはじめ、遂にはその場に突っ伏し寝息を立て始めた。
「なんじゃ、もう終いか」
あとはモリーさんの食べた量をイルミナさんが追い抜き、悠々とフィニッシュ。
勝敗が相手が酔いつぶれて決まるという、大食い大会にあるまじき暴挙とグダグダ感だった。
大食い関係ねぇ。
こうして大食い大会が終わり、皆の食のペースも落ち着いたところで、酔いつぶれたモリーさんをククと一緒に運び出す。
後ろからは少し心配そうなモティナが着いてきたが、玄関に入るなりヘベレケなモリーさんから目を覚まし、熱いディープキスを賜った。
舌がこちらの口の中に侵入し、縦横無尽に荒々しくうねる情熱的で淫らな口づけだ。
「あんたねぇ、昼間もそうだけど、こんな子持ちのおばさんを本当に嫁にするつもりなのかい? ん~、どうなんだい?」
酔って艶っぽくなったワイルド美女が、唇を放して問うてくるも、こちらが返事を言う前に再び舌を絡めてくる。
ちょっと奥さん、娘さんの前ですよ!
だが当の本人は俺以外に人が居る事に気付いておらず、こちらの首に腕を回してしっかりとホールド。
ぐいぐいと大きな胸を押し付けながら唇を貪った。
モティナの前だからかとても長く感じられたその激しいキスの最中、モリーさんから急に力が抜け、再び寝息を立て始めた。
モリーさんのキスは非常に嬉しいのだが、酒と肉で口が臭くて嬉しさ半減。
せっかくのモリーさんの唇が、色々と台無しである。
「……このまま二階に上げるのは危険だから、左の個室に運ぶよ。あそこなら布団もあるし」
「はい、ご主人様」
部屋を指定しモティナに布団を敷かせると、褐色の美女を布団に寝かせた。
「2人とも、さっきはなにも起きなかった。だからモティナもククも何も見てない。良いね?」
「わかりました」
「う、うん、そうだよね」
2人にそう告げて部屋を出ようとするも、モティナが母の行動に驚いたのか、戸惑いを見せる。
背の低い少女がいつも以上に小さく見え、壊れそうだったため、そっと頭を抱き寄せた。
「酔っぱらいの行動を真に受けたりしないから大丈夫だよ」
「う~ん……」
安心させようとした俺の言葉に、上を向いたモティナが眉間にしわを寄せ、険しい表情で呻く。
それはどういう反応なんだ?
「とりあえずお母さんのことは私が見てるから、お兄ちゃんは皆の元に戻ってて」
「……一人で大丈夫? リシアかローザを呼ぼうか?」
「一人でだいじょーぶだから、ほら行って行って」
何かしらかみ合わないまま、玄関に押し出されてしまう。
仕方なくククを連れて庭に戻ると、ご近所さんやサラさん一家が近付いて来るなり、律儀に今回のBBQのお礼を述べてから自宅へと帰られた。
こうしてご近所さんとの親睦を深めるBBQ&大食い大会は無事(?)に終了した。
一番面倒な後片付けを、はす向かいの冒険者達が率先してやってくれたので感謝を述べる。
「いえいえ、食事を提供して頂いたのですから、これくらい当然ですよ。冒険者としても腕は立つつもりでいますので、御用の際は気兼ねなくご利用ください」
フリッツ
人 男 26歳
パラディンLv7
精悍な顔に温和な笑顔を浮かべた長身の美男子が、黄緑色の髪を汗で濡らしながら朗らかに話す。
青年士官の様な見た目の男の体は、軽装の衣類では隠せないソフトマッチョな筋肉が覗く。
顔と年齢に見合わず落ち着いた物腰。そしてナイトの最上級職であるパラディンとくると、かなりの使い手であるのが容易に想像がつく。
彼の仲間達にも目を向けると、最上級職はフリッツだけだったが、他のメンバーも上級職。
パラディン1のウォーリアー1にビショップ1、ファントムシーフ1で最後にウィザード1の5人組。
バランスも良い構成とレベルでは、かなり優秀なベテランPTといった様子だ。
「揉め事荒事から屋根の修繕まで、なんでもお任せあれ」
「冒険者ギルドを挟まず、ご近所割引で更にお安くさせて頂きますよ」
筋骨隆々なドワーフのおっさんと神官風のヒュームの兄ちゃんがニカっと歯を見せながら告げてくると、後ろでものすごく地味なヒュームの女の子とエルフの美女が、男性陣につられてぎこちない笑みを浮かべる。
良い人達だが、ちゃっかり自分達の顧客確保をしてくるあたり抜け目がない。
「機会があれば是非お願いします」
社交辞令を述べ、俺も後片付けに加わった。
トトとメリティエも肉を焼いた網や鉄板をたわしでゴシゴシと楽しそうにこすっていたので誉めてあげたところ、2人が洗い物係に名乗りを上げたので〈後片付け職人〉に任命して差し上げた。
全ての作業が終了し、レスティー達やはす向かいの冒険者達を見送ると、焼き肉の臭いが身体に染みついてしまっていたのでお風呂へGO。
そこでまたしても珍事が発生する。
俺が入っていたのに気付かずに、よしのんが入ってきたのには驚かされた。
ごめん、俺もよしのんの存在を忘れてた。
眼鏡をはずした彼女の視力の低さに加え、彼女の入室に気付いてからは必ず間に誰かを挟んだ位置取りをすると、全然バレはしなかった。
低視力って大変なんだな。
「ん~、やっぱり広いお風呂って素敵ですよねー」
「そ、そうですな。ケンタウロスが肩まで浸かれるほどの深い風呂など、一般家庭ではまずありえませんから」
そんなよしのんが湯船に浸かり一息着きながら、浴槽の奥の深場でお腹を浴槽の底に付け、肩までつかるユニスに話しかける。
話しかけられたユニスが、一瞬ビクっと体を震わせなるも、平静を装って言葉を返す。
背中には俺を、頭にはつぶれ大福なミネルバを乗せたまま。
俺は今、ユニスの上半身である人部分を壁にしてよしのんから隠れていた。
風呂の中で馬の背中に座るって不思議な感覚だなぁ。
いつバレるかヒヤヒヤものだけど。
だが意外とバレない状況と、愛する妻の引き締まった背中の美しさ、そしてその背中からも見える大きな乳房が揺れる状況に、悪戯心が芽吹いてきた。
両手でお椀を作り、ユニスのオパーイを背後から被せるように包んで背中から抱きしめる。
先端を刺激しないように注意しながら、その豊満なオパーイをたゆんたゆん。
最高かよ。
『トシオ殿、変なことをしているとヨシノ殿にバレますよ』
PTチャットでユニスから注意が来たが、片方に束ねられた髪とは反対のうなじが色っぽく、その首筋にキスをする。
「ひゃんっ」
「どうかしました?」
「い、いえ、なんでもありません」
『トシオ殿!!!』
『ははは、ごめんごめん』
念話で謝りながらも手を放すことなく、その柔らかな質量を堪能する。
リシアほどの大きさはないが、それでもかなり大き目な立派な胸は、妻達の中ではククと同じくらいやや硬め。
一番柔らかいのがイルミナさんで、次にセシル、ローザ、リシアと続く。
イルミナさんとセシルとローザは完全に垂れてしまっているが、柔らかさ極振りなので、触り心地が抜群だ。
垂れた巨乳とかドチャクソエロい。エロない?
正直大好物です。
リシアのは大きく形も美しく、ある意味奇跡としか言いようがない。
神に愛された猫耳美少女は、全てにおいて完璧すぎた。
「ユニス、私も座っていいかしら?」
「ど、どうぞ」
体を洗い終えたリシアが、自然体でユニスに近付き、俺の隣に腰を下ろす。
「ユニスの背中ってやっぱり大きくて触り応えがあって良いわね。毛も短くて滑らかだし、トシオ様が好きになるのも頷けるわ」
「そういうリシア殿こそ、ふわふわの背中をいつも撫でて頂いているではありませんか」
「あの人は猫が好きだからよ」
そのあの人である俺に身を寄せるリシアの腰に左腕を回し、右手をユニスの胸からお腹に移動させ、二人を抱き寄せる。
ユニスのお腹の薄い脂肪のすぐ下に、堅い腹筋が存在のを手の感触だけではっきりと分かる。
『トシオ殿、最近運動不足故、そこはあまり触らないで頂きたい……』
恥じらうユニスにそれじゃぁと、再び手を胸に戻す。
堅いお腹よりもこちらを触っているほうが全然楽しい。
「リシアさんなら猫だからとか関係なく愛してくれてますよ」
体を洗い終えたククが、ゆったりとした動作で湯舟に入ると、俺達が居る深場まで降りて肩まで浸かる。
目の前にうさぎ顔のケモ美女が、首から上だけどひょっこりと出している姿が珍妙で愛らしい。
洗い場では、トトがククと入れ替わり、ラミアの親子にワシワシと洗われている。
「でも皆さんビックリする程綺麗ですね」
「そういうヨシノ殿も、髪を上げるとなかなかの器量ではありませんか」
「スタイルもいいですしね」
「そそそそんな、私なんて皆さんに比べれは全然ですよ! 地味なのに変にお肉が付いてますし!」
髪を上げて手拭で巻いたローザが湯舟に入ると、水嵩《かさ》が少し増す。
流石にクク程ではなかったが。
よしのんが2人から褒められるも、お腹や太腿に着いたお肉を摘まみながら全力否定。
日本人にしては胸とお尻は立派なもので、結構ムチムチしていて股間に来る体付きだ。
リシアの胸を減らし、お尻をそのままに太腿とお腹に柔らかそうな肉を盛れば、こんな感じになるのではなかろうか。
これも正直好物です。
ローザを許容できる悪食なため、多少太くても好物になってしまうのはご愛敬だ。
「そうね、私が言うと説得力なんてありませんわね……」
「いえいえ、ローザさんの体の柔らかくて凄く素敵です! あんなに心地のいい体験をしたら、誰だって忘れられませんよ!」
「ローザちゃんの体は私なんかよりもはるかに魅力的なんだから、もっと自信を持つべきよ」
「ですね。ローザ殿ほどふくよかで優しい顔の女性は、傍に居るだけで心が和みます」
「特に迷宮から帰って来た直後にローザさんに抱きしめられると、安堵感しゅごいでふから」
「安堵し過ぎて時々泣きそうになります……」
「あらあら、同じ女性にまでそう言われますと、何だか照れてしまいますわ」
よしのん達に加え、狐っ娘のフィローラとダークエルフ形態のセシルも参戦しての力説に、俺も大きく頷くと、ローザが柔らかい笑みを浮かべて恥ずかしがる。
観音様や……。
全裸の女性に言うと特定の部位に聞こえてしまうので、ここは女神様といい直そう。
魔法の明かりで照らされるセシルの駄肉感あふれる黒い肌やケモケモフィローラも、ローザに負けず劣らず魅力的だ。
「私達の夫である当のトシオ様がローザちゃんの体を好んでいるんだから、ローザちゃんはそのままで良いのよ。ね?」
リシアの〝ね?〟の部分が俺に向けられているので、ローザに向けて再度大きく頷くと、ローザが笑いながら涙ぐんだ。
今すぐ彼女の元へ近寄り抱きしめてあげたい気持ちになるも、なんとか踏みとどまる。
「主様が変なルールを作る気持ちが分からんでもないほどじゃ」
人間サイズのラミア形態になっていたイルミナさんがよしのんのとローザの間に割って入り、俺の代わりにローザの髪を撫で落ち着かせると、魔法陣を展開した。
横で本性ともいえる巨大ラミア状態に戻るイルミナさんに、その形態を初めて見て驚いたよしのんが、口を大きく開き、可愛いアホヅラを晒す。
湯船からお湯があふれ出し、湯気で浴室が白くなる。
ミネルバが風の魔法が発動させ、天井付近にある窓から湯気を逃がした。
その間に、混乱で固まりあわあわしている勇者様をイルミナさんが片手で掴むと、その巨大すぎる魔乳に押し込んだ。
胸の谷間からひょっこりと顔だけを出すよしのん。
首だけを出す格好はククとお揃いだが、そのうらやましさが段違いだ。
「……あ、これローザさんに抱きしめられてるみたいですっごいく気持ちが良いです」
「これをもってしても同等とは……。ローザよ、お主は自身の体を誇ってしかるべきじゃな」
「は、はい、ありがとうございます」
イルミナさんの大きな手で髪を撫でられるローザが、またも照れながら感謝を述べる。
ローザもイルミナさんの巨大ラミア形態を初めて見たはずなのだが、肝が据わっているのか全く驚いた様子はない。
ローザも色々な意味ですごいな。
そしてイルミナさんはクソエロい。
湯船に浮いた魔乳の先端に目を向けながら、ユニスのオパーイをたゆんたゆんとさせていると、トトと和風ロリドワーフ姿のメリティエも湯船に入り、またも浴槽からお湯が溢れる。
「メリーも来るかえ?」
「いい」
イルミナさんが娘に手を伸ばそうとするも、メリティエが感情の籠らない声でプイっと顔を背ける。
「つい先日まで〝お母さんお母さん〟と後ろを付いて離れてくれなんだのにのぅ……」
「小さい頃の話しを昨日のことの様に言うな」
娘に逃げられてしまったイルミナさんが、ローザをよしのんの埋まる胸の前で抱きかかえ、2人を猫可愛がりして寂しさを紛らわす。
ローザもイルミナさんの心境を理解してか、成すがままだ。
だが実の娘であるメリティエは、母に背を向け顔をしかめていた。
親や親せきのおばさんに記憶に無い幼い頃の話をされるのが不快なのは、どこの世界でも一緒の様だ。
「トシオー、あのぷくーって膨らむのやってー」
トトがイルミナさん親子のほろ苦さなど全く気にせず、手拭を持ってこちらにやって来る。
あの〝ぷくー〟というのはタオルクラゲならぬ手拭いクラゲの事だが、それを大声で要求されてしまった。
「え?」
「……いいよ、ほら貸してみ」
慌てながらきょろきょろと周囲に目を向けるよしのんをしり目に、トトの要望に応えてクラゲを作る。
ざばっ、ブクブクブク~。
こんなことならさっきローザを抱きしめに行けばよかった。
「おー、トシオは凄いなー」
「一級クラゲ職人だからな」
空気でドーム状になった手拭を尊敬の眼差しを向けてくるトトに渡すと、ぷっくりと浮かんだ手拭クラゲを太い指で突く。
「さっきもだが、その何とか職人というのは流行っているのか?」
「俺の中では割と?」
メリティエがトトと一緒になってクラゲを突きながら問うきたので適当に返す。
他にもリシア愛で職人とか、ローザのお腹一級建築士とか。
ローザ的には良い迷惑だろうが。
ようやく事態を飲み込み始めたよしのんが、声を頼りに俺が居る方へと顔を向ける。
視線が同じ黒髪であるメリティエに向いているので、正確な位置は特定できては居ないようだ。
5メートル離れているだけで髪の長さもわからないとは、眼鏡無しだといよいよもってやばいな。
眼鏡っ狐のフィローラは眼鏡が無くてもそこまで酷くはなさそうだけど。
そしてめがねっこの〝こ〟の字に〝狐〟を当てるの良いなぁと、内心で自画自賛。
「一ノ瀬さん居るんですか!?」
「居るよ、どうしたよしのん?」
「どうしたじゃありませんよ、いつからそこに居たんですか!」
「最初から? 頭を洗ってる俺の横に入って来るなりいきなり座られた時にはめっちゃビックリした。あ、出来るだけ見ないようにはしてたから大丈夫だよ」
「出来るだけって、少しは見たんですよね?! それ全然大丈夫じゃないじゃないですか!?」
顔を真っ赤にしてパニックになるも、俺が居るため湯船から出るに出られないよしのん。
それを笑いをかみ殺しながら相手をする。
「そう? でもある漫画でも言ってましたやん。〝外見なんて関係ない、問題なのは魂だ〟って」
「知りませんし今それ全然関係ありませんから!」
「マジか!?」
「問うまでも無くじゃな」
「その見た目が可愛いからと宗教を拗らせてる人が言って良いセリフではありませんね」
俺のすっとんきょうな返しにイルミナさんやリシアまで呆れ、その状況がツボに入り馬鹿笑い。
状況についていけず目を回し、身動きの取れないよしのんを視姦――じゃなくて観察しながら、俺は隣に居るリシアの髪を撫でユニスの乳房を三度目のたゆんたゆん。
これ以上よしのんをいじめるのはさすがに可哀想なので、湯舟から上がることにした。
妻達の裸体は名残惜しいが、のちほどたっぷりじっくり拝見させてもらおう。
その日の晩、ピロートーク中に奇妙な事実が判明した。
セシルの持っていた人化の指輪、これを彼女に渡したのはイルミナさんだった。
お風呂でセシルがイルミナさんの前でダークエルフの姿を現したため、そこでセシルの所持していた指輪に気付いたのだとか。
二人の話しを聞くと、渡した当時はイルミナさんはローブで顔を隠しており、セシルも今より幼くダークエルフの姿であったため、つい先程までお互いに気付かなかったそうだ。
世間って狭いねっ。
人化魔法を魔族領の人間に施していたって言ってたから、なんとなくそうなのかもとは思ってたけど。
でも、自分で作っておきながら、セシルが普段から身に着けている物に気付かないとか、それもある意味凄いな……。
ちなみに同じようなアイテムを全部で3つ作り、残りの2つはとある親子に渡したそうだ。
俺はおもむろに正面玄関の方、正確には3つ並ぶ個室の真ん中の部屋に目を向けた。
トアルオヤコトハダレナンダロー(棒)。
そう言えばセシルって故郷でミノタウロスハーフなんて悪口を言われてたそうだが、実際のミノタウロスの女性であるモリーさんは筋肉質な感じだった。
ダークエルフ達の中ではミノタウロス=牛=デブってイメージで、〝身近には無いものに対するイメージと実際の印象の差〟みたいなものかな?
なんとなくそんな推測をしながら、妻達に囲まれ眠りについた。
「我も混ぜてもらうかのう」
軽いノリで最後に参戦してきたイルミナさん(人間形態)が、スローペースながらもトップを独走するモリーさんを追いかける展開に。
モリーさんも引きはがそうとペースを上げ、次々と目の前の肉を平らげていく。
二人とも酒を飲みながら。
肉を口に運び酒で飲み下すスタイルだ。
焼肉が完全に酒のさかな状態である。
ラミアを嫁にしたと思ったら、なんだただの蟒蛇か。
やはり元の体が人間の1.5倍もあるのは強みか。
けど、人化状態だとその辺どうなんだろうね。
モリーさんの胃袋も、イルミナさんみたく元の体がデカいからなのかな?
そんな半人半牛のモリーさんに牛の肉を振舞うのは、何と言うか背徳感が凄まじい。
「モティナ、これ牛のお肉だけど大丈夫? 俺の居た世界だと宗教の戒律で〝牛を食べない〟とか〝豚は食べちゃいけない〟ってあるんだけど」
「牛のお肉はお母さんも私も大好物だから家ではよく食べてたよ? あとスリープゴートのお肉とかも。でもこんなに良いお肉は初めてかも」
肉を焼きながら隣に居る少女にそれとなく尋ねるも、本性山羊娘の娘さんは、生野菜で巻いた肉を美味しそうに咀嚼する。
この前もトト達が獲って来たスリープゴートの肉も普通に食べてたもんな。
とはいえ、2人が肉より野菜が好みなのは、毎日食事をしていて把握しているけど。
あと、可愛い女の子が嬉しそうにモノを食べる仕草って、なんでこう可愛いんだろ?
その可愛さについリシア達と同じ感覚で頭を撫でる。
「お兄ちゃん、そういうのは好きな人にしかしない方が良いと思うよ?」
「俺はモティナのこと好きだから問題ないな」
「うきゅっ」
モティナが愛らしい鳴き声を上げるなり、真横からしがみ付き俺の腕に顔を擦り付ける。
「ちょ、おま!?」
火を使ってるから危ない!
あと人の服で焼肉で脂ぎった口を拭くんじゃない!?
「……私のことは、どう、好きなのかな?」
上目遣いで甘える様な仕草に、不意に胸が高鳴り、服の汚れなど頭の片隅からも消し飛んだ。
そんな愛らしいモティナの良い点を、今更ながら探してみる。
「ん~、そうだなぁ……可愛いし、人懐っこいし、物怖じしないで誰とでも仲良くなるところ。あと家の手伝いとか真面目にやってくれてる所とか? 俺は家に居ない時間も多いし、結構頼りにしてる」
「最後の方はまるで家政婦じゃない」
「家政婦というより、頼りになる妹だと思ってるけど?」
「余計悪くなってる!?」
「え、どこが!? 家族なんだから良いんじゃないの?」
「良くない! ぜんっぜん良くない! お兄ちゃん、私の気持ちとか全部わかった上で言ってるでしょ!」
「んん?」
何やら急に憤慨しだした血の繋がらない妹に、そっとリシアが近付いた。
「だめよモティナ、あれは本当にわかってらっしゃらない時の顔よ」
「もー、なんで私の時は伝わらないのよ!」
「?」
2人の会話の意味不明さに、小首を傾げながら肉を焼き続けている。
そうこうしている間にも、はす向かいの冒険者が落ち、トトとメリティエが勝負そっちのけでただひたすら肉を堪能し、満足したところで食後のデザートとして果物を食べ終え席を立った。
それでいいのか二人とも……。
こうして勝負の行方はラミアとミノタウロスの一騎討となる。
どう見ても口に入る肉と酒の量がほぼ同じなのだが、誰だよあんなに酒を持ち込んだ奴は。
しばらくすると、モリーさんの上半身がふらつきはじめ、遂にはその場に突っ伏し寝息を立て始めた。
「なんじゃ、もう終いか」
あとはモリーさんの食べた量をイルミナさんが追い抜き、悠々とフィニッシュ。
勝敗が相手が酔いつぶれて決まるという、大食い大会にあるまじき暴挙とグダグダ感だった。
大食い関係ねぇ。
こうして大食い大会が終わり、皆の食のペースも落ち着いたところで、酔いつぶれたモリーさんをククと一緒に運び出す。
後ろからは少し心配そうなモティナが着いてきたが、玄関に入るなりヘベレケなモリーさんから目を覚まし、熱いディープキスを賜った。
舌がこちらの口の中に侵入し、縦横無尽に荒々しくうねる情熱的で淫らな口づけだ。
「あんたねぇ、昼間もそうだけど、こんな子持ちのおばさんを本当に嫁にするつもりなのかい? ん~、どうなんだい?」
酔って艶っぽくなったワイルド美女が、唇を放して問うてくるも、こちらが返事を言う前に再び舌を絡めてくる。
ちょっと奥さん、娘さんの前ですよ!
だが当の本人は俺以外に人が居る事に気付いておらず、こちらの首に腕を回してしっかりとホールド。
ぐいぐいと大きな胸を押し付けながら唇を貪った。
モティナの前だからかとても長く感じられたその激しいキスの最中、モリーさんから急に力が抜け、再び寝息を立て始めた。
モリーさんのキスは非常に嬉しいのだが、酒と肉で口が臭くて嬉しさ半減。
せっかくのモリーさんの唇が、色々と台無しである。
「……このまま二階に上げるのは危険だから、左の個室に運ぶよ。あそこなら布団もあるし」
「はい、ご主人様」
部屋を指定しモティナに布団を敷かせると、褐色の美女を布団に寝かせた。
「2人とも、さっきはなにも起きなかった。だからモティナもククも何も見てない。良いね?」
「わかりました」
「う、うん、そうだよね」
2人にそう告げて部屋を出ようとするも、モティナが母の行動に驚いたのか、戸惑いを見せる。
背の低い少女がいつも以上に小さく見え、壊れそうだったため、そっと頭を抱き寄せた。
「酔っぱらいの行動を真に受けたりしないから大丈夫だよ」
「う~ん……」
安心させようとした俺の言葉に、上を向いたモティナが眉間にしわを寄せ、険しい表情で呻く。
それはどういう反応なんだ?
「とりあえずお母さんのことは私が見てるから、お兄ちゃんは皆の元に戻ってて」
「……一人で大丈夫? リシアかローザを呼ぼうか?」
「一人でだいじょーぶだから、ほら行って行って」
何かしらかみ合わないまま、玄関に押し出されてしまう。
仕方なくククを連れて庭に戻ると、ご近所さんやサラさん一家が近付いて来るなり、律儀に今回のBBQのお礼を述べてから自宅へと帰られた。
こうしてご近所さんとの親睦を深めるBBQ&大食い大会は無事(?)に終了した。
一番面倒な後片付けを、はす向かいの冒険者達が率先してやってくれたので感謝を述べる。
「いえいえ、食事を提供して頂いたのですから、これくらい当然ですよ。冒険者としても腕は立つつもりでいますので、御用の際は気兼ねなくご利用ください」
フリッツ
人 男 26歳
パラディンLv7
精悍な顔に温和な笑顔を浮かべた長身の美男子が、黄緑色の髪を汗で濡らしながら朗らかに話す。
青年士官の様な見た目の男の体は、軽装の衣類では隠せないソフトマッチョな筋肉が覗く。
顔と年齢に見合わず落ち着いた物腰。そしてナイトの最上級職であるパラディンとくると、かなりの使い手であるのが容易に想像がつく。
彼の仲間達にも目を向けると、最上級職はフリッツだけだったが、他のメンバーも上級職。
パラディン1のウォーリアー1にビショップ1、ファントムシーフ1で最後にウィザード1の5人組。
バランスも良い構成とレベルでは、かなり優秀なベテランPTといった様子だ。
「揉め事荒事から屋根の修繕まで、なんでもお任せあれ」
「冒険者ギルドを挟まず、ご近所割引で更にお安くさせて頂きますよ」
筋骨隆々なドワーフのおっさんと神官風のヒュームの兄ちゃんがニカっと歯を見せながら告げてくると、後ろでものすごく地味なヒュームの女の子とエルフの美女が、男性陣につられてぎこちない笑みを浮かべる。
良い人達だが、ちゃっかり自分達の顧客確保をしてくるあたり抜け目がない。
「機会があれば是非お願いします」
社交辞令を述べ、俺も後片付けに加わった。
トトとメリティエも肉を焼いた網や鉄板をたわしでゴシゴシと楽しそうにこすっていたので誉めてあげたところ、2人が洗い物係に名乗りを上げたので〈後片付け職人〉に任命して差し上げた。
全ての作業が終了し、レスティー達やはす向かいの冒険者達を見送ると、焼き肉の臭いが身体に染みついてしまっていたのでお風呂へGO。
そこでまたしても珍事が発生する。
俺が入っていたのに気付かずに、よしのんが入ってきたのには驚かされた。
ごめん、俺もよしのんの存在を忘れてた。
眼鏡をはずした彼女の視力の低さに加え、彼女の入室に気付いてからは必ず間に誰かを挟んだ位置取りをすると、全然バレはしなかった。
低視力って大変なんだな。
「ん~、やっぱり広いお風呂って素敵ですよねー」
「そ、そうですな。ケンタウロスが肩まで浸かれるほどの深い風呂など、一般家庭ではまずありえませんから」
そんなよしのんが湯船に浸かり一息着きながら、浴槽の奥の深場でお腹を浴槽の底に付け、肩までつかるユニスに話しかける。
話しかけられたユニスが、一瞬ビクっと体を震わせなるも、平静を装って言葉を返す。
背中には俺を、頭にはつぶれ大福なミネルバを乗せたまま。
俺は今、ユニスの上半身である人部分を壁にしてよしのんから隠れていた。
風呂の中で馬の背中に座るって不思議な感覚だなぁ。
いつバレるかヒヤヒヤものだけど。
だが意外とバレない状況と、愛する妻の引き締まった背中の美しさ、そしてその背中からも見える大きな乳房が揺れる状況に、悪戯心が芽吹いてきた。
両手でお椀を作り、ユニスのオパーイを背後から被せるように包んで背中から抱きしめる。
先端を刺激しないように注意しながら、その豊満なオパーイをたゆんたゆん。
最高かよ。
『トシオ殿、変なことをしているとヨシノ殿にバレますよ』
PTチャットでユニスから注意が来たが、片方に束ねられた髪とは反対のうなじが色っぽく、その首筋にキスをする。
「ひゃんっ」
「どうかしました?」
「い、いえ、なんでもありません」
『トシオ殿!!!』
『ははは、ごめんごめん』
念話で謝りながらも手を放すことなく、その柔らかな質量を堪能する。
リシアほどの大きさはないが、それでもかなり大き目な立派な胸は、妻達の中ではククと同じくらいやや硬め。
一番柔らかいのがイルミナさんで、次にセシル、ローザ、リシアと続く。
イルミナさんとセシルとローザは完全に垂れてしまっているが、柔らかさ極振りなので、触り心地が抜群だ。
垂れた巨乳とかドチャクソエロい。エロない?
正直大好物です。
リシアのは大きく形も美しく、ある意味奇跡としか言いようがない。
神に愛された猫耳美少女は、全てにおいて完璧すぎた。
「ユニス、私も座っていいかしら?」
「ど、どうぞ」
体を洗い終えたリシアが、自然体でユニスに近付き、俺の隣に腰を下ろす。
「ユニスの背中ってやっぱり大きくて触り応えがあって良いわね。毛も短くて滑らかだし、トシオ様が好きになるのも頷けるわ」
「そういうリシア殿こそ、ふわふわの背中をいつも撫でて頂いているではありませんか」
「あの人は猫が好きだからよ」
そのあの人である俺に身を寄せるリシアの腰に左腕を回し、右手をユニスの胸からお腹に移動させ、二人を抱き寄せる。
ユニスのお腹の薄い脂肪のすぐ下に、堅い腹筋が存在のを手の感触だけではっきりと分かる。
『トシオ殿、最近運動不足故、そこはあまり触らないで頂きたい……』
恥じらうユニスにそれじゃぁと、再び手を胸に戻す。
堅いお腹よりもこちらを触っているほうが全然楽しい。
「リシアさんなら猫だからとか関係なく愛してくれてますよ」
体を洗い終えたククが、ゆったりとした動作で湯舟に入ると、俺達が居る深場まで降りて肩まで浸かる。
目の前にうさぎ顔のケモ美女が、首から上だけどひょっこりと出している姿が珍妙で愛らしい。
洗い場では、トトがククと入れ替わり、ラミアの親子にワシワシと洗われている。
「でも皆さんビックリする程綺麗ですね」
「そういうヨシノ殿も、髪を上げるとなかなかの器量ではありませんか」
「スタイルもいいですしね」
「そそそそんな、私なんて皆さんに比べれは全然ですよ! 地味なのに変にお肉が付いてますし!」
髪を上げて手拭で巻いたローザが湯舟に入ると、水嵩《かさ》が少し増す。
流石にクク程ではなかったが。
よしのんが2人から褒められるも、お腹や太腿に着いたお肉を摘まみながら全力否定。
日本人にしては胸とお尻は立派なもので、結構ムチムチしていて股間に来る体付きだ。
リシアの胸を減らし、お尻をそのままに太腿とお腹に柔らかそうな肉を盛れば、こんな感じになるのではなかろうか。
これも正直好物です。
ローザを許容できる悪食なため、多少太くても好物になってしまうのはご愛敬だ。
「そうね、私が言うと説得力なんてありませんわね……」
「いえいえ、ローザさんの体の柔らかくて凄く素敵です! あんなに心地のいい体験をしたら、誰だって忘れられませんよ!」
「ローザちゃんの体は私なんかよりもはるかに魅力的なんだから、もっと自信を持つべきよ」
「ですね。ローザ殿ほどふくよかで優しい顔の女性は、傍に居るだけで心が和みます」
「特に迷宮から帰って来た直後にローザさんに抱きしめられると、安堵感しゅごいでふから」
「安堵し過ぎて時々泣きそうになります……」
「あらあら、同じ女性にまでそう言われますと、何だか照れてしまいますわ」
よしのん達に加え、狐っ娘のフィローラとダークエルフ形態のセシルも参戦しての力説に、俺も大きく頷くと、ローザが柔らかい笑みを浮かべて恥ずかしがる。
観音様や……。
全裸の女性に言うと特定の部位に聞こえてしまうので、ここは女神様といい直そう。
魔法の明かりで照らされるセシルの駄肉感あふれる黒い肌やケモケモフィローラも、ローザに負けず劣らず魅力的だ。
「私達の夫である当のトシオ様がローザちゃんの体を好んでいるんだから、ローザちゃんはそのままで良いのよ。ね?」
リシアの〝ね?〟の部分が俺に向けられているので、ローザに向けて再度大きく頷くと、ローザが笑いながら涙ぐんだ。
今すぐ彼女の元へ近寄り抱きしめてあげたい気持ちになるも、なんとか踏みとどまる。
「主様が変なルールを作る気持ちが分からんでもないほどじゃ」
人間サイズのラミア形態になっていたイルミナさんがよしのんのとローザの間に割って入り、俺の代わりにローザの髪を撫で落ち着かせると、魔法陣を展開した。
横で本性ともいえる巨大ラミア状態に戻るイルミナさんに、その形態を初めて見て驚いたよしのんが、口を大きく開き、可愛いアホヅラを晒す。
湯船からお湯があふれ出し、湯気で浴室が白くなる。
ミネルバが風の魔法が発動させ、天井付近にある窓から湯気を逃がした。
その間に、混乱で固まりあわあわしている勇者様をイルミナさんが片手で掴むと、その巨大すぎる魔乳に押し込んだ。
胸の谷間からひょっこりと顔だけを出すよしのん。
首だけを出す格好はククとお揃いだが、そのうらやましさが段違いだ。
「……あ、これローザさんに抱きしめられてるみたいですっごいく気持ちが良いです」
「これをもってしても同等とは……。ローザよ、お主は自身の体を誇ってしかるべきじゃな」
「は、はい、ありがとうございます」
イルミナさんの大きな手で髪を撫でられるローザが、またも照れながら感謝を述べる。
ローザもイルミナさんの巨大ラミア形態を初めて見たはずなのだが、肝が据わっているのか全く驚いた様子はない。
ローザも色々な意味ですごいな。
そしてイルミナさんはクソエロい。
湯船に浮いた魔乳の先端に目を向けながら、ユニスのオパーイをたゆんたゆんとさせていると、トトと和風ロリドワーフ姿のメリティエも湯船に入り、またも浴槽からお湯が溢れる。
「メリーも来るかえ?」
「いい」
イルミナさんが娘に手を伸ばそうとするも、メリティエが感情の籠らない声でプイっと顔を背ける。
「つい先日まで〝お母さんお母さん〟と後ろを付いて離れてくれなんだのにのぅ……」
「小さい頃の話しを昨日のことの様に言うな」
娘に逃げられてしまったイルミナさんが、ローザをよしのんの埋まる胸の前で抱きかかえ、2人を猫可愛がりして寂しさを紛らわす。
ローザもイルミナさんの心境を理解してか、成すがままだ。
だが実の娘であるメリティエは、母に背を向け顔をしかめていた。
親や親せきのおばさんに記憶に無い幼い頃の話をされるのが不快なのは、どこの世界でも一緒の様だ。
「トシオー、あのぷくーって膨らむのやってー」
トトがイルミナさん親子のほろ苦さなど全く気にせず、手拭を持ってこちらにやって来る。
あの〝ぷくー〟というのはタオルクラゲならぬ手拭いクラゲの事だが、それを大声で要求されてしまった。
「え?」
「……いいよ、ほら貸してみ」
慌てながらきょろきょろと周囲に目を向けるよしのんをしり目に、トトの要望に応えてクラゲを作る。
ざばっ、ブクブクブク~。
こんなことならさっきローザを抱きしめに行けばよかった。
「おー、トシオは凄いなー」
「一級クラゲ職人だからな」
空気でドーム状になった手拭を尊敬の眼差しを向けてくるトトに渡すと、ぷっくりと浮かんだ手拭クラゲを太い指で突く。
「さっきもだが、その何とか職人というのは流行っているのか?」
「俺の中では割と?」
メリティエがトトと一緒になってクラゲを突きながら問うきたので適当に返す。
他にもリシア愛で職人とか、ローザのお腹一級建築士とか。
ローザ的には良い迷惑だろうが。
ようやく事態を飲み込み始めたよしのんが、声を頼りに俺が居る方へと顔を向ける。
視線が同じ黒髪であるメリティエに向いているので、正確な位置は特定できては居ないようだ。
5メートル離れているだけで髪の長さもわからないとは、眼鏡無しだといよいよもってやばいな。
眼鏡っ狐のフィローラは眼鏡が無くてもそこまで酷くはなさそうだけど。
そしてめがねっこの〝こ〟の字に〝狐〟を当てるの良いなぁと、内心で自画自賛。
「一ノ瀬さん居るんですか!?」
「居るよ、どうしたよしのん?」
「どうしたじゃありませんよ、いつからそこに居たんですか!」
「最初から? 頭を洗ってる俺の横に入って来るなりいきなり座られた時にはめっちゃビックリした。あ、出来るだけ見ないようにはしてたから大丈夫だよ」
「出来るだけって、少しは見たんですよね?! それ全然大丈夫じゃないじゃないですか!?」
顔を真っ赤にしてパニックになるも、俺が居るため湯船から出るに出られないよしのん。
それを笑いをかみ殺しながら相手をする。
「そう? でもある漫画でも言ってましたやん。〝外見なんて関係ない、問題なのは魂だ〟って」
「知りませんし今それ全然関係ありませんから!」
「マジか!?」
「問うまでも無くじゃな」
「その見た目が可愛いからと宗教を拗らせてる人が言って良いセリフではありませんね」
俺のすっとんきょうな返しにイルミナさんやリシアまで呆れ、その状況がツボに入り馬鹿笑い。
状況についていけず目を回し、身動きの取れないよしのんを視姦――じゃなくて観察しながら、俺は隣に居るリシアの髪を撫でユニスの乳房を三度目のたゆんたゆん。
これ以上よしのんをいじめるのはさすがに可哀想なので、湯舟から上がることにした。
妻達の裸体は名残惜しいが、のちほどたっぷりじっくり拝見させてもらおう。
その日の晩、ピロートーク中に奇妙な事実が判明した。
セシルの持っていた人化の指輪、これを彼女に渡したのはイルミナさんだった。
お風呂でセシルがイルミナさんの前でダークエルフの姿を現したため、そこでセシルの所持していた指輪に気付いたのだとか。
二人の話しを聞くと、渡した当時はイルミナさんはローブで顔を隠しており、セシルも今より幼くダークエルフの姿であったため、つい先程までお互いに気付かなかったそうだ。
世間って狭いねっ。
人化魔法を魔族領の人間に施していたって言ってたから、なんとなくそうなのかもとは思ってたけど。
でも、自分で作っておきながら、セシルが普段から身に着けている物に気付かないとか、それもある意味凄いな……。
ちなみに同じようなアイテムを全部で3つ作り、残りの2つはとある親子に渡したそうだ。
俺はおもむろに正面玄関の方、正確には3つ並ぶ個室の真ん中の部屋に目を向けた。
トアルオヤコトハダレナンダロー(棒)。
そう言えばセシルって故郷でミノタウロスハーフなんて悪口を言われてたそうだが、実際のミノタウロスの女性であるモリーさんは筋肉質な感じだった。
ダークエルフ達の中ではミノタウロス=牛=デブってイメージで、〝身近には無いものに対するイメージと実際の印象の差〟みたいなものかな?
なんとなくそんな推測をしながら、妻達に囲まれ眠りについた。
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