四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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102話 聞こえていますか?

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 さてと、次はレスティー達への連絡だ。
 そういえば別れて3日ぶりか?
 あいさつ代わりになにかボケたくなるな……よし。

『…ティ…きこ……す…、…スティ…きこえ…ますか…? レスティー、聞こえていますか…? 今あなたの心に直せ』
『やだナニ!? こわい! もうやだ~! あ、もしかしてトシオでしょ? ビックリするから突然変な冗談やめなさいよね!』
『ちっ、バレたか』

 せっかくの〝心に直接呼びかける〟ボケがあっさりばれてしまったや。
 だが3日ぶりのレスティーは声の調子からして、割と元気そうであったのでホッとした。

『連絡も寄越さずにほったらかしにして。リシアちゃんから聞いてるわよ、あんたがセシルちゃんだけでなく、フィローラちゃんやメリティエちゃんなんて小さな女の子まで毒牙にかけたって。どうせ浮かれて私達の事なんて忘れてたんでしょ?』

 毒牙て、今時そんな言い方する奴……今時も何も、ここ異世界だったや。
 てか情報源リシアって、リシアはレスティー達と連絡とってたのかよ!?

『え、なんでリシアと連絡取れてるの?』
『連絡位取れる普通にとれるわよ』
『いやいや、だから、どうやって連絡が取れてるのって聞いてるんだけど?』
『なに言ってるのよ、冒険者ランク2なら遠くに居てもPT内で会話は出来るじゃないのん』

 初耳である。
 ランク2って〈上位職への転職許可〉だけだと思ってた。
 ならボーナススキルで取る必要無いのか、ポイント浮いたぜラッキー!
 ……どんなにポジティブに言い繕っても、自分の見落としのマヌケさは覆らない。

 そして先程大福さんたちが言い淀んだ理由に気づいた。
 冒険者ランク2のスキルなら常識過ぎて、話題にすら上らなかったのだろう。
 そんな常識を見落としてた俺が滑稽すぎる。

 よくよく考えたら、上級職への転職許可はスキルじゃないもんな……。

『マジかよ今知ったよ衝撃の事実過ぎてすごくショックでかいよ!』
『あらやだ、冒険者なら、下手したら子供だって知ってる常識じゃないの。……そういえばトシオって流れ人だったわね、異世界の人って大変ねぇ』

 ほら、やっぱり冒険者の常識だったじゃないか……。

『レスティーの方から連絡してくれても良かったのに』
『リシアちゃんが、最近あんたの負担が増えてるみたいだし、緊急時以外は定時連絡は自分に連絡をくれって言ってたわよ。トシオちゃんの心配もあるでしょうけど、私達にも心配かけたくなくて、そっちの情報も敢えて遮断してたんじゃないかしら? あの子、全体の様子を観察するのが得意だし』

 レスティーの言葉に土間に居るリシアに目を向けると、ククが下ろし終えた肉をスライスしていた。
 確かに家のことは全て彼女を中心に取り仕切られている。
 ローザは食事担当だが、料理以外の事をしている姿は見たことが無い。
 掃除洗濯も俺を除けばローザやミネルバ以外のみんながやっている。
 それら家事の全てにリシアが関わっている。

 社長秘書リシアさんマジ有能。
 だが明らかにオーバーワーク過ぎる。
 手伝おうとすると怒られるので手出しできないと手をこまねいている自分が情けない。
 これは別の形で彼女の負担を減らさなければ。

『それで、トシオちゃんが連絡してきたってことは、そっちで問題が起きたってことかしら?」
「出来ればすぐに合流したいんだけど、そっちは今どんな具合?』
『あら、やっぱり何かあったのん?』
『事情は後で話すけど、今はとにかく戦力の増強が最優先になった。それにはレスティー達のレベル上げも必須だ』
『迷宮の敵の強さが上がったとかかしら? まぁいいわ。あたし達は昨日の夕方頃に迷宮の入り口に到着して、今朝迷宮を発ったところよ』

 やはり先程MAPで確認した通りか。

『なら今から迎えに行くからそこで待っててくれ』
『隠さなくて良いの?』
『あーそれね』

 レスティーは俺が異世界人であることの正体を隠さなくてもいいのかを問うているのだ。

 んー、どう動くべきか。
 レスティー達には俺の正体がバレているから良いけど、迷宮内で助けた3人には知られていない。
 しかしワープで迎えに行ったら俺が特殊スキル使いだと知られてしまう……。

 よしのんを全面に押し出し、勇者吉乃とその一行みたいなフリで行くか?

 メリットは俺の正体を隠せるが、デメリットは女勇者がここに居るという噂が広まりかねない。

 それとも勇者の子孫と偽るか?

 ワープスキルはかなりのチートスキルだ、こんなの持ってると世間に知れたら、それこそ利用しようと変なのが寄ってくる可能性が出てくる。

 もう俺が〈流れ人〉として堂々としてようか。

 正直サーチエネミーとこれだけの魔法習熟度が有れば、勇者でも居ない限り余裕で返り討ちに出来るだろう。
 それに俺が流れ人であるより、よしのんがここに居る方がバレた時のデメリット大きい。

 いや、もういっそのこと彼らも俺達の仲間に引き込むというのはどうだろう?
 問題としては、助けたあの男だな。
 首都の冒険者として売り出し中の若手冒険者として少しは名の知れた人物だろうし、そんな男が誰かの傘下に入るだろうか?

『少し聞きたいことがあるんだけど』
『なにかしら?』
『助けた男なんだけど、どんな感じの人物? 場合によってはPTに引き入れようと思うんだけど』
『そうねぇ、今は親友を失って消沈してるけど、根は良い子よ。ほかの二人も。おそらく仲間になってくれるんじゃないかしらん』

 おそらくと言いながらも強く断言するような口調だった。

 レスティーがそういうなら間違いないだろう、なら引き入れる方向にもって行こう。
 無理だった場合は……適当なところで放流するか?
 もしくは軟禁……お互い犯罪者じゃあるまいし、流石にそれはないな。
 身バレは仕方が無いとあきらめよう。

『……わかった、それじゃ迎えに行く』
『は~い、待ってるわよん』
「ミネルバおいで」

 連絡を終えるとリシア達にレスティーを迎えに行くと伝えて玄関へ。
 アダマンタイトの靴を履いて再びワープゲートを――

 迷宮から午前中歩き通しか……だめだ、イメージが沸かないから迷宮の入り口に出そう。
 周囲がイメージ出来ない場所にワープゲートは出せないんだよなぁ。
 似たり寄ったりの風景が続く迷宮は、階層と場所の大体の位置がイメージできれば何故か繋がるけど。

「ワープゲートっと」

 ゲートを開くと迷宮の入り口にでる。
 ボーナススキルの〈マップ〉を開いてレスティー達の居場所を探り当てると、フレアボール式空中走法術で高速移動に移る。
 空中走法は地形を気にせず移動できるのでかなり速い。
 移動に使うフレアボール程度ならMPなんてすぐ回復してしまうしやはり便利ですなぁ。
 難点は小さいとは言え破裂音がするため、隠密性に欠けるところくらいか。

 空を走るというファンタジーな状況を30分ほど楽しんでいると、『トロールと交戦中よ! お願いだから早く来てー!』との緊急連絡が飛んできた。
 MAPで確認するまでもなく、森の中で火柱が上がる。
 レルティー達の前の炎の中には、大きな人影を確認する。

 鑑定眼発動っ!


 トロール Lv49
 属性:土。
 耐性:打撃半減。
 弱点:火ダメージ増加。
 状態異常:なし。


 体長5メートルを超えた横にも太ましい巨人3体に、レスティー達が魔法で応戦しながら逃げていた。
 トロールの動き自体は遅いので逃げられなくはないが、逃げている先にもう6体のトロールが待ち構えているのでなかなかやばい状況だ。
 空中にアースブラストの石柱を生み出し、射出せずに待機させ足場とすると、20メートル程上空から地表のトロールに狙いをつける。

「〈ヘルファイヤー〉!」

 トロールの足元から巻き上がった業火が炎の繭となって巨体を飲み込むと、下半身をこんがりと焦がし、その体積を半分にしてやった。
 だが、トロールの黒く炭化した肌が瞬く間に赤く泡立ち、肉を盛り返すと、元の状態に戻ってしまった。
 大きさを半分になるくらい燃やされても短時間で元通りとか、凄まじい再生能力である。

 てか〈炎禍〉の火属性強化に加えて魔力極振りの状態でLv49の火弱点モンスターが生きてるって、どんだけ生命力たけーんだよ!

「今何とかするからそこで止まれ、その先にトロールが6匹待ち構えてるぞ!」
「トシオか!? 良いところに来てくれた!」
「なんなのその浮かんでる柱は!?」

 ユーベルトが上空の俺を見ながら返事をすると、カーチェからツッコミを頂いた。

 こんな状況で岩にツッコミいれるとか、この子カーチェは余裕だな。
 しっかし、あの再生能力はレスティー達からすれば面倒くさいだろうなぁ。
 俺も面倒くさいし。

「ミネルバ、スマンがあっちに居る6体を頼む。ヘルファイヤーの三倍掛け位で行けると思うから」
「ちー」

 人頭の猛禽が返事代わりに一鳴きし、レスティー達が向かっていた先に急行すると、俺も石柱から飛び降りた。
 その手には既にショートパルチザンが握られている。

「紅蓮一閃!」

 斬撃短槍の穂先に10倍掛けフレアランスを生み出し、その穂先を細めて伸ばし、一刀のもとに3体の巨人の首をまとめて飛ばす。
 首を飛ばされては流石に再生もできないか、トロール達の粒子散乱が開始した。

 命を刈り取るとはこう言うことだ。

 トロール達が消えた後には大き目の土属性鉱石アースクリスタルが3つ転がる。

 かなり厄介そうな敵なのに、ドロップアイテムが大きいとはいえ属性鉱石しか落ちないとかしょぼすぎやしませんか?

 やるせなさを感じていた所に皆が集まると、上からミネルバも下りて来た。
 敵の反応が消えている事から、どうやら向こうに居たトロールも片付いたようだ。

 冷静に考えると、トロール6匹を苦も無く仕留めてくるハーピーとか、間違っても敵として出会いたくない。
 TRPGで高位魔法を乱射してくる高速飛翔体とか出てきたら、ゲームマスター吊るし上げレベルの暴挙である。

「お疲れミネルバ。みんなもおひさー」
「おひさー。ねぇねぇトシオ、さっきの空を飛んでたやつはなに? それに空飛ぶ柱も!」
「魔法を使って空中を走ることを昨日マスターした。石柱はストーンブラストをその場に待機させて足場にしただけだ」
「今の赤い剣は? 迷宮で拾ったレアアイテムなの?」
「いや、魔法のフレアランスを10倍掛けにして伸ばしただけ。これは一昨日マスターしたモノにアレンジを加えてみた」

 俺に抱き付きながら軽い挨拶を交わすカーチェを、何事もないものとして引きはがしながら説明する。

 説明してあげたのになぜに不満顔?

「俺達が苦労してる間になにを変な事しているんだ?」

 それを見ながらぼやくユーベルト。

 いや、苦労なら俺もしてたから。
 この2日だけでも、勇者と戦ったり、勇者を拾ったり、エキドナなんて化け物と遭遇したり。
 それ以上の苦労をしてる奴がこの中に居るなら、今すぐ名乗り出て話を聞かせてくれ。
 大いに興味があるし是非今後の糧にしたい。

「ららら~♪ レスティーに聞きましたよ~、私の歌が恋しくなったのかい?」
「トシオくん、お腹すいたよ~」
「アーヴィンはともかく喜べアレッシオ、今晩は肉食い放題だ。腹いっぱい食べてもまだ余るほどだぞ!」
「本当かい!」
「任せろ!」

 リュートを奏でるアーヴィンをおざなりにしつつ、お腹をさすりながら空腹を訴えてくるアレッシオに親指を立てて白い歯を見せ告げてやる。
 情けない声を上げていたアレッシオが、俺の強気な返事に満面の笑みとなる。

 皆の様子も視線だけで伺うが、特に怪我をしているとかも無く、元気そうで何よりだ。

 そんな彼らのレベルを見ると少し上がっていた。
 別れた後も魔物との交戦はそれなりにあったようだ。

「昨日から少し面倒なことになった。訳を詳しく説明するからとりあえず入ってくれ」
「これは一体……?」

 ワープゲートを開き直して納屋に繋ぐと、ユーベルト達が特に気にした様子も無く中に入っていくが、3日前に助けたディオンとその連れ2人が、目をぱちくりさせながらゲートを見ている。


 カリオペ
 エルフ 女 54歳
 マジックキャスターLv47


 ジルケ
 ドワーフ 女 17歳
 プリーストLv49


 エルフの女性がカリオペで、ドワーフの女性がジルケと言うのか。

 カリオペさんの見た目は金髪セミロングのスレンダー美女。
 やや神経質そうな印象で、何処かのお嬢様といった上品さを感じる。
 ドワーフのジルケさんは見るからに純朴そうで、小柄で愛らしい三つ編みおさげの女の子だ。

 セシルやメリティエとは全く違う印象を受けるが、まぁ2人共、特にメリティエはドワーフに化けたラミアだしな。
〈獲得経験値増加〉が無い状態でこのレベルなら、中堅に足を踏み入れたくらいか。

「まぁとりあえず入ってくれ」

 中に入るように促すと、全員が納屋に入るのを確認しゲートを閉じた。 

「改めておつかれー。それじゃまず最初にだけど、君達3人は今見た事を決して口外してはいけません。もし誰かに話すと君達の身に危険が及ぶ可能性がある。それも国家に狙われるレベルの事なので、本当に注意してくれ」
「わ、わかった……」

 先制パンチに軽く脅しをかける。
 ディオンが焦りと不安の表情で頷くと、二人も首を縦に振って頷いた。

「それで、今どういった状況なんだい?」
「クサンテ、それはもう少し待ってくれ。この3人の出方次第で話せなくなるから」
「自分達の、出方?」
「うん、君らはこれから王都に帰ったあとどうするのかなぁと。冒険者としてやり直す気?」
「自分はそのつもりだ」

 俺の問にディオンが頷く。
 どうやらあれ程の目に遭ってもまだ冒険者としての志は折れていないようだ。
 やはりこの世界の住人は俺なんかより遥かに精神が強く出来ている。

「そちらの2人も?」

 カリオペとジルケはやや戸惑いながら答えが出せずといった様子。
 だがその視線はカリオペがアーヴィンを、ジルケがアレッシオの方をちらちらと見ている。
 見られているアーヴィンはその視線に気が付いておらず、1人リュートを奏で、アレッシオは座り込んだまま緊張した面持ちで俺とジルケを交互に見ている。

 ……そういう事か。

「それじゃ単刀直入に言わせてもらうね、俺達の仲間にならない?」
「君達の仲間にかい?」
「王都で冒険者仲間が居るなら無理にとは言わないけど」
「いや、そんな仲間は、もう居ない……」

 仲間と言う言葉に亡き戦友達の顔を思い出したか、ディオンの顔に一瞬陰りが生まれるも、その瞳には強い意志の光が宿る。

〝友の為にもこんなところで挫折してたまるか〟

 俺には彼の眼がそう告げているように見えた。

「もしまた1から仲間を募るってことになると、以前の戦力に戻るのにかなりかかるだろうし、俺達の仲間になってくれるなら、この瞬間からこれまで以上の戦力になることは保証する」
「……返事をする前に一つ聞かせてくれ、君達は何か問題を抱えているようだが、その問題とは何んだ?」

 PTのリーダーとして余計なリスクを背負い込みたくない。
 当然の質問と言える。

「んー、それを言ってから断られた場合、しばらく君らを軟禁しなければならなくなる。その場合の身の安全と食事の提供は約束する。もしくは適当な場所に解放かな。それでも良い?」
「拘束期間はどれ位だ?」
「一週間程。それだけあれば問題に対抗できる準備は出来ると確信している。正直拘束する必要も無いとは思うんだけど、情報漏洩を避けるって意味で、あくまで念のためってところかな」

 覚悟を知るための脅しをかける。

 1週間で準備できる確信というのも、この後行う予定の仲間を増やそう計画その2が問題無く達成されればの話しだが。
 ちなみにその1はモーディーンさん達の勧誘だった訳だが。

 いや、今からでも遅くはないか?

「確信できると言うだけの力は君達には既に示していると思うけど、あんなのはまだほんの一部に過ぎないとだけ付け加えておくね」

 壊滅の危機にあった彼らを俺達は難なく救出し、先程も超再生する巨人トロールを瞬殺しゅんころしてみせ、ダメ押しとばかりにワープゲートまでお披露目した。
 これ以上の手の内は、仲間にでもならない限り見せる必要はないだろう。

 むしろ見せ過ぎなくらいだ。

「……わかった。自分は彼らのPTに入ってもいいと思うが、二人はどうだい?」
「私も構いませんわ」
「オラもだ」

 ディオンが仲間の二人に同意を求めると、二人もそれぞれ頷く。
 真面目な交渉の最中にも関わらず、オラっ娘が少しツボに入る。

 不謹慎な上に失礼な話である。

「ディオンだ、よろしく頼む。こっちはエルフのカリオペとドワーフのジルケ」
「トシオだ、後で他の仲間も紹介するよ」

 ディオンから手を差し出されたので握り返すと、彼の隣りに居た二人にも会釈をしておく。

「わー、これからもジルケさんと一緒に居られるんだね!」 
「皆さんとご一緒出来る喜びを、今こそ歌にして届けたい~♪」

 交渉中に謎の緊張を強いられていたアレッシオがジルケに駆け寄り彼女の手を取って見つめ合うと、その隣でアーヴィンがリュートに手をかけ歌いそうになったのでユーベルトに命じて止めさせた。

 こんなところで歌われては近所迷惑である。

 そのアーヴィンの歌を止めるように命じた俺を、何故かカリオペさんがすごい形相でにらみつけてくる。

 ……何故睨まれた?
 それにアレッシオとジルケはやっぱりそういう仲なのか。
 だからレスティーが確信めいた風に〝仲間になってくれる〟って言ってのけたのか?
 ちっ、どうせならレスティーとユーベルトにこそ恋人が出来れば良かったものを……。

 そのレスティーだが、いつの間にやらディオンの傍らに立ちその肩に手を添え、アーヴィンとユーベルトの攻防を優しい顔で見つめている。
 俺はあえて、あえて超法規的措置で見なかったことにした。

 俺の魂の選択を笑わば笑え。

 それから俺達の置かれている状況を彼らに説明すると、その場に居たほぼ全員が顔をしかめた。

 うんわかるよ、そりゃ誰だって国家に狙われかねない事態なんて、好き好んで飛び込みたく無いわ。
 でもアーヴィン、アレッシオ、ジルケ、よくわからないからって自分たちの世界に入るのはやめてね。

 逆にカーチェは無い知恵使おうとして、頭から湯気を出しそうな勢いである。
 
「だけど対抗手段はいくつかあるから心配するな。今は単純に人手が足りないだけで、その人手の当てもある。とりあえず今日のところは風呂にでも入ってゆっくりしててくれ。俺はこれから人手集めの交渉に行ってくる」

 その後は彼らにリシア達を紹介し、リビングでルーナと戯れていたよしのんに風呂を沸かす様に頼む。

 そして再びミネルバを連れてワープゲートを開いた。
 移動先はクレアル湖のいつもの湖畔。
 目指すは湖を挟んで対岸に位置するライシーン第一迷宮の近くにあるタンザスの村だ。 
 その場で大きく飛び上がると、空中で足元にアースブラストを斜めに発動する。
 石柱の先端に着地と共に打ち出し初速を得ると、勢いを失ったところで石柱をパージ。
 タンザスの村があるであろう方角に空を走り始めた。

「ミネルバ、危ないから湖面から離れてもっと高く飛ぶように!」
「ちー…」

 間違っても湖面すれすれを走るなんて暴挙はしない。

 以前テレビで見た、水面近くを泳ぐアシカに下から食らいつく巨大ホオジロザメのジャンピング狩猟シーンを思い出す。
 そのアシカがミネルバでホオジロザメがこの前湖に居た巨大魚に脳内で置き換えられ、容易にイメージ出来てしまい、手に変な汗をかく。

 映像が鮮明にイメージ出来てしまう想像力に、我ながらぐんにょりである。
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