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71話 欺く術
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セシルの事もあり、やはり魔族のことは聞いておいたほうが良いだろう。
本日二度目のピロートークにて、大きな円形の敷布団の上で胡坐をかき、皆から〝魔族とはどういったものなのか〟を聞かせてもらった。
種族的には魔族とは魔物の様な力を持った恐ろしい種族で、外見は人に酷似しており、青や褐色の肌、頭部には角、背中には蝙蝠の羽、尻には細い尻尾が生え、眼球の白目部分が黒いのが特徴らしい。
まんまオーソドックスな悪魔のような特徴である。
時折魔族領から攻めてくるため戦争に発展することもあるそうだが、ここ20年は大人しくしているようだ。
なので、一般人からすれば「魔族だってー、きゃーこわーい。でも見たこと無いし、身近に居るモンスターの方がよっぽど危険だから自分達には関係無いかなー」という感じだそうだ。
一般人の発言は皆の意見を俺の脳内フィルターを通してのでっち上げだけど。
ちなみにダークエルフみたく魔族領で暮らす種族には、ラミアやミノタウロス、コボルトにスキュラなどが居るそうだ。
モンスター娘の鉄板であるラミアをお迎えする可能性が激減しやがりましたよガッデム!
どこかに居ないかなぁラミアとか魔族。
ミノタウロス女性も実物が見てみたい。
そんな願望はひとまず置いておき、ある事への布石を敷く。
「もし仮に魔族や魔族領の種族と出会う機会があった場合、家に引き込んでも良いかな?」
「奴隷契約でちゃんと縛ってくれるなら構いませんよ? ですが、魔族領の他種族は奴隷としてならこの国に滞在することも可能ですが、魔族は法律でその一切の存在を認められてませんので注意してくださいね?」
魔族に関しては残念だが、他の種族は『危険かもとは感じるが、別に嫌悪の対象では無い』と言うことか。
「みんなもその点は大丈夫?」
妻達の顔を見回し、全員からの賛同を得られたのを確認する。
それを俺の左腕に暴力的な質量を押し付けるながら聞いているセシルが、冷や汗を流して黙り込んでいるので、早速奴隷契約を飛ばす。
驚きながらこちらに注視する彼女に頷くと、しばらくしてメッセージポップが現れた。
《新たな使役奴隷を手に入れました》
彼女がダークエルフであることは、このまま隠していてもボロが出てばれてしまうかもしれない。
そうなってからでは皆からの信頼を失う事態になりかねない。
なので、今この場でばらすことにした。
「実は皆にも知ってもらいたいことがある」
そう言ってセシルの右手に向けて手を差し伸べると、不安と緊張で顔をこわばらせた。
「大丈夫。何があっても守るから」
「っ……はい……」
セシルが一度息をのむも、俺に見せた時以上の覚悟を以て手を預けてくれた。
俺は彼女の手を握り返し、中指にはまる指輪をスっと引き抜く。
途端、銀糸の髪に艶やかな紫の瞳を持つ褐色のエルフへと姿を変える。
変貌を目の当たりしたローザとクク、そしてフィローラが驚きで言葉を失うも、他の皆からの反応はいまいちだった。
「今の話の流れとやり取りでは、さすがに驚けはしませんね」
「そうよね」
ユニスの呆れ笑いにリシアも同意し微笑んだ。
「色が変わっただけだよね?」
「うむ」
トトとメリティエに至っては、〝だからなに?〟と言わんばかりである。
「私は、ここに居てもよいのですか……?」
「トシオ様が迎え入れ、私達も受け入れた。そしてあなた自身がここに居たいと望むのなら、ダメな理由なんて何処にあるの?」
「リシアさん……」
感極まって本日何度目かの涙を流すセシルにリシアが寄り添い、優しい顔で抱きしめる。
ここ最近はずっと一緒に過ごしていたためか、こうしてあっさりと受け入れられた。
よかったねセシル。
しかし、俺達が本当に驚かされるのはここからだった。
「他にも俺達に黙ってて言い出し辛くなってたりする人が居るなら、今の内に打ち明けてくれると嬉しいかな。セシルみたいに実は種族が違うってんでも全然大丈夫だから。俺の女性の趣向はご覧の通りだし、蜘蛛女くらいなら全然いけるよ」
俺の中にある謎の昆虫と蜘蛛は別モノ感を気軽さ気楽さを乗せて言ってみたところ、真っ先に手を挙げたのは、セシルを抱きしめていたリシアだった。
え、リシア?
「実はモーディーン叔父さんの様な顔にもなれます」
と、顔が猫に変形させた。
全身も毛に覆われた完全無欠のケモっ娘に変身して見せたのだ。
髪型がそのままのため、人っぽさのある美猫顔の人間にも見える。
鼻や口周りと、体毛が全身化した以外あまり変わっていないとも言うが、印象の変化は非常に大きい。
「うっわぁなにそれ、めっちゃ綺麗……」
感動しながら顔に触れさせてもらう。
いま普通に骨格ごと変化したけど大丈夫なの?
いやここはファンタジーな世界だ、無粋な詮索はやめておこう。
「幼い頃、母にこの姿にならない方が良いと言われ、それ以来ずっと封じていたため忘れていたのですが、セシルの変貌を見て思い出したのです。あ、ちゃんと元に戻れますので安心してください」
こんなすごいことを忘れるとか、とんだうっかりさんである。
「それにしても、本当に綺麗だなぁ」
「リシアちゃんのその姿を見るのは久しぶりですわ」
幼馴染のローザは目にしたことがあったようだ。
普段はローザのお腹を触っているリシアが、今度は逆にリシアが撫で回されている光景が少し新鮮だ。
「トシオ様が望まれるのでしたら、この姿でお相手することも……」
「是非お願いしたいとだころけど、いつものリシアの顔が見れないのも悩ましい」
恥じらいながらもそう提案してくれるリシアの唇をついばむと、ククやトトの様な柔らかな毛が口元に触れて心地よかった。
そんな感触が急に元の柔らかな唇に戻り、見慣れた美しい猫耳美少女の顔となっていた。
「はい、今日は時間切れです」
悪戯っぽく舌を出すリシアさんさいかわ。
けどまぁ――
「やっぱりリシアはその姿の方が見慣れてて安心するけど、さっきの姿も時々で良いから見せてくれるかな?」
「はい♪」
その笑みがこれまた可愛いので再び唇を重ねる。
……もしかすると、リシアは自分の異形を晒すことで、セシルにダークエルフであることを気にしなくても良いと伝えたかったのかもしれない。
リシアならそれくらいの気遣いはやってのける女性だ、過大評価かもしれないが、きっとそうに違いないと強く思う。
「ありがとね」
「もう、あなたはどうしてそう勘が良いのですか」
最愛の妻の優しさに心からの感謝を贈ると、リシアが照れ隠しに怒った表情を作り、直ぐにすり寄り甘えてくる。
俺にはもったいないくらい良く出来た奥さんである。
「他には打ち明けたい秘密を持ってる人は居ない?」
再度皆を見回し確認すると、今度は癖っ毛の金髪と細長な耳が特徴のメガネ美幼女であるフィローラが、小さく手を上げると同時に彼女から〝ぼふんっ!〟という音と白い煙が溢れた。
すぐ晴れた煙の中からは、金色の毛に覆われたケモっ娘美幼女が姿を現す。
その背中からもっふもふの狐の尻尾が三本揺らいでいた。
フィローラ
獣人 女 15歳
「「「「……………」」」」
「えっえっ!?」
細長の口をしたキツネ顔にずれかけたメガネがこれまた可愛いのだが、唐突過ぎて皆が言葉を失ってしまっている。
「よっこいしょっと」
皆の沈黙に軽いパニックを起こしているフィローラの両脇に手を入れ抱き上げると、胡坐をかいていた左足に乗せて撫で愛でる。
そこそこ大きかった美乳が萎んでしまったが、胸から腹部にかけてトトと同じ複乳になっている。
「この姿も可愛いですね」
「うん可愛い」
「可愛いですわね」
かわいいもの好きなリシアがいち早く立ち直り、一緒になって撫で始めると、ローザもそれに混じる。
猫耳美少女と豊満美少女が、丸いメガネをかけた狐美幼女を愛でる夢の競演。
神さまありがとー、ぼくにケモ嫁をくれて!
リシアにククにトト、ミネルバにユニスにフィローラ。こうしてみると、我が家のケモ率の異常な高さに感動で目から汗が溢れそうだ。
「フィローラちゃんはなんでマルモル族に変身していたの?」
「なぜだかわかりましぇんが、昔から毛むくじゃらの男性が怖くて……。さっきの姿なら人種の方ともお近付きになれるかもと思ったためでふ。獣人であの大きさでは見下されかねませんので、我が家に伝わる変身スキルでマルモルに化けていました!」
ローザに聞かれ、キツネ耳を動かしながら元気よく答えるフィローラ。
トラウマ的な何かと好みの問題かな?
てかスキルって学んで習得できるものなのか。
「でしたら、人やエルフに化ければ良かったのでは?」
「身長までは誤魔化せないので、あはは……」
ユニスのもっともな疑問に、フィローラが頭をかいて苦笑い。
視覚だけでなく骨格や体毛の感触、挙句に俺の鑑定スキルは誤魔化せても、身長はだめなのか。
面白いスキルだな。
「私も良いか?」
俺の前にやって来たのはメリティエだ。
リシアやフィローラの変化を目の当たりにし、何か対抗心めいた物を燃やす和風美幼女。
いいだろう、たとえどんな物が来ようと受け止めてやんよ!
「ドンと来い、魔族でもラミアでも受け入れる覚悟はできている!」
「なぜわかった!?」
普段冷静沈着な彼女にしては、珍しく慌てふためいた。
どうやら言い当ててしまったようだ。
魔族かラミアか、一体どっちだろ?
何故か不満気な顔をしていたが、気を取り直したメリティエが呪文を唱え始めると、足元に出現した魔方陣が小さな身体を下から通り抜け頭上に上がる。
魔方陣の通過箇所から足の代わりに黒く艶かしい蛇の尻尾に変化。
次いで腰から上は濃い青紫の肌をした人の上半身、そして最後に現れた頭部には後頭部から黒い光沢を放つ大きな角を二本生やし、その角は側頭部を横切り額の前まで伸びている。
目は白目の部分が黒く、中央の色彩は金色で、その真ん中には経てに長い瞳孔と、爬虫類に近い印象を与える。
艶のある黒髪は腰まで届くほど長く伸び、先端に行くほど青く変色していた。
メリティエ・ダモンクレア
魔族・ラミア 女 16歳
月明かりに照らされる半魔半蛇の――つるぺたロリラミアがそこに居た。
そこは妖艶で我が侭ボディな美女になるところじゃないのか!?
いや、でもこれはこれで小悪魔的な妖艶さで良い物があるな……。
てか魔族でラミアなのか、両方言い当てちゃったのね。
「よいしょ」
手の届くところに居るのでまたも脇を両手で掴んで持ち上げると、右足に座らせる。
ただ、フィローラと比べなくて結構重い。
多分蛇の部分が全部筋肉だからだ……。
「おい、ここは驚くところだろ?」
「え、驚いてるけど?」
冷静にツッコミを入れてくるロリラミアのさらさらのロングヘアを撫でながら、極々自然に平然と返しておく。
それなりに驚いてはいるのだが、彼女が純粋に美しいのと、左足に座るフィローラをはじめ興味深々に見ているククとトト以外の全員が開いた口を塞げないくらいに驚いているため、驚くタイミングを逃したのだ。
やる事やったミネルバだけが、部屋の片隅で寝息を立てている。
この状況でよく眠れるな。
「それで、メリティエはなんでまた人族領に?」
「さらりと流すのだな。……自分語りになるが構わないか?」
「良いよ全然」
「うむ……私の生い立ちだが、魔族でも貴族階級であった父と召使いで平民のラミアである母との間に生まれたのだが、それが婿養子である父の正妻にばれ、魔族領を追い出されることになた。出て行く際に父が人族化の魔法を私達に託してくれたのだ」
よくある貴族の火遊びから始まったお家騒動ってやつか。
婿養子なのに浮気なんてしてんなよお義父さん。
おかげさまで娘さんを娶れましたが。
「なるほどね……。そうだ、さっき話した通りですまないけど、一応契約はしてくれる? それと皆、メリティエは今後ラミアの変異体ってことでお願いね」
そう言って奴隷契約のスキルを発動させると、メリンダはあっさりと受けてくれた。
「改めてよろしくね、メリティエ」
「うん」
美しすぎる半蛇幼女の頬にキスをした。
「トシオは本当にこのような姿でも受け入れてくれるのだな」
「まぁ女性的な顔をしていれば大体はいける口だからね。流石にアンデッドは避けたいけど」
すまないが腐乱死体はNGだ。
臭いと衛生面、そして猟奇グロ的な意味で。
「……しかし、鑑定スキルをずっと欺いてたのが三人も居る事実は、俺的にかなりヤバイんだが」
「た、たしかにそうですね。鑑定スキルを欺ける術がこの世に三種類もあるのですから、これでは……」
そこでユニスが言葉を詰まらせる。
そう、これではいつ寝首をかかれてもおかしくない。
そしてこの超スキル的なモノをもった人物がここに3人も集う奇跡は誰の引いたレールなんだか……。
「勇者の厄介なところは戦闘力だけでなく〈鑑定眼〉にもあるそうで、魔族側もずっとそれを研究していたようです……。勇者との混血で時折先祖返りし、一部のスキルが使える者が居るそうなので、そういう者達を使って実験していると聞いたことがあります……」
ダークエルフになっても小声なのは変わらないセシル。
だが全裸だ。
そして、美少女モンケモ娘が全裸で膝の上に乗っている状況に、俺が欲情しない訳が無い(断言)
本日3度目となる夫婦の営みは、これまで以上に心地の良いものだった。
本日二度目のピロートークにて、大きな円形の敷布団の上で胡坐をかき、皆から〝魔族とはどういったものなのか〟を聞かせてもらった。
種族的には魔族とは魔物の様な力を持った恐ろしい種族で、外見は人に酷似しており、青や褐色の肌、頭部には角、背中には蝙蝠の羽、尻には細い尻尾が生え、眼球の白目部分が黒いのが特徴らしい。
まんまオーソドックスな悪魔のような特徴である。
時折魔族領から攻めてくるため戦争に発展することもあるそうだが、ここ20年は大人しくしているようだ。
なので、一般人からすれば「魔族だってー、きゃーこわーい。でも見たこと無いし、身近に居るモンスターの方がよっぽど危険だから自分達には関係無いかなー」という感じだそうだ。
一般人の発言は皆の意見を俺の脳内フィルターを通してのでっち上げだけど。
ちなみにダークエルフみたく魔族領で暮らす種族には、ラミアやミノタウロス、コボルトにスキュラなどが居るそうだ。
モンスター娘の鉄板であるラミアをお迎えする可能性が激減しやがりましたよガッデム!
どこかに居ないかなぁラミアとか魔族。
ミノタウロス女性も実物が見てみたい。
そんな願望はひとまず置いておき、ある事への布石を敷く。
「もし仮に魔族や魔族領の種族と出会う機会があった場合、家に引き込んでも良いかな?」
「奴隷契約でちゃんと縛ってくれるなら構いませんよ? ですが、魔族領の他種族は奴隷としてならこの国に滞在することも可能ですが、魔族は法律でその一切の存在を認められてませんので注意してくださいね?」
魔族に関しては残念だが、他の種族は『危険かもとは感じるが、別に嫌悪の対象では無い』と言うことか。
「みんなもその点は大丈夫?」
妻達の顔を見回し、全員からの賛同を得られたのを確認する。
それを俺の左腕に暴力的な質量を押し付けるながら聞いているセシルが、冷や汗を流して黙り込んでいるので、早速奴隷契約を飛ばす。
驚きながらこちらに注視する彼女に頷くと、しばらくしてメッセージポップが現れた。
《新たな使役奴隷を手に入れました》
彼女がダークエルフであることは、このまま隠していてもボロが出てばれてしまうかもしれない。
そうなってからでは皆からの信頼を失う事態になりかねない。
なので、今この場でばらすことにした。
「実は皆にも知ってもらいたいことがある」
そう言ってセシルの右手に向けて手を差し伸べると、不安と緊張で顔をこわばらせた。
「大丈夫。何があっても守るから」
「っ……はい……」
セシルが一度息をのむも、俺に見せた時以上の覚悟を以て手を預けてくれた。
俺は彼女の手を握り返し、中指にはまる指輪をスっと引き抜く。
途端、銀糸の髪に艶やかな紫の瞳を持つ褐色のエルフへと姿を変える。
変貌を目の当たりしたローザとクク、そしてフィローラが驚きで言葉を失うも、他の皆からの反応はいまいちだった。
「今の話の流れとやり取りでは、さすがに驚けはしませんね」
「そうよね」
ユニスの呆れ笑いにリシアも同意し微笑んだ。
「色が変わっただけだよね?」
「うむ」
トトとメリティエに至っては、〝だからなに?〟と言わんばかりである。
「私は、ここに居てもよいのですか……?」
「トシオ様が迎え入れ、私達も受け入れた。そしてあなた自身がここに居たいと望むのなら、ダメな理由なんて何処にあるの?」
「リシアさん……」
感極まって本日何度目かの涙を流すセシルにリシアが寄り添い、優しい顔で抱きしめる。
ここ最近はずっと一緒に過ごしていたためか、こうしてあっさりと受け入れられた。
よかったねセシル。
しかし、俺達が本当に驚かされるのはここからだった。
「他にも俺達に黙ってて言い出し辛くなってたりする人が居るなら、今の内に打ち明けてくれると嬉しいかな。セシルみたいに実は種族が違うってんでも全然大丈夫だから。俺の女性の趣向はご覧の通りだし、蜘蛛女くらいなら全然いけるよ」
俺の中にある謎の昆虫と蜘蛛は別モノ感を気軽さ気楽さを乗せて言ってみたところ、真っ先に手を挙げたのは、セシルを抱きしめていたリシアだった。
え、リシア?
「実はモーディーン叔父さんの様な顔にもなれます」
と、顔が猫に変形させた。
全身も毛に覆われた完全無欠のケモっ娘に変身して見せたのだ。
髪型がそのままのため、人っぽさのある美猫顔の人間にも見える。
鼻や口周りと、体毛が全身化した以外あまり変わっていないとも言うが、印象の変化は非常に大きい。
「うっわぁなにそれ、めっちゃ綺麗……」
感動しながら顔に触れさせてもらう。
いま普通に骨格ごと変化したけど大丈夫なの?
いやここはファンタジーな世界だ、無粋な詮索はやめておこう。
「幼い頃、母にこの姿にならない方が良いと言われ、それ以来ずっと封じていたため忘れていたのですが、セシルの変貌を見て思い出したのです。あ、ちゃんと元に戻れますので安心してください」
こんなすごいことを忘れるとか、とんだうっかりさんである。
「それにしても、本当に綺麗だなぁ」
「リシアちゃんのその姿を見るのは久しぶりですわ」
幼馴染のローザは目にしたことがあったようだ。
普段はローザのお腹を触っているリシアが、今度は逆にリシアが撫で回されている光景が少し新鮮だ。
「トシオ様が望まれるのでしたら、この姿でお相手することも……」
「是非お願いしたいとだころけど、いつものリシアの顔が見れないのも悩ましい」
恥じらいながらもそう提案してくれるリシアの唇をついばむと、ククやトトの様な柔らかな毛が口元に触れて心地よかった。
そんな感触が急に元の柔らかな唇に戻り、見慣れた美しい猫耳美少女の顔となっていた。
「はい、今日は時間切れです」
悪戯っぽく舌を出すリシアさんさいかわ。
けどまぁ――
「やっぱりリシアはその姿の方が見慣れてて安心するけど、さっきの姿も時々で良いから見せてくれるかな?」
「はい♪」
その笑みがこれまた可愛いので再び唇を重ねる。
……もしかすると、リシアは自分の異形を晒すことで、セシルにダークエルフであることを気にしなくても良いと伝えたかったのかもしれない。
リシアならそれくらいの気遣いはやってのける女性だ、過大評価かもしれないが、きっとそうに違いないと強く思う。
「ありがとね」
「もう、あなたはどうしてそう勘が良いのですか」
最愛の妻の優しさに心からの感謝を贈ると、リシアが照れ隠しに怒った表情を作り、直ぐにすり寄り甘えてくる。
俺にはもったいないくらい良く出来た奥さんである。
「他には打ち明けたい秘密を持ってる人は居ない?」
再度皆を見回し確認すると、今度は癖っ毛の金髪と細長な耳が特徴のメガネ美幼女であるフィローラが、小さく手を上げると同時に彼女から〝ぼふんっ!〟という音と白い煙が溢れた。
すぐ晴れた煙の中からは、金色の毛に覆われたケモっ娘美幼女が姿を現す。
その背中からもっふもふの狐の尻尾が三本揺らいでいた。
フィローラ
獣人 女 15歳
「「「「……………」」」」
「えっえっ!?」
細長の口をしたキツネ顔にずれかけたメガネがこれまた可愛いのだが、唐突過ぎて皆が言葉を失ってしまっている。
「よっこいしょっと」
皆の沈黙に軽いパニックを起こしているフィローラの両脇に手を入れ抱き上げると、胡坐をかいていた左足に乗せて撫で愛でる。
そこそこ大きかった美乳が萎んでしまったが、胸から腹部にかけてトトと同じ複乳になっている。
「この姿も可愛いですね」
「うん可愛い」
「可愛いですわね」
かわいいもの好きなリシアがいち早く立ち直り、一緒になって撫で始めると、ローザもそれに混じる。
猫耳美少女と豊満美少女が、丸いメガネをかけた狐美幼女を愛でる夢の競演。
神さまありがとー、ぼくにケモ嫁をくれて!
リシアにククにトト、ミネルバにユニスにフィローラ。こうしてみると、我が家のケモ率の異常な高さに感動で目から汗が溢れそうだ。
「フィローラちゃんはなんでマルモル族に変身していたの?」
「なぜだかわかりましぇんが、昔から毛むくじゃらの男性が怖くて……。さっきの姿なら人種の方ともお近付きになれるかもと思ったためでふ。獣人であの大きさでは見下されかねませんので、我が家に伝わる変身スキルでマルモルに化けていました!」
ローザに聞かれ、キツネ耳を動かしながら元気よく答えるフィローラ。
トラウマ的な何かと好みの問題かな?
てかスキルって学んで習得できるものなのか。
「でしたら、人やエルフに化ければ良かったのでは?」
「身長までは誤魔化せないので、あはは……」
ユニスのもっともな疑問に、フィローラが頭をかいて苦笑い。
視覚だけでなく骨格や体毛の感触、挙句に俺の鑑定スキルは誤魔化せても、身長はだめなのか。
面白いスキルだな。
「私も良いか?」
俺の前にやって来たのはメリティエだ。
リシアやフィローラの変化を目の当たりにし、何か対抗心めいた物を燃やす和風美幼女。
いいだろう、たとえどんな物が来ようと受け止めてやんよ!
「ドンと来い、魔族でもラミアでも受け入れる覚悟はできている!」
「なぜわかった!?」
普段冷静沈着な彼女にしては、珍しく慌てふためいた。
どうやら言い当ててしまったようだ。
魔族かラミアか、一体どっちだろ?
何故か不満気な顔をしていたが、気を取り直したメリティエが呪文を唱え始めると、足元に出現した魔方陣が小さな身体を下から通り抜け頭上に上がる。
魔方陣の通過箇所から足の代わりに黒く艶かしい蛇の尻尾に変化。
次いで腰から上は濃い青紫の肌をした人の上半身、そして最後に現れた頭部には後頭部から黒い光沢を放つ大きな角を二本生やし、その角は側頭部を横切り額の前まで伸びている。
目は白目の部分が黒く、中央の色彩は金色で、その真ん中には経てに長い瞳孔と、爬虫類に近い印象を与える。
艶のある黒髪は腰まで届くほど長く伸び、先端に行くほど青く変色していた。
メリティエ・ダモンクレア
魔族・ラミア 女 16歳
月明かりに照らされる半魔半蛇の――つるぺたロリラミアがそこに居た。
そこは妖艶で我が侭ボディな美女になるところじゃないのか!?
いや、でもこれはこれで小悪魔的な妖艶さで良い物があるな……。
てか魔族でラミアなのか、両方言い当てちゃったのね。
「よいしょ」
手の届くところに居るのでまたも脇を両手で掴んで持ち上げると、右足に座らせる。
ただ、フィローラと比べなくて結構重い。
多分蛇の部分が全部筋肉だからだ……。
「おい、ここは驚くところだろ?」
「え、驚いてるけど?」
冷静にツッコミを入れてくるロリラミアのさらさらのロングヘアを撫でながら、極々自然に平然と返しておく。
それなりに驚いてはいるのだが、彼女が純粋に美しいのと、左足に座るフィローラをはじめ興味深々に見ているククとトト以外の全員が開いた口を塞げないくらいに驚いているため、驚くタイミングを逃したのだ。
やる事やったミネルバだけが、部屋の片隅で寝息を立てている。
この状況でよく眠れるな。
「それで、メリティエはなんでまた人族領に?」
「さらりと流すのだな。……自分語りになるが構わないか?」
「良いよ全然」
「うむ……私の生い立ちだが、魔族でも貴族階級であった父と召使いで平民のラミアである母との間に生まれたのだが、それが婿養子である父の正妻にばれ、魔族領を追い出されることになた。出て行く際に父が人族化の魔法を私達に託してくれたのだ」
よくある貴族の火遊びから始まったお家騒動ってやつか。
婿養子なのに浮気なんてしてんなよお義父さん。
おかげさまで娘さんを娶れましたが。
「なるほどね……。そうだ、さっき話した通りですまないけど、一応契約はしてくれる? それと皆、メリティエは今後ラミアの変異体ってことでお願いね」
そう言って奴隷契約のスキルを発動させると、メリンダはあっさりと受けてくれた。
「改めてよろしくね、メリティエ」
「うん」
美しすぎる半蛇幼女の頬にキスをした。
「トシオは本当にこのような姿でも受け入れてくれるのだな」
「まぁ女性的な顔をしていれば大体はいける口だからね。流石にアンデッドは避けたいけど」
すまないが腐乱死体はNGだ。
臭いと衛生面、そして猟奇グロ的な意味で。
「……しかし、鑑定スキルをずっと欺いてたのが三人も居る事実は、俺的にかなりヤバイんだが」
「た、たしかにそうですね。鑑定スキルを欺ける術がこの世に三種類もあるのですから、これでは……」
そこでユニスが言葉を詰まらせる。
そう、これではいつ寝首をかかれてもおかしくない。
そしてこの超スキル的なモノをもった人物がここに3人も集う奇跡は誰の引いたレールなんだか……。
「勇者の厄介なところは戦闘力だけでなく〈鑑定眼〉にもあるそうで、魔族側もずっとそれを研究していたようです……。勇者との混血で時折先祖返りし、一部のスキルが使える者が居るそうなので、そういう者達を使って実験していると聞いたことがあります……」
ダークエルフになっても小声なのは変わらないセシル。
だが全裸だ。
そして、美少女モンケモ娘が全裸で膝の上に乗っている状況に、俺が欲情しない訳が無い(断言)
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最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
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