四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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69話 押しかけ妻

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 あれから昼食を挟みつつ3つも階層をクリアするも、肝心のモンスターテイムは全て失敗に終わる。
 三十四階層ではカラーコーンに手足を生やしたようなロボット兵が槍を持って突撃して来た。
 三十五階層では巨大なコオロギモドキに衝撃音波を浴びせられた。
 三十六階層では一つ目の木の化け物が鋭利な葉っぱを飛ばしてきた。
 などなど、バラエティーに富んだお出迎えを受ける。
 
 ロボット兵は仲間にならなかったし、虫やおばけ樹木は仲間にしたいとも思わなかったが。
 特に虫は生理的にだめだな……。
 何と言ってもあの光沢のある茶黒色がいただけない。

 その3層だが、入り口からボス部屋までの距離が比較的近い場所にあったため、サクサクと下の階へと降りられた。
 運がいいのか悪いのか、攻略こそ順調だが、テイムと同様レベルもあまり上がっていない。


トシオ
男 人間 24歳
ベースLv81
ファーストジョブ:ウィザードLv24
セカンドジョブ:エンチャンターLv18


 三十六層分クリアしてベースLvがたった9つとは、どう考えても戦闘回数そのものが少なすぎるのが原因だ。

 もしかして、レベルが上がると必要経験値が増えるだけでなく、モンスターから得られる獲得経験値が下がってたりしないよな?

 時々あるRPGのクソ経験値システムを思い出し、少し不安になる。
 ならばもう1階層と行きたいところだが、PTの三分の一以上の戦力が抜けたのだ、無理は禁物であろう。
 それに、これ以上彼女達を連れまわし、何かあってはそれこそ本末転倒だ。
 皆の様子を確認するも、疲労している様子が無いのはご愛敬だが。

「今日はここまでしようか」
「はいトシオ様」

 三十六階層と三十七階層の間の下り通路でワープゲートを開き、皆をゲートへ促した。
 探索してからそれなりの時間は経過しているし、ここらで切り上げるのが良い頃合いだ。
 皆が母屋に行った後、納屋に置き去りにされてあるレスティー達のキャンプ用の布団を袋に詰め、ワープゲートで迷宮の入り口に置いておく。
 迷宮内では必要ないが、迷宮を出た後は必ず必要になる物なだけに、通る時に絶対に気付く場所に置いた。

 風呂場へ向かい、クク達が足を洗っている横で浴槽に水を張りお湯を沸かす。
 太陽の明るさから言っても夕刻にはまだ時間がありそうだ。
 風呂を沸かし終えると、リビングに居るであろう皆を呼びに行く。
 リビングでは装備を外し終えた皆が、お茶を飲んで寛いでいる。
 誰かが氷系魔法を冷房にしたらしく、部屋の中は涼しくて心地よい。

「ただいまローザ」
「お帰りなさいトシオさん」
「みんな、風呂が沸いたから良かったら入ってくれ。リシア、少し良いかな?」
「はい、どうされました?」

 リシアだけを寝室に連れ込むと、後ろ手で扉を閉じるなりすぐに彼女を抱きしめ唇を奪う。

「お疲れ様リシア、いつもありがとね」

 回復職としてPT全体に気を配りながら補助だけでなく攻撃魔法も使うようになり、HP回復頻度こそ低いが彼女の負担が増えてしまったのは事実である。
 毎日でも労って猫可愛がりするくらいで丁度良い程良くやってくれている。
 抱きしめた彼女の頭をひたすら撫でていると、心地が良いのか甘えるように額や顔を俺の頬や胸に擦り付け、次第に体全体を強く押し付けて来た。
 首に回された彼女の腕にも力が篭もる。

「トシオ様こそ、無理はされていませんか?」
「リシアとこうして二人きりになれなかったのがしんどかったかな」

 俺の冗談口調の泣き言に、リシアがクスっと小さく笑う。

「私もです。ここ数日は可愛がって頂けてませんでしたから、寂しかったです……」

 至近からの甘まくとろける声が、耳を通って俺の脳をふやかせる。

「うん、ごめんね。俺も寂しかったよ。リシアの可愛い声はいつ聞いても心地いいね」

 潤んだ瞳で唇を求めてくる彼女に応えながら、愛妻を抱きしめ頭や背中を撫で耳元で愛を囁き愛情を深め合う。

「私も、トシオ様の声を耳にするだけで心が温く満たされます。いつも私を気遣ってくれる優しいあなたが大好きです」

 飛び切りの笑顔を俺だけに向けてくれるリシア。
 世界で一番可愛い俺の奥さんです。

 皆がお風呂に入っているのを良い事に、久々の夫婦の時間を過ごさせてもらった。


 その後の余談としては、俺達の情事を聞きつけたクク達が寝室に雪崩れ込ん出来たため、その全員とも全力でお相手する。
 余談と一言で片付けられないモノとしては、その中にフィローラとセシルとメリティエも混じっていたことだ。
 

 フィローラは金髪癖っ毛に翡翠の瞳をした眼鏡っ娘と、属性てんこ盛りの美幼女。
 胸はそこそこ大きめの美乳だが、体は小学生レベルに小さいので、抱いていて少し怖かった。
 一応は身を重ねはしたものの、彼女の体を気遣い途中で行為を中断する。

「まさかあんなに痛いモノだとは思わなかったでふ」

 ピロートークにはまだまだ早い時間帯だが、全員との行為を終えると、フィローラが初体験の感想をこぼす。
 慎重に丹念に体をほぐしはしたが、ロリエルフの異名を持つマルモル種である彼女はそもそものサイズが違うため、こればかりは致し方ない。
 一応入るし、今後ゆっくりと開発していこう。

 体を開発という表現にはエロさしかないな。

「マルモルはだらしがないな」
「そういうメリティエ殿も痛がっていたようですが?」

 なぜかふんぞり返るメリティエに、ユニスが言ってはいけないツッコミを入れる。

「だが私は最後までしてもらった」

 それでもなお強がるつるぺた和風美幼女可愛い。

 意味不明に勝ち誇るメリティエだが、背こそフィローラより高いものの、その反り返った胸の凹凸はささやかなものだった。

 ウィナー、フィローラ!

 そんな彼女とフィローラは既に成人女性。
 これ以上大きくなることはない。

 色々と。
 
「ドワーフの女性は体が丈夫でしゅから、ちょっとうらやましいでふ……」
「ドワーフ……、そ、そういうことだ」

 フィローラの呟きにメリティエが眉をひそめるも、妙な間を開けてから再びふんぞり返った。

「私も初めてでしたが、その……とても不思議な感じでした……」

 何処か夢心地のセシルは、普段ローブで体型が隠されていたが、スレンダー体型が基本なエルフからは大きく逸脱してムチムチしていてとても魅力的な体付きをしている。

 金髪美女が大きなオパーイを揺らしながら喘ぐ姿は、もう只のエロい物体でしかない。
 いやまぁエロいことしてるんだからそりゃそうだわな。

「痛くはなかった?」
「…………」

 こちらの問いにセシルが真っ赤にした顔を布で隠すと、無言でこくりと頷いた。
 布から出ている長くとがった耳も紅潮しているのが良くわかる。
 そのセシルの右の薬指には、流行りものなのか見覚えのある指輪がはまっていた。

 俺の周りには可愛い生物であふれているな。

 だからこそ、疑問に思わない訳がない。
 なぜ彼女達の様な美しい女性が、態々俺なんかのハーレムに入るのか、と。

「三人は今日から俺の妻として迎える訳だけど、それで良かったの?」

 こちらの問いにまずはフィローラが口を開いた。

「実は以前から大家族に憧れがありまして、リシアさんがトシオさんなら私でも家族に迎えてくれると仰ってくださったので、思い切って部屋に入っちゃいました!」

 元気よく答えてくれているが、なんとも思い切り良すぎる話だ。
 
 てかいつの間にそんな相談してたんだよ。

「けど、大家族に憧れえているってだけなら、別に俺じゃなくてもいいのでは?」
「そんなことないでふよ。湖での時からずっとトシオさんの事が男性として意識してました。それに、大家族ならどこでも良いという訳ではなくてでしゅね、リシアさんをはじめとして、家族皆さんを大事にしてくれる方なのが見ていてわかりましゅし、そういう男性なら安心かなって。なので、この状況は私にとっても願ったり叶ったりといいましゅか……あはは……」

 フィローラが照れ笑いを浮かべる。
 途中どこかで聞いたことのあるセリフだなぁとユニスに目を向けると、こちらと目の合った人馬の娘も苦笑いを浮かべていた。

 フィローラの事はわかったので、次にメリティエに問うてみる。

「メリティエは?」
「私も湖のあの戦いから気になっていた。というより、あの時あの場所で、あの化け物と対峙できなかった自分が悔しかった」

 虚空を睨みつけ、苦いものを噛み潰したような顔で悔しがるメリティエ。

「けど、トシオと居ればまたあんな強そうなヤツと戦えるんじゃないかと思った」

 清楚で美しい顔に浮かぶ苦々しい想いが、獰猛なモノへと変貌する。

「それに、あの時のトシオはかっこ良かった……」

 上目遣いで目を合わせると、小声でそう言いぷいっと横を向いてしまった。
 一応好意は持ってくれていたようで安心する。
 
 ワニ相手に頑張ってよかった。

 最後にセシルに問う。

「セシルはなんで俺なの?」

 彼女ほどの美女だ、俺以外にも声をかけてくる者は他にも多く居たと思うのだが。
 なので素直に俺を選んだ理由を聞いてみたかった。


「それは……、小さい頃から周りに〝性格が暗い〟〝行動が遅い〟〝何を考えているのか分からない〟と蔑まれて……。ですが、あなたはこんな私を見捨てずに見守ってくれて……。気付いたらあなたの事が気になって……、目で追うようになっていて……、いつの間にか好きになってしまって……」

 辛い想いを押し出すように、うつむいたセシルがポツポツと理由を述べる。 
 
「身体も、その、普通のエルフよりも胸やお尻が大きくて……。ローザさん程の女性を愛しているトシオさんなら、私のことも受け入れてくれるのではないかと……」

 ローザと同じく、彼女もまた自身の身体にコンプレックスがあったため、分厚いローブを常に着ていた訳だ。

 まぁローザと比べたら、大抵の女性は痩せて見えちゃうからね。

「それに、変な人達に追われていたところも助けて頂きました……」
「ん、助けた? 俺が、セシルを?」

 そんなことあったっけ?

「はい……。その時はひどく混乱し、貴方を置いて逃げてしまって……」
「……あー、あの時か」

 ザアラッドさんと知り合うきっかけになった、白昼の人攫ひとさらい事件を思い出す。

 確かにあの時の女は厚手のローブ姿で、金髪バインバインのムッチリさんだったわ。

 普段のセシルと謎の女の体のラインが、俺の脳内で重なり完全に一致する。
 けどその時の状況とザアラッドさんの印象の方が強すぎて、助けた本人の事なんて記憶の片隅に追いやられていた。

「あの時はごめんなさい、どんな罰でも受けますから、私を捨てないで……!」

 少女の様に泣き、鼻をすすりながら必死の懇願をする彼女の頭を力強く抱き寄せる。

「君ももう俺の家族なんだから、捨てたりなんかしないよ。大丈夫だから泣かなくていいよ」
「怒らない、のですか……?」
「ん~、状況が状況なだけに、あれはもうしょうがないからなぁ。まぁ悪いと思っているなら、その分愛情で返してくれると嬉しいな」
「うん、好き、好き……。ずっとそばに居てほしいの……!」

 幼児退行したかのように泣きじゃくるセシルが落ち着くまで、俺は赤子をあやす様に抱きしめた。

 こうして新たな妻をお迎えした訳だが、ローザを受け入れたあの日から、腹はすでに括っていた。
 クク達が居る状態で、今更家族が3人増えたくらい何だと言うのだ。
 セシルは何か他にもトラウマを抱えていそうだが、それもまとめて受け入れよう。
 ここには俺だけじゃなく、リシアや他の家族が居るのだ。
 皆となら乗り越えていけるはず。
 最後は彼女達全員を幸せにする――いや、全員と幸せになれば良いんだ。
 
 夕食時までの穏やかな時間を、妻達のかしましい会話を聞きながらゆっくりと過ごした。
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