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55話 ワープゲート
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朝、本日もリシアとローザの動きに目を覚ますと、おはようとくちづけで挨拶を交わして身支度を整える。
二人よりも先に部屋を出て廊下を進み、角を右に曲がってすぐ玄関だってところで、玄関とは反対側にある階段から降りて来たモリーさんと顔を会わす。
そして互いに固まった。
着ている物は俺が昨日モティナに渡した透け透けのネグリジェだったのだ。
浅黒く健康的な肌に女性にしては少し筋肉質。だが、リシア達にはない成熟した大人の体が、薄い下着に包まれていた。
互いに沈黙し固まるも、俺の視線はモリーさんの全身をしっかりと焼き付けた。
大きく熟した果実は俺の目測よりも大きかった。
「……あ、おはようございまーす」
何事もなく玄関へ逃げようとしたモリーさんに背を向けた瞬間、後ろから頭部を鷲掴みにされ、側頭部にものすごい指圧が加わる。
「おい」
「……あ、はい?」
振り返る事すら許されない俺を、モリーさんが掴んだ頭部を片手持ち上げる。側頭部がメキメキと音を立て、俺の足が床から離れた。
「に”ゃ”あ”あ”あ”あ”!? 痛い痛い痛い痛い!」
「今見たことは忘れるんだよ、いいね?」
「忘れます、忘れましたからー!?」
数秒空中をじたばたしていると、いきなり手を放され床に尻もちを搗く。
天国から地獄とはこのことだ。
でも律儀にも着てくれたんだ、今度はもっとエロい下着を贈ってみようかな……。
そして目撃したら殺される。
なぞのデスゲームがループに自ら飛び込むスタイル。
命がいくつあっても足りやしない。
「そうだモリーさん」
「……なんだい?」
モリーさんが脱衣所の向かいにあるトイレに入ろうと、ドアノブに手をかけたところを呼び止める。
ネグリジェ姿モリーさんが、険阻な視線だけをこちらに向けた。
視線だけで人を殺しそうな鋭さだ。
だがここで言わなきゃ何のためにエッロエロな下着を贈ったのかわかりゃしない!
「それ、すごく似合ってますよ」
笑顔とともに自然体でそう告げ玄関を出る。
後方から言葉になっていない絶叫が聞こえた気がしたが、言葉に出来ないということは無いのと同じだろう。
リシア達のネグリジェ姿も良かったが、モリーさんみたいな大人の女性が着ると抜群に似合うな。
煩悩に塗れながらも適当に槍を振り回して身体をほぐし、思考を切り替えてマジックキャスターのアロー系に意識を向ける。
ズワローグ戦でやったこととは、結局のところ〈魔法を出す〉〈敵を撃つ〉の二つだけ。
周囲に展開して時間差でぶつけるのは、オールレンジ攻撃と言えばオールレンジ攻撃なのだが、どうも使っていてぎこちない。
てか展開してから射出が自由に出来るのなら、もっと色々なことが出来るのではないのだろうか?
例えばこんな風に。
ファイヤーアローを一本生み出し、まるでたんぽぽの綿毛でも飛ばすように上空に放つと、ドローンでは不可能な急発進急停止に直角の横移動や円運動を加えたりと思いのままに念じて操作してみた。
出来たらいいな程度でやってみたが、まさか本当にできるとは……。
更に自分の周囲に追加で10本の火矢を展開して高速回転。
更に更にと31本目を展開してドーム状に自分を覆いながら鰯の群れの様に回転させる。
「……暑いわ!」
炎で大気が熱せられたせいで周囲の温度が上がってしまったのだ。
あまりの暑さに矢を真上に円運動を加えながら解き放つ。
ファイヤーストームの中に入った時も大概だったが、あれはまだフィローラの空気作成魔法があったから助かったが、それが無いと完全に自爆技だ。
しかし、これが出来るなら正面から飛ばしても相手の背面に回りこませてぶつけることも可能だ。
避けられても避けた瞬間に反転してぶつけるなんて使い方もできる。
ズワローグの様なデカブツ相手なら、ピンポイントで弱点に集中砲火を浴びせられる事を考えると、かなりえぐいのではないだろうか。
今度はアイスアローを自身の周囲に展開すると、回転させながら庭を歩く。
歩きながら周囲を回るアイスアローを上空に打ち出した。
弾けろ。
天に昇っていた氷矢が空で爆ぜ、きらきらと氷の粒子が降るもすぐに消えてしまい。
だが降りて来た冷気が空気を冷やし、涼しさが周囲に満ちる。
移動しながらも距離を保って追従して、命じたら弾けるのか。
うん、利便性が一気に広がった気がする。
今更だが、この朝の運動と称する魔法修練が無ければ、ドラゴンフライの群れやズワローグには勝てなかった。
魔法による攻防一体の戦術。
これが俺の今後を左右する事になりそうだ。
俺はもう一度ジョブを確認すると、単体魔法型の魔法攻撃職であるウィザードに着目した。
属性系統に土属性の〈アース〉が追加されている。
攻撃系統に単体攻撃の〈ランス〉、範囲魔法の〈ブラスト〉が追加されている。
そこでまたもズワローグ戦を思い出す。
俺が奴の背の枝で作られた通路から脱出できたとき、ワニの背に突き刺さっていた大きな雷の槍だ。
アレがランス系じゃないのか?
一点突破の大ダメージ魔法。
ズワローグ以上の敵が出てきた場合、必要になるかもしれない。
シーフの敏捷も捨てがたいが、まずはそれなりの魔法を揃えておいたほうが良い。
俺はジョブをウィザードとエンチャンターに設定しなおす。
《〈魔道士〉の称号を獲得しました》
おお、なんか新しい称号が解放された!?
そう言えば冒険者ギルドで称号を外したままだったなぁ。
確認しておこう。
芝の上に寝転びステータスウィンドウをオープン。
称号を確認っと。
〈小英雄〉〈魔法戦士〉〈神官戦士〉〈魔道士〉〈奴隷使い〉〈魔物使い〉〈強襲者〉〈炎禍〉〈ゴブリンスレイヤー〉〈インセクトスレイヤー〉〈ビーストスレイヤー〉
なんかいっぱい増えてるなぁ。
〈小英雄〉
HP+500 MP+200
ATK+30 MATK+30
DF+30 MDF+30
パッシブスキル〈英雄(小)〉
〈英雄(小)〉のステータス効果をPT全員に付与。
〈魔道士〉
設定条件:ウィザード系とエンチャンター系のジョブを同時に設定。
HP+200 MP+500
MATK+50
MDF+50
パッシブスキル〈魔道の真髄〉
〈魔道の真髄〉魔法ダメージ+20% MP消費軽減(小)
〈強襲者〉
ATK+70
パッシブスキル〈強襲〉
〈強襲〉不意打ち時のダメージ+50%
〈炎禍〉
HP+100 MP+200
ATK+20 METK+20
パッシブスキル〈業火〉
アクティブスキル〈火属性付与〉
〈業火〉火属性ダメージ+100%
〈火属性付与〉武器に付与すると火属性攻撃。防具に付与すると火属性化。
〈小英雄〉便利だなぁ。ズワローグ戦前には無かったので、習得はズワローグを倒したのが原因か。
〈魔道士〉は俺にしか効果が無いからいまいち付け辛いかも。
〈炎禍〉はここぞという時に刺さるかも。その状況になった時におぼえてたらの話しだけど!
ひとまず〈小英雄〉をセットしておく。
スレイヤー系は特定種族にダメージ追加のパッシブスキルが汎用性に乏しく使い勝手が悪いので放置安定。
スレイヤー系やジョブ設定時の習得称号はわかり易いんだけどいつの間にか取ってるのとかは習得条件が全くわからないんだよなぁ。
ついでだしボーナススキルも見直すか。
現在のベースLvは72。
おデブなワニから得た経験値で一気にLv20以上もUPした。
72ポイントもあれば好き放題だ。
〈人語共用語Lv2〉
〈鑑定Lv3〉
〈アイテム収納空間Lv2〉
〈ジョブ追加Lv2〉
〈詠唱短縮Lv2〉
〈クールタイム減少Lv2〉
〈ブレイブハートLv3〉
この16ポイントは固定……アイテム収納空間はズワローグの金棒をモリーさんに渡せば下げられるか?
それから俺の生命線とも言える〈魔力ボーナス追加Lv10〉も外せないから今後は固定でいいかな。
残り46
レベルが上がれば上がるほど俺達の生存能力も上がっているので、〈獲得経験値増加Lv10〉を取っておこう。
残り36。
手数を確保したい為〈MP消費軽減Lv10〉〈MP自動回復量増加Lv10〉を習得。
残り16。
もう16しかない……
この手のポイント割り振りではあるあるか。
でもどうしよう、アイテムドロップ系とかも取っておきたいところだが……。
〈アイテムドロップ率UP〉〈カードドロップ率UP〉〈レアドロップ率UP〉を習得。
残り13。
あとは何を取ろうかな~とスキルを順に見ていると、今まで無かったスキルを発見する。
〈マジックコート〉MPを使い防御力を高める。
〈アナライズ〉物の構造を把握できる
〈サーチマジック〉魔法を探知する
〈サーチエネミー〉範囲内に居る敵の存在を探知する。
〈ロック〉魔法で鍵をかける。
〈アンロック〉魔法で鍵を開ける。
〈マルチプルキャスト〉スキルの同時発動が可能。
〈ワープゲート〉使用者が一度訪れた事のある場所へと繋がる門を開く。
来た、ワープ来た!
これで勝つる!
習得して元の世界への〈門〉とやらを開けば、皆と合流はできるかもしれない!
いくぜ、〈ワープゲート〉!
元の世界の自宅にゲート場所を設定したのだが、門は現れなかった。
はい知ってた。どうせ距離が遠すぎるとかなんとかなんでしょ?
トシオ知ってたよ?
……くそっくそっ。
やはりと言うかなんというか、ステータスボーナス以外は基本的には〝便利〟の域を出ない。
この世界はワープが一般的でないので、皆との合流に直結するという物でもないし……。
迷宮では疲れたりアイテムや食料が消耗したりしても、直ぐに街に戻って休憩や補充が出来るため、攻略の難易度がかなり下がったことは確である。
他にも旅をするにも便利だ。
ちょっと隣の大陸まで行って来るとかほざいて日が暮れたら帰ってくるを繰り返すのか。
情緒もクソも無いな。
結局皆と合流するまでの距離を、自分達の足で稼がなければならないのは変わらない。
竜車などの乗り物の確保も視野に入れる。
あと、スキルの解放条件はベースLv50と見て良いのかな?
この情報を皆に伝えるべく直ぐにチャットルームに戻ると久しぶりに全員が揃ったのだが、ワープゲートの情報は一足早く既にLv50に到達していたレンさんが皆に伝えていた。
『やはり自分の家とかには帰れませんね。仮に戻れたとしても帰る気なんて在りませんけど』
もう試したと言わんばかりのシンくんの口調。
ってシンくんももうLv50超えてるのか、はやいなぁ。
その後はみんなの近況や情報交換を行う。
大福さんは大きな街で家を借り、そこを拠点に冒険者家業を開始した。
今は簡単なモンスター退治でボチボチやっているようだ。
レンさんは既に新進気鋭の若手冒険者として名が通ってきたとのこと。
あと新しい奥さんを迎えたそうだが、これがとんだ箱入り娘だったらしく、オーガ嫁と一緒に一から鍛え直すのが目標らしい。
その鍛えるって精神面の事を言っているのか、筋肉の事を言ってるのか、判断がつかないのが怖い。
シンくんはどこかの国の伯爵夫人の元でお世話になっているそうだ。
シンくんも恋人が出来たようで、お相手はその伯爵夫人。
伯爵夫人って確か伯爵の奥さんって意味の他に、伯爵家の女当主って意味もあったかな?
その伯爵夫人も年齢はまだ20台前半だそうだが、シンくんのストライクゾーンと微妙に違うなぁと思っていると『年上も良いですよね』と照れくさそうに言っていた。
わかる(わかる)
最後に俺が近況報告をすると、何故か皆絶句する。
『ねこさんおかしい……』
『なにをどうすればそんなバラエティ豊かな女関係になるのだ!?』
『体が鳥ってもうそれ鳥そのものじゃないですか……!?』
『でも顔はすごい美形なんよ? オパーイの形も綺麗だし、身体にはもこもこの羽毛が生えてるから天使の抱き心地だYO!』
『そういう問題なんか……?』
ミネルバの良さをアピールしたが、反応はいまいちだ。
『以前からモン娘ケモナー宣言してたのは知っていたが、まさかそこまでの領域に達してたとは……』
『でも顔が鳥で首から下が人間の女性なのと比べたら、断然ハーピーの方が良いですやん?』
『いやいやいや、その二つが選択肢に上がるのがそもそもおかしいんやて……』
『ねこさんの性癖をなめていた……』
『どっちにしても全く理解できません……』
理解なんぞ、されようがされまいが、自分さえ分かっていればそれでいい。
それが性癖というものだよ。
『だが人馬モドキか……ケンタウロスを街中で見たが、あの引き締まった腰から脚にかけてのラインの美しさは是非触れてみたいものだ』
『アニキ、そっちに行っちゃだめだよ!?』
『あー、そういえばケンタウロス女性と知り合いになったし、今度頼んで触らせてもらおっかな』
『なに、スマンがその時は感想を聞かせてもらえるか?』
『OKOK、触れたらね』
『アニキィィィィ!!!!』
シンくんの悲痛な叫びを無視し、ケンタウロス談義で無駄に盛り上がる俺とレンさん。
流石のレンさんも馬の筋肉の部位名までは把握しておらず、『あそこの筋肉が~』みたいな言い方だったため、俺もギリギリ付いてこれたのが盛り上がった要因である。
そんな俺達二人を〝これは触れてはいけないものだ〟と判断した大福さんは奥さんの相手をするからと抜け、そこでチャットはお開きとなった。
ケンタウロスに関してならレンさんとは良い酒が飲めそうである。
二人よりも先に部屋を出て廊下を進み、角を右に曲がってすぐ玄関だってところで、玄関とは反対側にある階段から降りて来たモリーさんと顔を会わす。
そして互いに固まった。
着ている物は俺が昨日モティナに渡した透け透けのネグリジェだったのだ。
浅黒く健康的な肌に女性にしては少し筋肉質。だが、リシア達にはない成熟した大人の体が、薄い下着に包まれていた。
互いに沈黙し固まるも、俺の視線はモリーさんの全身をしっかりと焼き付けた。
大きく熟した果実は俺の目測よりも大きかった。
「……あ、おはようございまーす」
何事もなく玄関へ逃げようとしたモリーさんに背を向けた瞬間、後ろから頭部を鷲掴みにされ、側頭部にものすごい指圧が加わる。
「おい」
「……あ、はい?」
振り返る事すら許されない俺を、モリーさんが掴んだ頭部を片手持ち上げる。側頭部がメキメキと音を立て、俺の足が床から離れた。
「に”ゃ”あ”あ”あ”あ”!? 痛い痛い痛い痛い!」
「今見たことは忘れるんだよ、いいね?」
「忘れます、忘れましたからー!?」
数秒空中をじたばたしていると、いきなり手を放され床に尻もちを搗く。
天国から地獄とはこのことだ。
でも律儀にも着てくれたんだ、今度はもっとエロい下着を贈ってみようかな……。
そして目撃したら殺される。
なぞのデスゲームがループに自ら飛び込むスタイル。
命がいくつあっても足りやしない。
「そうだモリーさん」
「……なんだい?」
モリーさんが脱衣所の向かいにあるトイレに入ろうと、ドアノブに手をかけたところを呼び止める。
ネグリジェ姿モリーさんが、険阻な視線だけをこちらに向けた。
視線だけで人を殺しそうな鋭さだ。
だがここで言わなきゃ何のためにエッロエロな下着を贈ったのかわかりゃしない!
「それ、すごく似合ってますよ」
笑顔とともに自然体でそう告げ玄関を出る。
後方から言葉になっていない絶叫が聞こえた気がしたが、言葉に出来ないということは無いのと同じだろう。
リシア達のネグリジェ姿も良かったが、モリーさんみたいな大人の女性が着ると抜群に似合うな。
煩悩に塗れながらも適当に槍を振り回して身体をほぐし、思考を切り替えてマジックキャスターのアロー系に意識を向ける。
ズワローグ戦でやったこととは、結局のところ〈魔法を出す〉〈敵を撃つ〉の二つだけ。
周囲に展開して時間差でぶつけるのは、オールレンジ攻撃と言えばオールレンジ攻撃なのだが、どうも使っていてぎこちない。
てか展開してから射出が自由に出来るのなら、もっと色々なことが出来るのではないのだろうか?
例えばこんな風に。
ファイヤーアローを一本生み出し、まるでたんぽぽの綿毛でも飛ばすように上空に放つと、ドローンでは不可能な急発進急停止に直角の横移動や円運動を加えたりと思いのままに念じて操作してみた。
出来たらいいな程度でやってみたが、まさか本当にできるとは……。
更に自分の周囲に追加で10本の火矢を展開して高速回転。
更に更にと31本目を展開してドーム状に自分を覆いながら鰯の群れの様に回転させる。
「……暑いわ!」
炎で大気が熱せられたせいで周囲の温度が上がってしまったのだ。
あまりの暑さに矢を真上に円運動を加えながら解き放つ。
ファイヤーストームの中に入った時も大概だったが、あれはまだフィローラの空気作成魔法があったから助かったが、それが無いと完全に自爆技だ。
しかし、これが出来るなら正面から飛ばしても相手の背面に回りこませてぶつけることも可能だ。
避けられても避けた瞬間に反転してぶつけるなんて使い方もできる。
ズワローグの様なデカブツ相手なら、ピンポイントで弱点に集中砲火を浴びせられる事を考えると、かなりえぐいのではないだろうか。
今度はアイスアローを自身の周囲に展開すると、回転させながら庭を歩く。
歩きながら周囲を回るアイスアローを上空に打ち出した。
弾けろ。
天に昇っていた氷矢が空で爆ぜ、きらきらと氷の粒子が降るもすぐに消えてしまい。
だが降りて来た冷気が空気を冷やし、涼しさが周囲に満ちる。
移動しながらも距離を保って追従して、命じたら弾けるのか。
うん、利便性が一気に広がった気がする。
今更だが、この朝の運動と称する魔法修練が無ければ、ドラゴンフライの群れやズワローグには勝てなかった。
魔法による攻防一体の戦術。
これが俺の今後を左右する事になりそうだ。
俺はもう一度ジョブを確認すると、単体魔法型の魔法攻撃職であるウィザードに着目した。
属性系統に土属性の〈アース〉が追加されている。
攻撃系統に単体攻撃の〈ランス〉、範囲魔法の〈ブラスト〉が追加されている。
そこでまたもズワローグ戦を思い出す。
俺が奴の背の枝で作られた通路から脱出できたとき、ワニの背に突き刺さっていた大きな雷の槍だ。
アレがランス系じゃないのか?
一点突破の大ダメージ魔法。
ズワローグ以上の敵が出てきた場合、必要になるかもしれない。
シーフの敏捷も捨てがたいが、まずはそれなりの魔法を揃えておいたほうが良い。
俺はジョブをウィザードとエンチャンターに設定しなおす。
《〈魔道士〉の称号を獲得しました》
おお、なんか新しい称号が解放された!?
そう言えば冒険者ギルドで称号を外したままだったなぁ。
確認しておこう。
芝の上に寝転びステータスウィンドウをオープン。
称号を確認っと。
〈小英雄〉〈魔法戦士〉〈神官戦士〉〈魔道士〉〈奴隷使い〉〈魔物使い〉〈強襲者〉〈炎禍〉〈ゴブリンスレイヤー〉〈インセクトスレイヤー〉〈ビーストスレイヤー〉
なんかいっぱい増えてるなぁ。
〈小英雄〉
HP+500 MP+200
ATK+30 MATK+30
DF+30 MDF+30
パッシブスキル〈英雄(小)〉
〈英雄(小)〉のステータス効果をPT全員に付与。
〈魔道士〉
設定条件:ウィザード系とエンチャンター系のジョブを同時に設定。
HP+200 MP+500
MATK+50
MDF+50
パッシブスキル〈魔道の真髄〉
〈魔道の真髄〉魔法ダメージ+20% MP消費軽減(小)
〈強襲者〉
ATK+70
パッシブスキル〈強襲〉
〈強襲〉不意打ち時のダメージ+50%
〈炎禍〉
HP+100 MP+200
ATK+20 METK+20
パッシブスキル〈業火〉
アクティブスキル〈火属性付与〉
〈業火〉火属性ダメージ+100%
〈火属性付与〉武器に付与すると火属性攻撃。防具に付与すると火属性化。
〈小英雄〉便利だなぁ。ズワローグ戦前には無かったので、習得はズワローグを倒したのが原因か。
〈魔道士〉は俺にしか効果が無いからいまいち付け辛いかも。
〈炎禍〉はここぞという時に刺さるかも。その状況になった時におぼえてたらの話しだけど!
ひとまず〈小英雄〉をセットしておく。
スレイヤー系は特定種族にダメージ追加のパッシブスキルが汎用性に乏しく使い勝手が悪いので放置安定。
スレイヤー系やジョブ設定時の習得称号はわかり易いんだけどいつの間にか取ってるのとかは習得条件が全くわからないんだよなぁ。
ついでだしボーナススキルも見直すか。
現在のベースLvは72。
おデブなワニから得た経験値で一気にLv20以上もUPした。
72ポイントもあれば好き放題だ。
〈人語共用語Lv2〉
〈鑑定Lv3〉
〈アイテム収納空間Lv2〉
〈ジョブ追加Lv2〉
〈詠唱短縮Lv2〉
〈クールタイム減少Lv2〉
〈ブレイブハートLv3〉
この16ポイントは固定……アイテム収納空間はズワローグの金棒をモリーさんに渡せば下げられるか?
それから俺の生命線とも言える〈魔力ボーナス追加Lv10〉も外せないから今後は固定でいいかな。
残り46
レベルが上がれば上がるほど俺達の生存能力も上がっているので、〈獲得経験値増加Lv10〉を取っておこう。
残り36。
手数を確保したい為〈MP消費軽減Lv10〉〈MP自動回復量増加Lv10〉を習得。
残り16。
もう16しかない……
この手のポイント割り振りではあるあるか。
でもどうしよう、アイテムドロップ系とかも取っておきたいところだが……。
〈アイテムドロップ率UP〉〈カードドロップ率UP〉〈レアドロップ率UP〉を習得。
残り13。
あとは何を取ろうかな~とスキルを順に見ていると、今まで無かったスキルを発見する。
〈マジックコート〉MPを使い防御力を高める。
〈アナライズ〉物の構造を把握できる
〈サーチマジック〉魔法を探知する
〈サーチエネミー〉範囲内に居る敵の存在を探知する。
〈ロック〉魔法で鍵をかける。
〈アンロック〉魔法で鍵を開ける。
〈マルチプルキャスト〉スキルの同時発動が可能。
〈ワープゲート〉使用者が一度訪れた事のある場所へと繋がる門を開く。
来た、ワープ来た!
これで勝つる!
習得して元の世界への〈門〉とやらを開けば、皆と合流はできるかもしれない!
いくぜ、〈ワープゲート〉!
元の世界の自宅にゲート場所を設定したのだが、門は現れなかった。
はい知ってた。どうせ距離が遠すぎるとかなんとかなんでしょ?
トシオ知ってたよ?
……くそっくそっ。
やはりと言うかなんというか、ステータスボーナス以外は基本的には〝便利〟の域を出ない。
この世界はワープが一般的でないので、皆との合流に直結するという物でもないし……。
迷宮では疲れたりアイテムや食料が消耗したりしても、直ぐに街に戻って休憩や補充が出来るため、攻略の難易度がかなり下がったことは確である。
他にも旅をするにも便利だ。
ちょっと隣の大陸まで行って来るとかほざいて日が暮れたら帰ってくるを繰り返すのか。
情緒もクソも無いな。
結局皆と合流するまでの距離を、自分達の足で稼がなければならないのは変わらない。
竜車などの乗り物の確保も視野に入れる。
あと、スキルの解放条件はベースLv50と見て良いのかな?
この情報を皆に伝えるべく直ぐにチャットルームに戻ると久しぶりに全員が揃ったのだが、ワープゲートの情報は一足早く既にLv50に到達していたレンさんが皆に伝えていた。
『やはり自分の家とかには帰れませんね。仮に戻れたとしても帰る気なんて在りませんけど』
もう試したと言わんばかりのシンくんの口調。
ってシンくんももうLv50超えてるのか、はやいなぁ。
その後はみんなの近況や情報交換を行う。
大福さんは大きな街で家を借り、そこを拠点に冒険者家業を開始した。
今は簡単なモンスター退治でボチボチやっているようだ。
レンさんは既に新進気鋭の若手冒険者として名が通ってきたとのこと。
あと新しい奥さんを迎えたそうだが、これがとんだ箱入り娘だったらしく、オーガ嫁と一緒に一から鍛え直すのが目標らしい。
その鍛えるって精神面の事を言っているのか、筋肉の事を言ってるのか、判断がつかないのが怖い。
シンくんはどこかの国の伯爵夫人の元でお世話になっているそうだ。
シンくんも恋人が出来たようで、お相手はその伯爵夫人。
伯爵夫人って確か伯爵の奥さんって意味の他に、伯爵家の女当主って意味もあったかな?
その伯爵夫人も年齢はまだ20台前半だそうだが、シンくんのストライクゾーンと微妙に違うなぁと思っていると『年上も良いですよね』と照れくさそうに言っていた。
わかる(わかる)
最後に俺が近況報告をすると、何故か皆絶句する。
『ねこさんおかしい……』
『なにをどうすればそんなバラエティ豊かな女関係になるのだ!?』
『体が鳥ってもうそれ鳥そのものじゃないですか……!?』
『でも顔はすごい美形なんよ? オパーイの形も綺麗だし、身体にはもこもこの羽毛が生えてるから天使の抱き心地だYO!』
『そういう問題なんか……?』
ミネルバの良さをアピールしたが、反応はいまいちだ。
『以前からモン娘ケモナー宣言してたのは知っていたが、まさかそこまでの領域に達してたとは……』
『でも顔が鳥で首から下が人間の女性なのと比べたら、断然ハーピーの方が良いですやん?』
『いやいやいや、その二つが選択肢に上がるのがそもそもおかしいんやて……』
『ねこさんの性癖をなめていた……』
『どっちにしても全く理解できません……』
理解なんぞ、されようがされまいが、自分さえ分かっていればそれでいい。
それが性癖というものだよ。
『だが人馬モドキか……ケンタウロスを街中で見たが、あの引き締まった腰から脚にかけてのラインの美しさは是非触れてみたいものだ』
『アニキ、そっちに行っちゃだめだよ!?』
『あー、そういえばケンタウロス女性と知り合いになったし、今度頼んで触らせてもらおっかな』
『なに、スマンがその時は感想を聞かせてもらえるか?』
『OKOK、触れたらね』
『アニキィィィィ!!!!』
シンくんの悲痛な叫びを無視し、ケンタウロス談義で無駄に盛り上がる俺とレンさん。
流石のレンさんも馬の筋肉の部位名までは把握しておらず、『あそこの筋肉が~』みたいな言い方だったため、俺もギリギリ付いてこれたのが盛り上がった要因である。
そんな俺達二人を〝これは触れてはいけないものだ〟と判断した大福さんは奥さんの相手をするからと抜け、そこでチャットはお開きとなった。
ケンタウロスに関してならレンさんとは良い酒が飲めそうである。
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アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
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