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47話 人頭の猛禽
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「ちーちー」
鳥のさえずりで意識が覚醒しつつあるのだが、ボーナススキルの〈疲労回復Lv10〉を持ってしても気だるさが抜け切れてはおらず、俺は目を閉じたまま思考だけを垂れ流す。
昨日のピロートークの後は、リシア、トト、クク、そしてまたリシアの順に再び愛し合うと、彼女達をそれぞれのベッドに寝かせてから、ボーナススキルの〈精力増強〉を外して俺も眠りについた。
初めて人外の形体をした女性を抱いたが、抱き心地から触感まで、全てが違いすぎて病み付きになりそうだ。
味覚で言えばうどんと寿司とカレーとラーメンとローストチキンくらい違う。
コーラとカフェオレとコーンスープと紅生姜の絞り汁くらい違う。
……どこから出てきたベニショウガノシボリジル?
てか紅生姜の絞り汁レベルのゲテモノってなんだよ。
……エイリアンクイーンとかか?
リザードマンより受け付けないぞ……。
リザードマンと言えばクサンテだ。
彼女は是非うちのPTに欲しい。
あのスパルタ行軍はもう勘弁だが、彼女が前衛に居てくれたら安心して専業魔法使いになれるんだけどなぁ。
魔法使いかぁ。
極大消滅呪文とか出来ないかなぁ。
火魔法と氷魔法を同時に出して……。
魔法を同時発動……。
ダブルキャストとか出来るのか?
無詠唱クールタイムなしのあれは連続や連射であって同時じゃないんだよな。
出来るなら合体魔法とかも試してみたいな。
右手に炎、左手に風で竜巻を……、それファイヤーストームですやん。
どうせならガソリン練成してから風に乗せて火を放ったり……。
ガソリンの練成式とか全くわからんから無理か。
でもクリエイトウォーターがあるなら出来そうな気がしないでもない。
「ちー」
逆に低温系で行くとしたら……。
辺り一帯を吹雪とかで低温にしてからカミナリ撃ったら電気抵抗が減って威力が増すとかなんとかって漫画でみたことあるような……。
コールドストームとサンダーストームでいけるかな?
雷と言えば、純水は絶縁体になるんだっけ?
空気その物が既に絶縁体だってなんかのロボットアニメで言ってた気がする。
ロボットアニメか……。
荷電粒子砲とか魔法で再現できないかなぁ。
雷を魔法で超高速で撃ち出せばいいのかな?
いや、高速と言うか光速で撃ち出さないとだめか?
それとも金属を溶解させ、電力を使い高速で打ち出すのか。
高速……。
質量をともなった残像とか敏捷極にボーナススキルを加えて……残像は兎も角質量はどうすんだよ?
思考が意味不明な方向にぶれてきたので、いい加減起きることにした。
仮に朝には早すぎたとしても、リシアの布団に潜り込んでイチャイチャすればいいだけだ。
てかさっきから顔の前に何か気配じみたものを感じるんだが……。
薄明るい部屋の中でゆっくりと目を開けると、俺の目の前には今までみたこともないような恐ろしいほど美しい幼女、顎に白い髭が生えた幼女の顔がそこにあった。
幼女……ヒゲ……?
「ちー?」
「!?」
目を大きく見開き完全に意識を覚醒させるとその顔から慌てて距離をとる!
え、なに、なんぞ!?
鳥の身体の上に幼女の頭が付いてる物体がそこに居た。
大き目の梨ほどの幼女の頭にはショートソバージュの紅蓮色をした赤い髪。髪の毛と同じ色の長い睫毛の下には切れ長のルビー色をした瞳が眠たげに細められていた。
髭に見えたのは、胸の羽毛に鼻の下まで顔が埋まっていたからだ。
胸元から尾羽の付け根まで美しい橙色に染まり、身体の外側は群青色。
その艶やかな群青の翼で伸びをするように広げられると、再び折りたたみ身体を包んだ。
ハーピーパピー
ハーピーパピー 女 0歳
ベースLv1
メインジョブ:ハーピーLv1
なんでこんなところにハーピーの子供がって居るわ!
そりゃ居るに決まってるわ!
連れ込んだの俺なんだから!
まだテンパッテるのは自覚しているが、とりあえず昨日ハーピーの卵の入った孵化袋を置いた場所に目を向けると、大きな殻らしき形状を残してぺたんこになった袋とその入り口周りに散乱する卵のかけら。
そうか、寝てる間に生まれたのか。
「おはよう」
そう言って手を伸ばし頭を撫でてみると、嬉しそうに撫でられるハーピーの赤ちゃん。
可愛い、超可愛い(語彙力皆無)
そして撫でる俺の手に噛み付き甘噛みし始めた。
……あ、お腹が空いてるのかな?
ベッド近くのフックに掛けてあった背負い袋を掴むと、中の収納袋様に手を突っ込む……。
なんの肉が入ってたっけ?
ステータスウィンドウを開きアイテム欄を確認すると、猪と熊と蛇と蜥蜴と鳥の肉に、ここに来る前に買っておいた魔物の肉があった。
それと鮮度実験中の山羊肉だ。
これ入れて何日目だっけ?
そろそろ一週間くらい経つのか?
経過日時の割りに内容が濃密過ぎ、日時の感覚が完全に狂っている。
起きて、飯食って、会社に行って、帰って来て、ゲームして、飯食って、風呂入って、またゲームして、寝る。
この繰り返しの生活をしていた元の世界と比べると、一日一日の充実感がすごすぎて付いていけてないのかもしれない。
とりあえず鳥の肉を取り出し与えてみると、羽毛に埋まっていた脚を出して押さえつけ、恐ろしい勢いでかぶりつき租借していった。
愛らしい幼女の頭をした鳥が、一心不乱に生肉を貪っている。
「………」
その光景が異様すぎて声が出ない…。
てかなにその爪、完全に猛禽の脚なんですけど!?
これはアレだ、本当に鷹匠の人達が使ってる革の手袋が要るやつや。
ハーピーの卵を手に入れた事をモリーさんに伝えると、これを使えと革の手袋を渡されていたのが役に立ちそうだ
手袋を渡された時は期待を低く見積もって〝ハーピーとか言っても、どうせ人間の身体に手と足だけが鳥のなんちゃってモンスター娘なんだろ?〟と内心侮っていたのだが、まさか想像以上のリアルガチイーグルな身体で生まれてくるとは思わなかった。
いや、顔のサイズからしたらフクロウか?
うん、フクロウとして見たらなんかしっくり来るな。
色が艶やか過ぎるけど。
でも可愛い。
「ちー」
最後の肉片を嚥下し終えると、まだ足りないとばかりに催促している様なので、今度は熊肉を与えてみた。
しかし、一口含んでぺっと吐き出し、脚でベッドの下に蹴り落とした。
あ、熊肉は不味かったのね。
もう一度鳥の肉を取り出すと、再びガツガツと食い散らかしはじめた。
食べ方はすごいけど、最後は残さず綺麗に食べてくれるのはありがたい。
懸念していた熊肉に糞尿を掛けるなんてこともしなかったので本当に良かった…。
「トシオ様、おはようございます」
「おはようリシア」
「生まれたのですね」
起きてきたリシアにハーピーが振り向くと、リシアの顔から満面の煌きが放たれる。
「すごく、可愛いです……!」
リシアが早速ハーピーに近付いて手を伸ばすと、撫でられるのが好きなのか、拒むことなく受け入れる。
そのリシアに近付き朝のくちづけを交わすと、既に目を覚ましていたククに近寄った。
「おはようクク」
「おはようございますご主人様」
純白の体毛に覆われた幻想的な美獣を抱き寄せるキスをすると、唇を放した途端に耳で顔を隠してしまい、尻尾をふりふりしながら恥ずかしがる。
そのあざと可愛い仕草に、妻としてお迎えできてよかった心から思う。
名残惜しいが体を離して次はトトのベッドへと向かう。
昨晩判明したことだが、トトの胸は小さいながらも縦に3つ、二列に並んで合計6つの複乳であった。
大好物です。
「起きろトト、朝だよ」
悪戯したくなる気持ちを抑え、その肩を優しくゆすって起こしにかかる。
「ん…おはよートシオー…じゃなくて、ご主人様……」
「トシオで良いから」
寝ぼけ眼を擦って起き上がると、昨夜の事を思い出したのか、恥じらいながらも呼び名を言い直すトト。
そんな可愛いトトを抱きしめ、唇や額に昨日宣言した通りちゅっちゅちゅっちゅしてやった。
うっとりした顔をしているので満足して頂けたようである。
そんなトトを抱き起こすと、リシアが撫でている幼女頭の猛禽を指差した。
「それでだ二人とも、早速だが君達の妹が新たに追加されました」
そう言うとハーピーがこちらを向いて翼を広げた。
完全に荒ぶるハーピーのポーズだな。
「まぁ可愛い!?」
「生まれたんだー!?」
ハーピーを目にしたククとトトも、リシアと同じく彼女を囲んで撫で始める。
旦那そっちのけでハーピーを愛でる会になっているが、そんなの気にせず俺も彼女達の輪に加わった。
そしてそのたわわなお尻や二つ並ぶもふもふなぷりっケツを愛でる。
輪に入ると言ったな、あれは嘘だ。
「この子の名前はどうされるのですか?」
後ろから見守るふりをしている俺に、リシアが早速難問を提示してきやがりました。
実はネーミングって苦手なんだよなぁ。
どうしようかなぁ……。
ネトゲーとかだと何処からか神話の登場人物や武器の名前を付けたりしてるのだが、幾つか候補はあるもののどういう子が生まれて来るのか分らなかったので決めかねていたのだ。
「ん~、誰か良い名前無い?」
「ご主人様の元で生まれたのですから、ご主人様に名付けて頂いた方がこの子も喜ぶと思います」
「名前は親から子に与える最初のプレゼントとも言いますしね」
ククの言葉にリシアも頷く。
こっちの世界でもそんな言葉あるのね。
しかしどうしたものか……。
ハーピーと言えば俺の神話知識ではアエロー(疾風)オーキュペテー(速く飛ぶ者)ケライノー(黒い雲)がピンポイントで来るのだが、もう少し〝格〟的なものを上げてあげたい。
見た目がフクロウっぽいし、もうあれしかないか。
「この子の名前はミネルヴァにしよう」
「みねるヴぁ?」
「そう。俺の居たところは特殊でね、各地で生まれた物語の中の神様を信仰してるんだ。その物語の一つに知恵や知識を司る女神ミネルヴァと共に描かれる動物にこの子が似てるから、その女神の名前をつけてみた」
「神様の名前をそのまま付けるのは恐れ多くないですか?」
リシアが不安気に尋ねてくる。
実在したかどうか怪しいし大丈夫だとは思うけど……、ここは敬意を払うべきか。
「じゃぁミネルバにしよう」
「なにが変わったのですか?」
「読みは同じだけど最後の一文字が変わった」
「「「?」」」
あぁ、活字ネタみたいに口頭だと全く伝わらない……。
「まぁなんにしろこの子の名前はミネルバ。よろしくね、ミネルバ」
「ちー!」
抱き上げて命名すると、ミネルバは元気な声でキュートに鳴いた。
さて話を少し遡って昨日のことなのだが、村に戻ってからすぐにみんなのレベルがめちゃくちゃ上がっている事が第三班の全員に気付かれた。
そりゃそうだ、始めたばかりのネトゲーで、一度の狩りでレベルがどれだけ上がったかを気にしない奴なんて居る訳がない。
リアル冒険者ならなお更である。
ユーベルトがおもむろに取り出した冒険者カードを確認して発覚したのだが、俺は知らん顔して「すげー、これもクサンテのお陰だな!」とぬけぬけと言ってのけた。
実際は合同PTになってから第三班全員のセカンドジョブも設定してやったので、冒険者カードのLv以上には強くなっている。
ついでにフィローラに期待をして、リシアのセカンドジョブのファイターがLv30を超えたところでエレメンタラーに切り替えてあげた。
そのフィローラにエレメンタラーのことを聞いてみたところ、エレメンタラーに転職するときに冒険者ギルドで精霊と契約しなければならないことがわかった。
「契約ってギルドでしか契約できないの?」
「い、いえ、他のエレメンタラーが手助けすれば問題はありません…」
ならばダメ元でいいからと彼女にお願いして契約させてもらった。
「プリーストのリシアさんが精霊と契約できるなんて…!?」
「まぁリシアには特別な才能があるからできることなんだよ」
「才能ですか…」
俺の適当な誤魔化しにフィローラが信じたかどうかはわからないが、それ以上の追求はしてこなかった。
〝特別な才能〟
便利で都合が良く、そしていい加減な言葉である。
鳥のさえずりで意識が覚醒しつつあるのだが、ボーナススキルの〈疲労回復Lv10〉を持ってしても気だるさが抜け切れてはおらず、俺は目を閉じたまま思考だけを垂れ流す。
昨日のピロートークの後は、リシア、トト、クク、そしてまたリシアの順に再び愛し合うと、彼女達をそれぞれのベッドに寝かせてから、ボーナススキルの〈精力増強〉を外して俺も眠りについた。
初めて人外の形体をした女性を抱いたが、抱き心地から触感まで、全てが違いすぎて病み付きになりそうだ。
味覚で言えばうどんと寿司とカレーとラーメンとローストチキンくらい違う。
コーラとカフェオレとコーンスープと紅生姜の絞り汁くらい違う。
……どこから出てきたベニショウガノシボリジル?
てか紅生姜の絞り汁レベルのゲテモノってなんだよ。
……エイリアンクイーンとかか?
リザードマンより受け付けないぞ……。
リザードマンと言えばクサンテだ。
彼女は是非うちのPTに欲しい。
あのスパルタ行軍はもう勘弁だが、彼女が前衛に居てくれたら安心して専業魔法使いになれるんだけどなぁ。
魔法使いかぁ。
極大消滅呪文とか出来ないかなぁ。
火魔法と氷魔法を同時に出して……。
魔法を同時発動……。
ダブルキャストとか出来るのか?
無詠唱クールタイムなしのあれは連続や連射であって同時じゃないんだよな。
出来るなら合体魔法とかも試してみたいな。
右手に炎、左手に風で竜巻を……、それファイヤーストームですやん。
どうせならガソリン練成してから風に乗せて火を放ったり……。
ガソリンの練成式とか全くわからんから無理か。
でもクリエイトウォーターがあるなら出来そうな気がしないでもない。
「ちー」
逆に低温系で行くとしたら……。
辺り一帯を吹雪とかで低温にしてからカミナリ撃ったら電気抵抗が減って威力が増すとかなんとかって漫画でみたことあるような……。
コールドストームとサンダーストームでいけるかな?
雷と言えば、純水は絶縁体になるんだっけ?
空気その物が既に絶縁体だってなんかのロボットアニメで言ってた気がする。
ロボットアニメか……。
荷電粒子砲とか魔法で再現できないかなぁ。
雷を魔法で超高速で撃ち出せばいいのかな?
いや、高速と言うか光速で撃ち出さないとだめか?
それとも金属を溶解させ、電力を使い高速で打ち出すのか。
高速……。
質量をともなった残像とか敏捷極にボーナススキルを加えて……残像は兎も角質量はどうすんだよ?
思考が意味不明な方向にぶれてきたので、いい加減起きることにした。
仮に朝には早すぎたとしても、リシアの布団に潜り込んでイチャイチャすればいいだけだ。
てかさっきから顔の前に何か気配じみたものを感じるんだが……。
薄明るい部屋の中でゆっくりと目を開けると、俺の目の前には今までみたこともないような恐ろしいほど美しい幼女、顎に白い髭が生えた幼女の顔がそこにあった。
幼女……ヒゲ……?
「ちー?」
「!?」
目を大きく見開き完全に意識を覚醒させるとその顔から慌てて距離をとる!
え、なに、なんぞ!?
鳥の身体の上に幼女の頭が付いてる物体がそこに居た。
大き目の梨ほどの幼女の頭にはショートソバージュの紅蓮色をした赤い髪。髪の毛と同じ色の長い睫毛の下には切れ長のルビー色をした瞳が眠たげに細められていた。
髭に見えたのは、胸の羽毛に鼻の下まで顔が埋まっていたからだ。
胸元から尾羽の付け根まで美しい橙色に染まり、身体の外側は群青色。
その艶やかな群青の翼で伸びをするように広げられると、再び折りたたみ身体を包んだ。
ハーピーパピー
ハーピーパピー 女 0歳
ベースLv1
メインジョブ:ハーピーLv1
なんでこんなところにハーピーの子供がって居るわ!
そりゃ居るに決まってるわ!
連れ込んだの俺なんだから!
まだテンパッテるのは自覚しているが、とりあえず昨日ハーピーの卵の入った孵化袋を置いた場所に目を向けると、大きな殻らしき形状を残してぺたんこになった袋とその入り口周りに散乱する卵のかけら。
そうか、寝てる間に生まれたのか。
「おはよう」
そう言って手を伸ばし頭を撫でてみると、嬉しそうに撫でられるハーピーの赤ちゃん。
可愛い、超可愛い(語彙力皆無)
そして撫でる俺の手に噛み付き甘噛みし始めた。
……あ、お腹が空いてるのかな?
ベッド近くのフックに掛けてあった背負い袋を掴むと、中の収納袋様に手を突っ込む……。
なんの肉が入ってたっけ?
ステータスウィンドウを開きアイテム欄を確認すると、猪と熊と蛇と蜥蜴と鳥の肉に、ここに来る前に買っておいた魔物の肉があった。
それと鮮度実験中の山羊肉だ。
これ入れて何日目だっけ?
そろそろ一週間くらい経つのか?
経過日時の割りに内容が濃密過ぎ、日時の感覚が完全に狂っている。
起きて、飯食って、会社に行って、帰って来て、ゲームして、飯食って、風呂入って、またゲームして、寝る。
この繰り返しの生活をしていた元の世界と比べると、一日一日の充実感がすごすぎて付いていけてないのかもしれない。
とりあえず鳥の肉を取り出し与えてみると、羽毛に埋まっていた脚を出して押さえつけ、恐ろしい勢いでかぶりつき租借していった。
愛らしい幼女の頭をした鳥が、一心不乱に生肉を貪っている。
「………」
その光景が異様すぎて声が出ない…。
てかなにその爪、完全に猛禽の脚なんですけど!?
これはアレだ、本当に鷹匠の人達が使ってる革の手袋が要るやつや。
ハーピーの卵を手に入れた事をモリーさんに伝えると、これを使えと革の手袋を渡されていたのが役に立ちそうだ
手袋を渡された時は期待を低く見積もって〝ハーピーとか言っても、どうせ人間の身体に手と足だけが鳥のなんちゃってモンスター娘なんだろ?〟と内心侮っていたのだが、まさか想像以上のリアルガチイーグルな身体で生まれてくるとは思わなかった。
いや、顔のサイズからしたらフクロウか?
うん、フクロウとして見たらなんかしっくり来るな。
色が艶やか過ぎるけど。
でも可愛い。
「ちー」
最後の肉片を嚥下し終えると、まだ足りないとばかりに催促している様なので、今度は熊肉を与えてみた。
しかし、一口含んでぺっと吐き出し、脚でベッドの下に蹴り落とした。
あ、熊肉は不味かったのね。
もう一度鳥の肉を取り出すと、再びガツガツと食い散らかしはじめた。
食べ方はすごいけど、最後は残さず綺麗に食べてくれるのはありがたい。
懸念していた熊肉に糞尿を掛けるなんてこともしなかったので本当に良かった…。
「トシオ様、おはようございます」
「おはようリシア」
「生まれたのですね」
起きてきたリシアにハーピーが振り向くと、リシアの顔から満面の煌きが放たれる。
「すごく、可愛いです……!」
リシアが早速ハーピーに近付いて手を伸ばすと、撫でられるのが好きなのか、拒むことなく受け入れる。
そのリシアに近付き朝のくちづけを交わすと、既に目を覚ましていたククに近寄った。
「おはようクク」
「おはようございますご主人様」
純白の体毛に覆われた幻想的な美獣を抱き寄せるキスをすると、唇を放した途端に耳で顔を隠してしまい、尻尾をふりふりしながら恥ずかしがる。
そのあざと可愛い仕草に、妻としてお迎えできてよかった心から思う。
名残惜しいが体を離して次はトトのベッドへと向かう。
昨晩判明したことだが、トトの胸は小さいながらも縦に3つ、二列に並んで合計6つの複乳であった。
大好物です。
「起きろトト、朝だよ」
悪戯したくなる気持ちを抑え、その肩を優しくゆすって起こしにかかる。
「ん…おはよートシオー…じゃなくて、ご主人様……」
「トシオで良いから」
寝ぼけ眼を擦って起き上がると、昨夜の事を思い出したのか、恥じらいながらも呼び名を言い直すトト。
そんな可愛いトトを抱きしめ、唇や額に昨日宣言した通りちゅっちゅちゅっちゅしてやった。
うっとりした顔をしているので満足して頂けたようである。
そんなトトを抱き起こすと、リシアが撫でている幼女頭の猛禽を指差した。
「それでだ二人とも、早速だが君達の妹が新たに追加されました」
そう言うとハーピーがこちらを向いて翼を広げた。
完全に荒ぶるハーピーのポーズだな。
「まぁ可愛い!?」
「生まれたんだー!?」
ハーピーを目にしたククとトトも、リシアと同じく彼女を囲んで撫で始める。
旦那そっちのけでハーピーを愛でる会になっているが、そんなの気にせず俺も彼女達の輪に加わった。
そしてそのたわわなお尻や二つ並ぶもふもふなぷりっケツを愛でる。
輪に入ると言ったな、あれは嘘だ。
「この子の名前はどうされるのですか?」
後ろから見守るふりをしている俺に、リシアが早速難問を提示してきやがりました。
実はネーミングって苦手なんだよなぁ。
どうしようかなぁ……。
ネトゲーとかだと何処からか神話の登場人物や武器の名前を付けたりしてるのだが、幾つか候補はあるもののどういう子が生まれて来るのか分らなかったので決めかねていたのだ。
「ん~、誰か良い名前無い?」
「ご主人様の元で生まれたのですから、ご主人様に名付けて頂いた方がこの子も喜ぶと思います」
「名前は親から子に与える最初のプレゼントとも言いますしね」
ククの言葉にリシアも頷く。
こっちの世界でもそんな言葉あるのね。
しかしどうしたものか……。
ハーピーと言えば俺の神話知識ではアエロー(疾風)オーキュペテー(速く飛ぶ者)ケライノー(黒い雲)がピンポイントで来るのだが、もう少し〝格〟的なものを上げてあげたい。
見た目がフクロウっぽいし、もうあれしかないか。
「この子の名前はミネルヴァにしよう」
「みねるヴぁ?」
「そう。俺の居たところは特殊でね、各地で生まれた物語の中の神様を信仰してるんだ。その物語の一つに知恵や知識を司る女神ミネルヴァと共に描かれる動物にこの子が似てるから、その女神の名前をつけてみた」
「神様の名前をそのまま付けるのは恐れ多くないですか?」
リシアが不安気に尋ねてくる。
実在したかどうか怪しいし大丈夫だとは思うけど……、ここは敬意を払うべきか。
「じゃぁミネルバにしよう」
「なにが変わったのですか?」
「読みは同じだけど最後の一文字が変わった」
「「「?」」」
あぁ、活字ネタみたいに口頭だと全く伝わらない……。
「まぁなんにしろこの子の名前はミネルバ。よろしくね、ミネルバ」
「ちー!」
抱き上げて命名すると、ミネルバは元気な声でキュートに鳴いた。
さて話を少し遡って昨日のことなのだが、村に戻ってからすぐにみんなのレベルがめちゃくちゃ上がっている事が第三班の全員に気付かれた。
そりゃそうだ、始めたばかりのネトゲーで、一度の狩りでレベルがどれだけ上がったかを気にしない奴なんて居る訳がない。
リアル冒険者ならなお更である。
ユーベルトがおもむろに取り出した冒険者カードを確認して発覚したのだが、俺は知らん顔して「すげー、これもクサンテのお陰だな!」とぬけぬけと言ってのけた。
実際は合同PTになってから第三班全員のセカンドジョブも設定してやったので、冒険者カードのLv以上には強くなっている。
ついでにフィローラに期待をして、リシアのセカンドジョブのファイターがLv30を超えたところでエレメンタラーに切り替えてあげた。
そのフィローラにエレメンタラーのことを聞いてみたところ、エレメンタラーに転職するときに冒険者ギルドで精霊と契約しなければならないことがわかった。
「契約ってギルドでしか契約できないの?」
「い、いえ、他のエレメンタラーが手助けすれば問題はありません…」
ならばダメ元でいいからと彼女にお願いして契約させてもらった。
「プリーストのリシアさんが精霊と契約できるなんて…!?」
「まぁリシアには特別な才能があるからできることなんだよ」
「才能ですか…」
俺の適当な誤魔化しにフィローラが信じたかどうかはわからないが、それ以上の追求はしてこなかった。
〝特別な才能〟
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