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27話 カード合成
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「ところでモリえもん」
「モリエモン?」
「失礼、噛みまみた」
「………」
こちらの変なテンションを察してか、モリーさんの顔に警戒の色が浮かぶ。
だがそんなのお構いなしです。
「装備にカードの付与ってお願いできますか?」
「あぁ、まぁ出来なくは無いけど、失敗すると装備諸共消えちまうよ?」
「存じております」
「なら手数料100カパー。成功報酬で追加の900カパー。失敗しても恨みっこなしってんなら引き受けてやってもいいわよ」
ほうほう。
「ではこれでお願いします」
店頭に並ぶスロットが2つ付いた鋼鉄製の兜をカウンターに持って行き、先程ギルドで買ったスリープゴートカードを二枚取り出す。
鋼鉄の兜が2千700カパーなので、銀貨37枚取り出しカウンターに置く。
「900は成功報酬だって言ったろ」
「まぁまぁ、とりあえずやってみてください」
アイテムを受け取ったモリーさんが、やれやれといった感じでスキルを発動させた。
「〈融合〉」
スキルが発動するとカードは兜に吸い込まれ、睡眠無効の鋼鉄のヘルムが完成した。
睡眠無効の鋼鉄のヘルム
睡眠無効
スロット【スリープゴート×2】【空き】
「成功しましたね……」
「あぁ……」
驚くリシアと少し安堵顔のモリーさん。
カード2枚系は1スロットで大丈夫のようだ。
さらに1千カパー払ってヘルムに混乱無効を付けてもらい、スロット2つを使い切る。
念のためと再び4千700カパーを支払い、2スロットの鋼鉄のグリーヴにも麻痺無効と毒無効を付与してもらい成功させた。
「さすが美人のお姉さんは違いますね」
「今は怒る気力も起き無いわよ……」
どうやらモリーさんも緊張していたようだ。
そして最後の実験とばかりに、お店にあるスロットの無い革のグローブとゴブリンカードをモリーさんに渡すも、これは失敗したのでグローブ代を含めた150カパーを支払った。
さてと、実験は終了したことだし、本題に行ってみよう。
モリーさんに店の奥にある高性能な鎧を見せてもらい、3スロットを確認すると、俺は本命のカードを取り出す。
「まだやる気かい?」
「えぇ、これが最後です」
そう言って取り出したのは、体力増加効果のあるオークカードを2枚と、物理ダメージ軽減効果のあるゴーレムカード、そして最後に魔法ダメージ軽減効果のあるミスリルゴーレムカードだ。
オークカードは2枚だと効果が増加する。
鎧の代金とカード付与手数料の6万3千カパーと共に、モンスターカードを4枚渡した。
「あんた、本気でこんな高価な装備に3回も合成するってのかい!?」
「大丈夫、美人のお姉さんなら出来ますよ」
笑顔で親指を立て、謎のよいしょ。
仮に失敗しても、先程の耐性付与装備を売れば『高い手数料でした』で済まされる。
「……まぁ良いわ。既に代金は頂いてるんだ、失敗したところで『金銭感覚のイカレたバカが、金をドブに捨てました』ってだけの話しさ」
嘲り交じりでそう吐き捨てる美人女店主。
むっ、そこまで言われたらこちらも何か言い返したくなる。
「じゃぁ失敗したら代金を倍払うので、成功したらモリーさんも何かしてくれますか?」
「はっ、面白い。娘共々アンタの愛人でも二号でもなってやるよ!」
少し挑発して代金をちゃらにしてもらおうと思ったら、えらい言葉が返って来た!?
だがこちらももう後には引けないので、このままやってもらうことにしてやんよ!
「それは楽しみですね、ならやってもらいましょうか」
「はっ、上等じゃないか! 行くよ、〈フュージョン〉!」
オークカードの付与に成功した。
「……」
「……」
「……」
「……っ、だがまだ2回もあるんだ、成功する訳が無い……、フュージョン!」
ゴーレムカードの付与に成功した。
「………」
「………」
「………」
「………」
モリーさんの手が震えているのがはっきりと見て取れる。
恐怖の質がロシアンルーレットと同じ類ではなかろうか。
流石にこれは可哀相だな。
今後の付き合いのためにも、ここは俺が折れるべきだ。
「モリーさん、さっきの話しは無かったことにして良いですから少し休憩しましょ?」
「うるさい! ここまで来て引き下がったら女が廃るってもんだよ! それとも何かい、怖気付いちまったのかい?」
まるで追い込まれたのが俺かのように挑発してくる。
彼女はもっとクールな女性だと思っていたが、今は完全に目がイッてしまっている。
一体何が彼女をそこまで追い立てるのか……。
「水なんて差してる暇があったら、神様にでも祈るんだね! フュージョン!!」
ミスリルゴーレムカードの付与に成功した。
強靭な対物対魔のミルトライトアーマー
打撃軽減(中)
斬撃軽減(中)
刺突軽減(中)
炎軽減(小)
体力増加(大)
物理ダメージ軽減(中)
魔法ダメージ軽減(中)
破壊不可
ライトウェイト付与
スロット【オークカード×2】【ゴーレムカード】【ミスリルゴーレムカード】
ですよねー。
「…………」
「…………」
「なんだかすごい鎧ができちゃいましたねー」
「…………」
店に漂う沈黙を、軽い口調でモティナが引き裂く。
娘さんとは真逆に、完全に固まってしまうモリーさん。
「……さ、さてと、これを冒険者ギルドに委託しに行こうかな~」
「そ、そうですね!」
俺とリシアは、モリーさん親子を残して鎧を持って逃げるように店を出た。
「……成功すると確信はしてたけど、まさかあんな提案をしてくるとは思いませんでしたごめんなさい」
「成功すると分かっていてあのような賭けを持ち出したのですね……」
心苦しさを言葉にすることで軽減しようとした俺に、リシアの冷静なツッコミが突き刺さる。
明々後日にはどの面下げて店に槍を取りに行けば良いのだろうか?
その後、鎧はアイテム委託掲示板から割り出した適正価格よりも少し値下げした280万カパーで、冒険者ギルドに委託する。
手数料で売れたら一割持っていかれるのは実に惜しいが、売れる保証などどこにもない。
どうか鎧が売れますように。
あとモリーさんの記憶から今日のことだけ消え去りますように。
当初の目的の一つであったギルドの依頼を見て回ったが、冷静になればなる程、さっきの出来事が心労となって仕事という気持ちにはなれなかった。
「モリエモン?」
「失礼、噛みまみた」
「………」
こちらの変なテンションを察してか、モリーさんの顔に警戒の色が浮かぶ。
だがそんなのお構いなしです。
「装備にカードの付与ってお願いできますか?」
「あぁ、まぁ出来なくは無いけど、失敗すると装備諸共消えちまうよ?」
「存じております」
「なら手数料100カパー。成功報酬で追加の900カパー。失敗しても恨みっこなしってんなら引き受けてやってもいいわよ」
ほうほう。
「ではこれでお願いします」
店頭に並ぶスロットが2つ付いた鋼鉄製の兜をカウンターに持って行き、先程ギルドで買ったスリープゴートカードを二枚取り出す。
鋼鉄の兜が2千700カパーなので、銀貨37枚取り出しカウンターに置く。
「900は成功報酬だって言ったろ」
「まぁまぁ、とりあえずやってみてください」
アイテムを受け取ったモリーさんが、やれやれといった感じでスキルを発動させた。
「〈融合〉」
スキルが発動するとカードは兜に吸い込まれ、睡眠無効の鋼鉄のヘルムが完成した。
睡眠無効の鋼鉄のヘルム
睡眠無効
スロット【スリープゴート×2】【空き】
「成功しましたね……」
「あぁ……」
驚くリシアと少し安堵顔のモリーさん。
カード2枚系は1スロットで大丈夫のようだ。
さらに1千カパー払ってヘルムに混乱無効を付けてもらい、スロット2つを使い切る。
念のためと再び4千700カパーを支払い、2スロットの鋼鉄のグリーヴにも麻痺無効と毒無効を付与してもらい成功させた。
「さすが美人のお姉さんは違いますね」
「今は怒る気力も起き無いわよ……」
どうやらモリーさんも緊張していたようだ。
そして最後の実験とばかりに、お店にあるスロットの無い革のグローブとゴブリンカードをモリーさんに渡すも、これは失敗したのでグローブ代を含めた150カパーを支払った。
さてと、実験は終了したことだし、本題に行ってみよう。
モリーさんに店の奥にある高性能な鎧を見せてもらい、3スロットを確認すると、俺は本命のカードを取り出す。
「まだやる気かい?」
「えぇ、これが最後です」
そう言って取り出したのは、体力増加効果のあるオークカードを2枚と、物理ダメージ軽減効果のあるゴーレムカード、そして最後に魔法ダメージ軽減効果のあるミスリルゴーレムカードだ。
オークカードは2枚だと効果が増加する。
鎧の代金とカード付与手数料の6万3千カパーと共に、モンスターカードを4枚渡した。
「あんた、本気でこんな高価な装備に3回も合成するってのかい!?」
「大丈夫、美人のお姉さんなら出来ますよ」
笑顔で親指を立て、謎のよいしょ。
仮に失敗しても、先程の耐性付与装備を売れば『高い手数料でした』で済まされる。
「……まぁ良いわ。既に代金は頂いてるんだ、失敗したところで『金銭感覚のイカレたバカが、金をドブに捨てました』ってだけの話しさ」
嘲り交じりでそう吐き捨てる美人女店主。
むっ、そこまで言われたらこちらも何か言い返したくなる。
「じゃぁ失敗したら代金を倍払うので、成功したらモリーさんも何かしてくれますか?」
「はっ、面白い。娘共々アンタの愛人でも二号でもなってやるよ!」
少し挑発して代金をちゃらにしてもらおうと思ったら、えらい言葉が返って来た!?
だがこちらももう後には引けないので、このままやってもらうことにしてやんよ!
「それは楽しみですね、ならやってもらいましょうか」
「はっ、上等じゃないか! 行くよ、〈フュージョン〉!」
オークカードの付与に成功した。
「……」
「……」
「……」
「……っ、だがまだ2回もあるんだ、成功する訳が無い……、フュージョン!」
ゴーレムカードの付与に成功した。
「………」
「………」
「………」
「………」
モリーさんの手が震えているのがはっきりと見て取れる。
恐怖の質がロシアンルーレットと同じ類ではなかろうか。
流石にこれは可哀相だな。
今後の付き合いのためにも、ここは俺が折れるべきだ。
「モリーさん、さっきの話しは無かったことにして良いですから少し休憩しましょ?」
「うるさい! ここまで来て引き下がったら女が廃るってもんだよ! それとも何かい、怖気付いちまったのかい?」
まるで追い込まれたのが俺かのように挑発してくる。
彼女はもっとクールな女性だと思っていたが、今は完全に目がイッてしまっている。
一体何が彼女をそこまで追い立てるのか……。
「水なんて差してる暇があったら、神様にでも祈るんだね! フュージョン!!」
ミスリルゴーレムカードの付与に成功した。
強靭な対物対魔のミルトライトアーマー
打撃軽減(中)
斬撃軽減(中)
刺突軽減(中)
炎軽減(小)
体力増加(大)
物理ダメージ軽減(中)
魔法ダメージ軽減(中)
破壊不可
ライトウェイト付与
スロット【オークカード×2】【ゴーレムカード】【ミスリルゴーレムカード】
ですよねー。
「…………」
「…………」
「なんだかすごい鎧ができちゃいましたねー」
「…………」
店に漂う沈黙を、軽い口調でモティナが引き裂く。
娘さんとは真逆に、完全に固まってしまうモリーさん。
「……さ、さてと、これを冒険者ギルドに委託しに行こうかな~」
「そ、そうですね!」
俺とリシアは、モリーさん親子を残して鎧を持って逃げるように店を出た。
「……成功すると確信はしてたけど、まさかあんな提案をしてくるとは思いませんでしたごめんなさい」
「成功すると分かっていてあのような賭けを持ち出したのですね……」
心苦しさを言葉にすることで軽減しようとした俺に、リシアの冷静なツッコミが突き刺さる。
明々後日にはどの面下げて店に槍を取りに行けば良いのだろうか?
その後、鎧はアイテム委託掲示板から割り出した適正価格よりも少し値下げした280万カパーで、冒険者ギルドに委託する。
手数料で売れたら一割持っていかれるのは実に惜しいが、売れる保証などどこにもない。
どうか鎧が売れますように。
あとモリーさんの記憶から今日のことだけ消え去りますように。
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