四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

文字の大きさ
上 下
24 / 254

18話 猫神様?

しおりを挟む
 食堂に向かおうと扉を開けると、隣のローザの部屋の扉も同時に開いた。
 だがローザが部屋から出てくる様子は無く、代わりに足元から白い何かが現れた。

ルーナルア
ケットシー 女 7歳

「………」

 直立歩行する体長70センチほどのやや頭の大きな白い猫が居た。
 肩には赤いポンチョを羽織っている。
 その猫が一生懸命に扉を閉めると、俺達に気がついて目を細めた。

「夕べはお楽しみでしたにゃ」

 白い猫の言葉でリシアの顔が真っ赤に染まるも、俺の頭には言葉の意味など入ってはこなかった。

 …しゃべった。

「リシア」
「はい」
「猫神様がいらっしゃるのだけど、俺はいつから空想を具現化するスキルを手に入れたんだ?」
「困惑されるのもわかりますが、恐らくそのようなスキルは無いと思われますし、彼女は決してトシオ様の空想でない事だけは確かです……」
「つまり……猫神様は実在していたということか!」
「それも違います」
「違うとな?」
「はい、違います」

 俺のだったらいいなをリシアはあっさりと否定し、きっぱりと再否定。
 だが目の前の二足歩行の猫は、白い体毛に赤いポンチョ、やはりどこからどう見ても俺が思い描いた猫神様である!

「まったく、人は年中盛って困りますにゃ。うるさくて眠れやしにゃい」
「ごめんねルーナ」

 リシアが赤い顔にまま謝った。
 目の前で猫耳の美少女が白い美猫に怒られてるこのシュールで愛おしい光景はいったい何なんだ……。

「ちょっと、そこのオス、さっきからボーっとしてるけど聞いてにゃああっ!?」

 しゃがみこんだ俺は猫神様の背中から腰、尻尾の付け根にかけてを優しく撫でる。

「ちょ、やめにゃさひぃ!」 

 何度も何度も撫で続ける。

「や、そんなに撫でられたら気持ちよすぎてらめにゃぁぁぁ~」

 立っていられなくなり俺の膝にしがみつく猫神様。
 その猫神様を抱きかかえ、顎の下を中指でくすぐった。
 喉をゴロゴロ鳴らしうっとり顔の猫神様。

「リシア……」
「何でしょう?」
「感動で涙出そう……」
「………はぁ」

 俺と猫の満足気な顔に、リシアは深いため息を漏らしながら、俺から猫神様を取り上げ床に開放してしまった。

 おお我が神よ、離れてしまうとは残念無念なり。

「彼女はルーナルア。ローザちゃんと一緒の部屋で暮らしているケットシーで、私達の妹みたいな子です」
「よろしくしてあげてもよくってにゃ」
「是非よろしくしてください」
「ルーナ、トシオ様をたぶらかすような真似は許しません!」
「は、はいにゃ!?」

 ものすごい負のオーラを醸し、ルーナを威圧するリシア。

 リシアってこんな顔もするんだな。

 そしてここで漸くリシアが猫神様像を聞いてなんとも言えない顔をした理由に思い至る。

「トシオ様も、ルーナにデレデレしないでください……」

 今度は一転して悲し気に呟くと、正面から俺の背に腕を回して身を寄せてきた。
 まさかとは思うが、どうやら嫉妬させてしまったようだ。

 猫相手に嫉妬とか、どんだけ愛してくれてるんだよまったく可愛いなぁ。

 安心させるために抱きしめ、先程の様に髪を撫でながら額にキスをしたところで、今度は向かいの部屋の扉が開け放たれる。
 現れたのは、髪がボサボサに乱れたベラーナさんだった。
 固まる俺達を見ても状況が理解できなかったのか、寝ぼけ眼でボーっ見ていただけだったが、次第に目と口が大きな笑みに変化する。

 うわぁ……。

「朝からお楽しみみたいだけど、そういうのは自分達の部屋だけでした方がいいんじゃない?」
「違うのお母さん! これはそんなんじゃないの!」
「あーはいはい、朝から大声出したら他の人に迷惑だからやめなさい。ふふふ、あたしももうすぐおばあちゃんかぁ♪」

 ベラーナさんの更なる追撃に、リシアの顔が先程以上に赤くなる。
 このワイルド美女もなかなかのお茶目さんでした……。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています

もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。 使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

処理中です...