四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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13話 モリーのお店

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 今度はガン見しないようにと注意しながら、また人間観察をしつつ歩き始める。
 しばらくすると、表通り沿いに一軒の武器屋を発見した。
 中に入ると広い店内に女性が一人。

モリー
人 女 32歳

 赤味かかった浅黒い肌に栗色の赤髪、胸も大きく背も高い、そして結構な筋肉質と、ベラーナさんに負けず劣らずのワイルド美女だ。
 左手の小指には文字がびっしりと刻まれた銀色の指輪が鈍く光る。

 黒い瞳もエキゾチックで素敵です。

「いらっしゃい」
「お邪魔します」

 とりあえず店内の武器を見て回り、一通り見終わったところで思案する。
 武器を片手で扱うと、どうしても技術的に武器単体での攻撃の幅が狭まってしまう。
 籠手と盾が一体化してるなら兎も角として、そうでないなら出来れば両手で持ちたいところだ。

 かと言って長すぎる武器は洞窟などで威力を発揮しづらい。
 でもまぁ…槍だな。
 なんと言っても《槍は武器の王者》だ。
 中国の有名な拳法家も言っていた気がする(うろ覚え)
 確かただの棒で壁際を飛び交うハエを壁に押し当てることなく鋭い打撃力で全て突き落したとかの逸話が有名だったか。
 …思考が逸れたので武器選びに戻る。
 先にも述べたが長柄すぎるのは避けたいので、やはりここは短槍か。
 ショートスピアは確か――あった。
 木の柄に鉄の刃が付いた物で、金属部分が小さいためかロングソードよりはお安めだ。

鉄のショートスピア
スロット【空き】

 長さは大体140~150cm、先端には少し幅広の刃が付いており、棒の先端にソケットかぶせて固定されている。
 石突の方にも金属のソケットで補強されている。

 ソケットはきっちり金具で留められているので外れそうにないな。
 値札を見ると150カパーと手の出る範囲だ。

 うん、これでいいかな。

 次に鎧だが、あまり高いのは無理だから革製品しかないな。
 良さげな革のベストを発見。
 お値段は100カパーか。
 今はこれでいいかな。

 あと手甲なんかが欲しいなぁ。
 槍はただ突くだけでなく、細かい操作をするつもりなので、グローブなんかで覆うより直に触れるほうがいい。
 手の部分が空いているが手の甲はちゃんと被える感じのが欲しいが……見当たらない。
 仕方が無いので槍を持ってカウンターへ向かう。

「決まったかい?」
「えぇまぁ。あと槍の穂先にカバーが欲しいのですが」
「ナイフ要ので代用できるから銅貨8枚ね」
「それと手甲とかってあそこにあるだけですか?」
「そうさねぇ、簡単なものならすぐ作れるが、今はあそこにあるだけだ」
「んー、こう親指に引っ掛ける感じで手の平部分をあけた、肘くらいまである布に手の甲まで革で覆う感じのが欲しいんですが」
「なんだい、それくらいならお安い御用さ」
「おお、ちなみにお値段とかどれくらいになります?」
「80カパーってところだねぇ。革の上に薄い鉄板を付けても120カパーくらいよ」

(150+100+120+5=375c)

「じゃぁ鉄板付きでお願いします」

 銀貨を4枚取り出し手渡すとおつりで銀貨1枚がそのまま返ってきた。

「いいんですか?」
「初見だし、駆け出しみたいだからサービスしとくよ」

 なかなか気風きっぷのいい女将さんである。

「ありがとう美人のお姉さん!」
「なっ、こんなおばさんをからかうんじゃないよ! ったく、ちょっと待ってな、すぐ作ってくるから。モティナ! 店番してくれるー?」
「はーい」

 照れたのか、顔を赤らめ奥へと行ってしまったモリーさんに代わって、モリーさんの面影を宿した少女が現れた。
 真夏だからか薄着でスカートの丈も膝上よりもやや上と、健康的な服装だ。

モティナ
人 女 15歳

 白い肌にモリーさんと同じ栗色の赤髪。
 胸はやや控えめだが、モリーさん似の愛らしい顔は将来有望である。
 そんなモティナが木製のトレイに水の入ったコップを差し出してくれた。
 左手の中指には、モリーさんと御揃いの指輪がはまっている。

「今日は暑いですねー」

 少女は人見知りすることなく気軽に話しかけながら、薄い服の胸元に指をかけてあおぎ始める。
 その服の隙間からは見えてはいけない愛らしい突起が見えたので、表に目を向けるフリをして自然体で目をそらした。
 
 危うく水を吹くところだった。

「きょ、今日は日差しが強いからね…」
「あ、心配しなくてもお水はサービスですからね♪」

 お兄さんは水の代金なんかよりも君のその無防備さが心配です。

 モティナに革のベストを調整してもらうと、空いた時間で『親指の第一関節から先が離れる』子供だましな手品や、『立てたコインを左の人差し指で押さえ、押さえた指の上を右手の人差し指を走らせながら右手の親指でコインを弾いて回転させる』という、これまた子供だましの手品を見せ、そのタネ明しをして盛り上がる。

 なんだか妹が出来たみたいで少しほっこりする。
 リシアにも見せてあげよう。

 そこへモリーさんが戻って来た。

「すまないね、娘の面倒を見させたみたいで。ちょっと着けてみてくれるかい?」
「いえ、俺もお姉さん似のこんな可愛い子とおしゃべりできて楽しかったです」

 簡単なお世辞を言いながら、モリーさんに渡された手甲を両手に装備する。
 俺が言ったモノに更に改良が加えられており、とても手に馴染む。

「おお、こんな良いのをありがとうございます!」
「ま、まぁ気に入ってくれたみたいで良かったよ……」
「?」

 声に妙な違和感を感じ振り向くと、モリーさん親子は二人共赤い顔をして視線を逸らしていた。

 今日は結構暑いし、暑さに当てられたのかな?

「ではこれで失礼しますね」
「モンスターの素材があれば何か作ってやることも出来るから、良いのが手に入ったら持ってきな」
「お兄ちゃんまたね」
「家の中に居ても熱中症にはなるから水分補給は忘れないようにね」

 そんな注意をしながら、手を振って見送ってくれた二人に手を振り返し店を後にした。

 素材を集めて装備を作る。
 これは楽しみが増えたかも。
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