四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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番外5話 炎の瞳・前編

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 ねこさんに教えてもらった情報を頼りに、俺も狩りをすることにした。

 まずステータスを変更しよう。
 今は攻撃手段が剣一本しかないのだ、筋力71と体力30くらいでいいだろう。

 情報収集のため宿屋の近くにある冒険者ギルドに行くと、受付の若い女が色々と教えてくれた。

 会話後は食事に誘われたが、『先程君が教えてくれた仕事をやってみようと思っている。申し訳ないがまたの機会に頼みたい。代わりと言っては何だが、その時は是非奢らせて欲しい』と、丁重にお断りした。
 こういう断りを入れる際は、『君の誘いを断るのはすごく残念に思っている』という事をきちんと匂わすのが大事である。
 特に『君の誘い』と言うところが重要だ。
 好意を寄せている相手から特別視されて嫌がる人間などまず居ないからな。

 おっと、話しがそれてしまった。

 彼女から得た情報によると、初心者は近くの草原に居るホーンラビットを狩るのが良いらしい。


 ホーンラビット Lv1


 初めて遭遇したウサギは体長1mほどで、ふてぶてしい顔の上には二本の角が横に並んで生やしている。

 ウサギもここまででかいと可愛げが無いな。

 攻撃しようと近付くと気付かれてしまい、こちらを向くなり明らかに突進をしてくるような身構えをした。

 逃げないのか。

 ウサギは腰を振って身体を揺らしながらタイミングを取ると、俺に向かって一直線で突進してきた。
 まるで猫が得物に襲い掛かるようなしぐさである。

 なかなか好戦的だな。

 俺は剣を握る右手を左手で上から握り、野球のバッターのように構えて剣を振り抜いてやる。
 クリーンヒットした剣がウサギの顔から胴体までをばっさりと切り裂き血を撒き散らせた。


 ベースLvUP!
 ジョブLvUP!


 ウサギの死骸が粒子となって消えると肉が残った。

 ふむ、いけそうだな。

 手応えを確信した俺は、このままノービスのジョブがカンストするまでひたすらウサギを狩り続けた。

 ノービスのカンストまで大体1時間程で、ベースがLv15なった頃には程々の量のウサギの肉と、ある程度の毛皮を手に入れていた。
 一先ずこれを売却するため冒険者ギルドへ向かうと、買取は肉屋と買取商のところへ行くよう教えてもらう。

 全部で〆て870G 毛皮が少し高く売れた。

 ただ、ウサギはドロップ率が悪すぎるな。
 しかも数が少ない上に時々逃げる奴も居て経験値時給としての効率はあまりよくない。

 次は別の場所に行ってみるか。
 定食屋でガッツリと肉料理を食いながらそんなことを考えた。

 一旦宿に戻るとステータス欄を開け、スキルや ジョブ、ステ振りを弄る。

 この世界に来るまでは魔法職にでもと思っていたのだが、狩りをしていて身体を動かす方が性に合っていると、考えを改める。

 と言うか剣で敵と戦うのは実に楽しい。

 最近仕事が忙しく、ジムにも行けてなかったためストレスが溜まっていたが、ここに来てようやく解消された気分だ。
 やはり朝晩の腕立て腹筋背筋スクワット50回X3セットとストレッチ程度では全然足りていなかったようだ。

 そういう訳でファーストジョブをファイターに、セカンドジョブをシーフにしてみた。

 ステは筋力53体力30敏捷30の筋力多めのバランス型だ。
 敏捷の効果実験も兼ねてである。

 ボーナススキルか弄るのが面倒なので〈鑑定Lv3〉と〈人族共用語〉〈ジョブ追加Lv1〉は固定にし、〈詠唱短縮Lv1〉〈HP自動回復増加Lv5〉〈獲得経験値増加Lv3〉〈麻痺耐性Lv1〉をつけておく。

 麻痺耐性はまぁ保険のようなものだな。
 あとは武器屋に行きロングソードを売却。
 バスタードソードと皮製のブーツを購入―なんだ?

鉄のバスタードソード
スロット【空き】【空き】

 スロットなど今まで無かったぞ。
 もしやこれは〈鑑定Lv3〉の効果か?

 試しに〈鑑定Lv2〉にすると、スロットの確認が出来なかった。

 そういえば、大福さん達がカードがどうのとか言っていたな。

 他にもスロット付きの装備が無いか確認したところ、全体の三分の一位の品に付いていた。

 今は持っていても意味は無いので買いはしないが。

 その後、道具屋でポーションを5本と毒消しポーションを1本買い足した。

 で、向かった先は先程狩りを終えた場所だった。
 効果実験なのだ、同じ敵を相手にしたほうが良いだろうと、ホーンラビットを狩ることにしたのだ。
 結果としては敏捷30だけでも身体の切れが大幅に変わった。

 今ならフリーランニングでも出来そうな気がするな。

 うむ、悪くない。

 …悪くない?
 何を言っている。
 この均整の取れた美しい肉体にあのしなやかな動きが加わるのだ。
 最高ではないか。
 …おっといかん、ついにやけが出てしまった。
 肉体のことを考えると思考にふけってしまうのは俺の悪い癖だな。

 自分の肉体性能が強化された事に喜びを見出しながら、俺は木々が茂る森の奥へと足を向けた。

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