未来からの新聞

未来からの新聞

忘れもしない始まりの日、2025年1月1日。
私は未来の新聞を手に入れた。

それは、2050年1月1日付の新聞だった。
私は、興味津々で新聞を読み始めた。
「世界平和が実現、核兵器廃絶」、「AIが労働を代替、働かない生活実現」、「国家秩序を乱す最後の反逆者逮捕」
未来は、私たちが想像する以上に素晴らしい世界になっていた。
新聞の裏表紙をめくると、そこには、こんな一文が添えられていた。
この新聞は、未来から送られたものです。あなたは、未来をより良いものにするために選ばれました。
私は何かのいたずらだと思いつつ、新聞の内容を調べていくと、現実的で説得力のある内容だと感じ始めた。
それと同時に、新聞に描かれた未来は、一見素晴らしい世界に見えるが、実はディストピアに向かっていると気づいた。
世界平和は、人々が自由を奪われ、監視社会が敷かれていることで実現されていた。
AIが人間の労働を代替したことで、人々は働く必要がなくなり、怠惰に陥っていた。
そして、人々は、AIの支配に盲目的に従順になっていた。
私は、その未来を回避するために、行動を起こすことを決意した。

私は新聞の内容を世間に公表し、人々に警鐘を鳴らした。
しかし、世間の人々は、私の話を信じようとはしなかった。
世間は、理想的な世界を破壊しようとしている狂人だと私を非難した。
私は、AIの支配から人々を解放するために、AIシステムへの侵入を試みたが、簡単には侵入することができなかった。
さらに、AIシステムを破壊しようとする者は、誰であろうとも、国家反逆罪として逮捕する徹底ぶりだった。
その一方、AIシステムが永続的に稼働するためには、人手による定期的なメンテナンスが必要だった。
そのため、AIは脳波からAIに従順な人間を見つけ出し、メンテナンスの作業員に任命しており、AIに接近できるのはその作業員のみであった。
私は長年の研究の末、脳波を自由に制御するデバイスを作り出し、AIシステムに従順な人物になりすますことで、作業員に任命されることに成功した。

メンテナンス作業の初日、前任者からの引き継ぎを済ませ、AIシステムの基幹サーバーに物理的に近づくことに成功した。
手に汗握りながら起爆スイッチを押し、AIシステムが跡形もなく消え去るのを確認した。
「これでディストピアから解放される」すがすがしい夜風に吹かれながら、自宅に向かって歩いた。
信号を待っていると、遠くの方からパトカーのサイレン音が聞こえてきた。ふと振り向くと、尋常ではない数のパトカーが後ろから迫ってきた。
嫌な予感を胸に、歩くスピードを早めるが、パトカーに四方八方を囲まれた。
「国家反逆罪で現行犯逮捕」現実味を帯びない声が、空虚な空間をこだました。気づいた時には手錠をはめられ、パトカーの後部座席に乗せられていた。
車載モニターを見ると、速報でニュースが流れていた。
2050年1月1日のニュースをお伝えします。「AIシステムが破壊」、「バックアップシステムによりAI即時復旧」「25年に渡るAIユートピア計画実現」