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番外編
後日談:心の声 R18
しおりを挟むリンジェーラは今、絶賛困惑中である。
何故かというと、いきなりゾディアス様の心の声が聞こえるようになってしまったからだった・・・・・・。
遡る事数刻前、リンジェーラは依頼されたポーションをいつものように作成していたのだが、購入した記憶のない粉末が紛れ込んでいるのに気がついた。
購入先に確認し、返却しなければと思い、机に置いていたのだが、ポーションを移す作業の際に、数滴溢れて粉末を湿らせてしまう。
普通であれば粉末が駄目になるから買い取りになってしまったなと思うくらいなのだが、何故かその粉末は袋に入っていたにも関わらず発火してしまったのだ。
だがすぐに火は消し止め、ちょっとしたボヤ騒ぎになってしまうところだったと、リンジェーラが安堵した所でゾディアス様がいきなり調合室のドアを開けて現れた。
「リンジー!・・・・・・煙の匂いがしたが、大丈夫か」
ドアを開けて周りを見渡し、匂いの先を探っているようだ。
「ゾディアス様、おかえりなさい。怪我はありません。大丈夫ですよ」
リンジェーラが大丈夫と伝えたが、ゾディアス様は側にきてリンジェーラの手を握り目に見える怪我がないか確認しだした。
(火事でも起こしたのかと思ったが、火傷はしていないようだな。仕事は許可しているが怪我をするかもしれないなら、やめさせた方がいいか・・・だがリンジーの自由を奪うことになるし、やめろといえば嫌われてしまうだろうか)
「!?」
リンジェーラは手を握られながら、怪我がないか真剣に確認するゾディアス様を見ていて違和感を感じ、気がついた。
ゾディアス様の表情から心配している様子が伝わるのに、その数倍は心配している声がゾディアス様の口が動いてもいないのに聞こえてきたのだ・・・・・・。
「ゾディアス様・・・・・・仕事をやめろなんていいませんよね?」
リンジェーラは確かめるために、先程の声の内容を質問してみた。
「リンジーがしたい事をやめろとは言わないよ。ただ怪我には気をつけてほしい」
(本音はやめろと言ってしまいたいが・・・リンジーから聞いてくるという事は、やはりいわなくて正解だったか。だがもし危険な事があった時には・・・・・・)
やはり、この声はゾディアス様の心の声で間違いないようだ。
だって口で言っている内容と、心の声では、ゾディアス様がむけてきた笑みを怖く感じたから・・・。きっと後者の方の声の方からきている表情だとリンジェーラは理解した。
だが、どうしていきなり、心の声が聞こえるようになったのか・・・。おそらくは、得体の知れない粉末が原因だ。小火によりその粉末を吸いでもしたのだとリンジェーラは考え、小火の原因を横目に見てため息をついた。
この効果は一体いつまで続くのか、それにゾディアス様に言うべきか・・・・・・。リンジェーラが考えている間にもゾディアス様の心の声は聞こえていたので、リンジェーラは一瞬迷ったが、すぐに心の声を聞いて言うのはやめることにした。
(危険な事はさせず、屋敷に閉じ込めて全ての世話をしたいなどといえば・・・引かれるのはわかりきっているから言いはしないが・・・もし本心を知られるような事になれば、実行してしまっても致し方ないかもな)
今まさにゾディアス様から聞こえた声が、リンジェーラの生活を脅かしてしまうものだったから・・・。
リンジェーラは絶対に言わないと心に誓い、燃えてしまった粉末の後片付けをさっさとして、この粉末がなんだったのか確認を依頼するのだった。
「リンジー、後片付けが終わったら食事にしよう。リンジーが好きなデザートをお願いするから、食べさせてもいいか?食後は妊婦が安産になるというマッサージもさせてほしい」
(食後には、デザートを頂かないとな)
「最近食欲が増してしまって体重が増えたので、ヘルシーな物を用意してもらってたくさん食べますから、デザートは控える事にしたんです。餌付けは・・・フルーツなら構いませんよ」
食事を手ずから食べさせる餌付け行動は、獣人なら当たり前の愛情表現だが、リンジェーラは人族のため、その行動はただの羞恥でしかなかった。だからゾディアス様はリンジェーラの好きな物でつるようにして毎回していたのだ。
「そうか・・・だがリンジーが食べるのは子の栄養になるし、2人分なのだから好きにたべていいと思うぞ」
(リンジーが口を開けて、恥ずかしいそうにしているのが至福の時なのだが、フルーツでは数が限られてすぐに終わってしまうではないか・・・・・・いつもは少しずつにして回数を稼いでいるのに)
「・・・・・・」
リンジェーラはゾディアス様の心の声に、思い当たる節を思い出して、あれは計算されたものだったのかとゾディアス様の狡さを知った。
「2人ぶんでも、好きに取りすぎは病気にもなりますし、出産時にも響きますからね。何事もほどほどにです。ということでシャインマスカットを3つにしておきます」
リンジェーラはゾディアス様の心の声への抵抗に数を限定して告げた。
「・・・・・・それだけか。だが食後のマッサージをするのはさせてもらうからな」
(リンジーがデザートを我慢するのだから、自分も少しは我慢しなくてはな。だが食後の触れ合いだけは譲る気はないぞ)
「はい、それはいいですよ。この前の足のマッサージは浮腫が楽になって助かりました。ゾディアス様はマッサージがお上手ですね」
リンジェーラはゾディアス様の心の声に間違って返事をしないように気をつけながら会話を続ける。
「リンジーのために宮廷の者に習ったんだ。前回の妊娠の時も浮腫に悩んでいたのに、何もしてやれなかったからな」
(リンジーの事は、番である俺がなんとかしてやりたい。マッサージであればリンジーに触れられるから、一石二鳥だ)
リンジェーラはゾディアス様の心の声に、本音がさらけだされていてなんともいえない気持ちになりながら、食堂に向かい、ゆっくりと餌付けをされた。
そして食後は抱えられて自室に戻ると、何故か浴室へ運ばれる。今日はバスタブに浸かりながらマッサージをするというが、心の声からも、マッサージとしか意図は読み取れなかったので、ゾディアス様に促されるまま着ていたものを脱いでバスタブに浸かった。
「なんだか、これ、ヌルヌルしてますけど・・・」
バスタブに浸かると、いつもと違いお湯でない感触にゾディアス様を見やる。
「マッサージがしやすいようにな。力を抜いているといい。足からしていくぞ」
(リンジーの足を触るだけで・・・我慢ができなくなりそうだが、まずはリンジーのために尽くさないとな)
「・・・はい」
ゾディアス様の心がわかる事で、今までのゾディアス様の行動には、必ずリンジェーラと触れ合うためにされていた事が多々あるのだと理解した。
マッサージも結局足から始まり、お尻、腰、胸と全身組まなく揉みほぐされた・・・。途中から安産のためだとは思えないものだったのだが、心の声を聞くとほぼただのマッサージだとわかった。
「ゾディアス様、そろそろのぼせてしまいそうですから、終わりにしましょう」
ゾディアス様のマッサージ自体は気持ちがよいが、聞こえてくる声に耐えられそうにないため、リンジェーラは終わりを告げる。
「大丈夫か?ぬるめにしておいたが、気分が悪くなったか?」
(つい夢中になりすぎてしまった。無理をさせすぎてしまっただろうか。至福の時が終わるが仕方がない)
「気分は悪くありません。とても気持ちよかったですよ」
(そうか、気持ちよかったか・・・本当は鳴くほど気持ちよくしてやりたいが、それは子を産んでしばらくしてからだな)
「ならよかった。体に付いているのを流してからあがろう。お湯をかけるから一旦バスタブからゆっくりでよう」
(リンジーに触れていたら反応してしまったが。リンジーを早く休ませないとな)
ゾディアス様はリンジェーラを抱えたが、リンジェーラは待ったをかける。
「ゾディアス様・・・待ってください。私も・・・ゾディアス様を気持ちよくしてあげます」
リンジェーラはゾディアス様の心の声を聞いて、抱えられたまま濡れた体を押し付けて囁いた。
(ッ、ダメだ!耐えろッ、今はッ)
「リンジー、頼むからあまり煽らないでくれ、手が滑ってリンジーを落としたくない」
心の声とは違い、ゾディアス様が発した声は落ちついていて、こんなにも繕うのが上手いのかとリンジェーラは感心しながら、いたずら心に火がついた。
「ゾディアス様、ほらヌルヌルですからよく滑りますよ」
リンジェーラはゾディアスのシャツをはだけさせ、ズボンにも手をかけていく。布越しにゾディアス様自身のを刺激すればさらに質量がました。
(リンジーがッ、誘ってッ)
「無理はしなくていいからな」
内心は余裕が無さそうなのに、ゾディアス様はなんでもないような顔をして、目を細め嬉しそうにリンジェーラの頭を撫でた。
リンジェーラはゾディアス様に撫でられながら、催促されているように感じ、ゾディアス様を喜ばせるために目一杯のサービスをしてあげた。
サービス中のゾディアス様の心の声は、かなり満足してもらっているようで、卑猥で欲望だらけになり、ついついリンジェーラも気分が高揚してしまい、危うく妊婦なのを忘れて抱き潰して欲しいと思ってしまうほどだった。
けれど、いつまでも心の声が聞こえるというのは、便利なようで疲弊する。
特に翌日には、ディミドラと団長の屋敷へ招かれていたため、団長の執着心に耳を塞ぎたくなるのを、耐えなくてはならなくなるのだった。
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