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番外編
後日談:生誕パーティー
しおりを挟むリンジェーラの出産から1年後、今日は1歳になる愛娘、ベルジェールの生誕パーティーが開かれている。
獣人の慣例では、出産後にすぐにお披露目パーティーはされず、1年後の誕生日にお披露目として、生誕パーティーを開くというのが普通らしかった。
無事1年を乗り切ったと祝う意味があり、お披露目をして挨拶に来た人に匂いを覚えてもらうのだと・・・。匂いを覚えてもらうというのは、大切な我が子を守護する事に来る協力するという意味もあるそうだ。
「リンジー、お招きありがとう。ゾディアス様、御息女の1歳の誕生日を迎えた事、お祝い申し上げます」
もちろん今日のパーティーにはディミドラと団長も祝いにきてくれた。ディミドラに寄り添うように、団長はピッタリとくっついている。相変わらずのようだ。
「デラありがとう。来てくれて嬉しいわ。団長もありがとうございます」
団長は変わらずディミドラにしか興味はないようだから、今日もディミドラについてきただけだろうが一応お礼くらいは言っておく。
「ゾディアスの子でもあるからな・・・。祝いくらいは来る」
団長はリンジェーラの考えていることがわかったのが、相変わらずな顔をしている。
だが、そういいながらも、ちゃんとゾディアス様が抱いているベルジェールに近づいて匂いを嗅いでくれた。
因みに夫が子を抱くのは、何か危険があれば守るためなのと、妻には近づけさせないという意味があるのだとか。
このパーティーにしろ、獣人の慣例というのは人族には馴染みがなく、リンジェーラはディミドラに、あらかじめ教えてもらっていたのでなんとかなっていた。
獣人の妻として母として、ディミドラの方が数ヶ月先輩であり、経験する慣例も早いので、教えてもらえてリンジェーラはとても助かっている。
ディミドラのように、獣人の侍女はいるのだが、人族との習慣の違いなどをあらかじめ教えてくれるような者はいなかった。彼女達の習慣はそれが普通だから、リンジェーラが知らないのだと気が付かないのだ。
「匂いはゾディアスと似ているな・・・この子に何かあれば共に協力をしよう」
団長はベルジェールの頭を撫で、ベルジェールにくっついている幼獣精霊にも視線をむけた。ディミドラに聞いていたとおり、上位種だからか、ベルジェールにも幼獣精霊がついて生まれた。
幼獣聖霊の方が成長が早く、すでに守護と子守りを担ってくれている。ディミドラから聞いていたとおりだ。
ベルジェールは一歳でかなり活発なので、とても助かっている。既にリンジェーラだけでは、活発すぎて全ての危機を回避するのは難しかった。
やはり獣人・・・上位種獣人なだけあり、幼いのに身体能力がかなり高いようだった。今もゾディアス様の腕から脱出しようと、落ちつきがない。
「よろしくお願いします」
だがゾディアス様は、気にする事なくベルジェールを抱いたまま
団長と会話している。だが、団長は何やらゾディアス様に耳打ちをしてディミドラと会場の外に出て行ってしまった。
気にはなったが、まだ他の来客もいるので、リンジェーラは次の招待客へ意識を戻す。
次に来たのは、以前リンジェーラに求婚した宰相補佐で兎獣人のシャガート様だった。両サイドには2人の女性・・・恐らく以前ゾディアス様から聞いた、奥様方だろう。確かに豊満な胸をおもちで、しっかり強調したドレスを着られていた。
「リンジェーラ嬢。御息女のご成長おめでとうございます。初のお子が上位種とは、これからが楽しみですね。もしゾディアス様に何かあれば、貴方と子も一緒に面倒を見ますので是非頼って下さいね」
シャガート様はまだ諦めてはいないのか、祝いの場で言うに似つかわしくない事を言った。
2人の妻達は多少呆れ顔なようではあったので、シャガート様とは違い常識人のようだった。
「相変わらずだな。だが、彼女はもう俺の妻だ。・・・そのような日がこないように努力しよう」
リンジェーラの代わりにゾディアス様がシャガート様に言い切ってくれる。
「そうですか。まあ、もし貴方と御息女に何かあれば、力にはなりますよ。貴方の子ですからね」
シャガート様はリンジェーラに笑みを向けて、ベルジェールの匂いを確認し、ではまたと言って去っていく。
奥方達はリンジェーラに申し訳なさそうに頭を下げ、シャガート様の後をついていかれるのだった。
その後も騎士団のメンバーや、フィラデル様達もこられ、賑やかな生誕パーティーになった。
だが、その裏で王族側の人達が、ベルジェールの婚約を伺うようにパーティーに参加しており、リンジェーラは我が子の将来を心配せざるをえないのだった。
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