獣人の番!?匂いだけで求められたくない!〜薬師(調香師)の逃亡〜【本編完結】

ドール

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番外編

後日談:マーキングの成果

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 マーキングという執拗な行為をされてから、ゾディアス様はよりリンジェーラにベッタリになった。 
 それもそのはず・・・リンジェーラはまた身籠っていたのだ。

 何度も繰り返された行為で、リンジェーラはまた妊娠しそうだなと思っていたのだが、本当にまた妊娠した事実には驚いてしまった。
 獣人と人族では子を成し難いはずなのと、まだ長女が2歳にもならずして2人目を身籠ったのだから。


 そして、1人目同様、ゾディアス様は喜んでくれ、さらに過保護になった。
 活発な娘のベルジェールが側に来る時は特に気を配り、リンジェーラの身体に衝撃がないように側で見守ったり、ゾディアス様がいない時は、ベルジェールに会うことは控えさせられたりとした徹底ぶりだった。


 しかしベルジェールの成長は早いが、まだまだ二歳児で甘えてきたがる。今までと違い距離をとられた事で、より甘えん坊になっている気もするが、ぐずることはない母親孝行な子だった。


 どちらかといえば、ゾディアス様の方がリンジェーラの側を離れるのに抵抗をみせ、かなり渋りながら仕事に向かうという日々を過ごすほどだ。

「リンジー、すぐに帰ってくるから、絶対に1人で出歩かないように。庭に出るのも必ず侍女に手を引いてもらえ、薬草の世話に没頭しないように、日傘をさしてもらって、かならず休憩をとって、身体を冷やさないようにも気をつけて、絶対にポーションを自分で運ばないように」
 など・・・1人目と同様、毎日離れる際には注意事を言われ、邸で囲われる日々に戻るのだった。


 だが、早すぎる2人目の懐妊に、薬師としての仕事が困ったことになっていた。

 2人目は悪阻はあるが、ある種類の匂いに対してだけ吐き気があるだけだったのだが、それが問題だった。

 普通のポーションの作成なら問題はないのだが、解毒剤のポーションを作る時は匂いに吐き気をおぼえるようになってしまったのだ。


 匂いで吐き気がくるのはベルジェールの時にはなかったのに、悪阻というのは不思議なものだと思った。悪阻自体がない人もいればひどい人もいるし、悪阻の期間が短い人もいれば、出産するまである人もいると聞いた事があった。

 獣人にしろ人族にしろ、そこはあまり変わりはないようだったので持ち得ていた知識は、何も情報がない助かっていた。


 しかし解毒薬の作成が出来ないのは問題で、リンジェーラは頭を悩ませていた。もちろん理由を説明すれば依頼元のフィラデル様は無理はしなくていいと言ってくれるだろう。

 だが、現状、解毒薬がないのは時期的に困るのもリンジェーラは理解していた。この時期は猛毒爬虫類の大量発生が通年で、解毒薬は必要不可欠だからだ。


 ゾディアス様も討伐に当たると言っていたので、悪阻は辛いがある程度数は作成しておきたかった。だからなんとか匂いを嗅がないように工夫し作業にとりかかる。
 匂いを嗅がないといけない過程だけを何とか耐えて、依頼数の半分は作成し終えたが、リンジェーラは限界になり作業を断念した。


 そして、リンジェーラは吐き気を緩和させるべく、匂いがこもる調合部屋からでて、庭にあるベンチソファーにもたれながら悪阻が落ちつくのを耐えていた。 

「リンジー、何をしたんだ」
 いつの間にかゾディアス様が帰宅し、ゆったりとした動作で近づいてくる。足音がやけに響いて、ゾディアス様が怒っているであろう事がわかった。


「ただ、依頼のポーションを作っただけですよ。言われていた事は何も破ってはいません」
 
 リンジェーラら身体を起こし、言われていたことを思い出す。1人で出歩かない、庭に出るの時ら必ず侍女に手を引いてもらう、薬草の世話に没頭しない、日傘をさしてもらう、かならず休憩をとる、身体を冷やさないようにする、ポーションを自分で運ばない・・・、だったはずだから、いいつけ自体は守っていたはずだ。


「侍女からは約束を破る事はしていないのは聞いているが・・・今1番きつい事を無理してする必要はないだろう」


「けれど、ゾディアス様が討伐に参加され、毒に苦しむ事になるかもしれないのなら解毒薬は必要です。これくらい少し休めば問題はありませんし、大丈夫です」


「リンジーが俺を思い耐えてまで作ってくれたのは嬉しいが、夫としては妻が苦しい思いをするのは、自分が毒に侵されるより耐え難いんだ」
 ゾディアス様はリンジェーラの隣に腰かけて、自分の方へ腰を引いて引き寄せた。


「私だって・・・貴方と同じです。大好きだから」
 ゾディアス様の腕の中に自分から抱きつき、リンジェーラは目一杯甘える事にした。

「ああ、俺もだ。だから俺の気持ちも理解してくれ。解毒薬ポーションはこの量で足りるようにするから問題はない。俺から事情も説明しておくから心配するな」
 ゾディアス様は甘えるリンジェーラを受け止めつつも、絆されはしなかった。


「・・・フィラデル様がいいというなら、いいのですが。依頼量の半分ではありますし、足りるはずはないように思いますけど」


「大丈夫だ。要は討伐に当たる者が、毒の攻撃に当たらなければいいだけの話だ・・・攻撃回避の鍛錬を強化し、毒に当たるような可能性の者は討伐から外せばいい」
 そういいきるゾディアス様はなんだか、悪い顔をしていた。団長の横暴さが移ってしまったに違いないと、リンジェーラは思ってしまう。

「それに、リンジーが懐妊した知らせはしていたし、仕事は絶対ではなく、可能ならという前提で、師団長に許可したくらいだからな。自分の唯一の番に無理をさせるなら、容赦はしない」
 ゾディアス様は心配するなと、今は自身を気遣う時期だと言ってリンジェーラの膨らみがまだない腹を優しく撫でるのだった。


 翌日にはゾディアス様が解毒薬を持っていき、リンジェーラが苦しみながら作成した物だから、使う可能性のある弱い者は討伐に参加させるなと言ったようだ。   

 団長は、その話を面白がり、師団長へ魔導師団と騎士団で討伐数を競い合う勝負をするぞと持ちかけ、毒を浴びた者がいれば討伐数の減点というルールを提案したらしい・・・一応高得点者には何やら賞品も用意する事になったとか。

  
 ゾディアス様は、団長にしては皆がやる気になる名案をだしたなと満足気に話し、これで解毒薬を使う者が減ればリンジェーラも安心できるし、妻が苦しむ姿をみなくていいと言った。
 そして、ゾディアス様は今日も甲斐甲斐しくリンジェーラの世話をやき、マーキングの成果が熟すのを、1番近くで見守ってくれるのだった。


 


 
 

 


 
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