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番外編
後日談:スライム事件
しおりを挟むいつものように温室で薬草の世話をしていると、いきなりディミドラが現れた。
「リンジー匿って頂戴ッ!」
「そんなにあわてて・・・・・・団長絡みみたいね」
リンジェーラはディミドラが言わずとも、雰囲気で察してしまった。その慌てぶりは団長絡みだと。
「そうなのッ、あの人しつこくて」
団長は、今度は何をやらかしたのだろうか・・・。
「まぁ、ここには来ないでしょうから、話くらいゆっくり聞くわ。こっちにどうぞ」
リンジェーラは作業していた手を止めて、ディミドラをガーデンテーブルがある場所へ誘った。
「それで?あの子は置いてきたの?」
「丁度お昼寝してる時に、レナードが帰ってきて・・・まあ乳母もいるしあの子は大丈夫なんだけど。それより一緒に回避する方法を考えてッ」
「考えるのはいいけど・・・何があったの?」
まだ何があったのかがわからない。
「実は・・・レナードが、その・・・スライムを持ってかえってきたの」
ディミドラは思い出すのも嫌なのか涙目だ。
「スライム?スライムって最弱の魔物の?」
「ええ・・・私、実はスライムが苦手なの・・・。前にまとわりつかれた事があって、あの感触が大嫌いなの」
本当に嫌いなのか、ディミドラは鳥肌がたっていた。
「・・・確かに嫌いな人は嫌いかもね」
リンジェーラは採取の時に見かけた程度だが、まとわりつかれたら確かに恐怖かもしれないと思った。
「それで団長はスライムをどうかしたの?」
「あの人ッ、私にスライムをッけしかけたのよ!やだッて言ってるのに、嫌がる私を見てニタニタして」
ディミドラはかなり怒っているようだ。だが、思い出して青い顔をしていた。
「珍しいわね・・・団長の事だから、デラが嫌がる事はやらないと思ってたんだけど?」
団長は何を考えているのだろうか・・・。相思相愛になったから、結婚もしたから嫌われる事はないとでも思っているのだろうか・・・。だからといって嫌われる事もあるというのに。
「・・・・・・あの馬鹿は、スライムでッ、あるプレイを学んできたって言って・・・ッ」
「・・・なるほど。誰かに入れ知恵でもされたのかもしれないわね」
団長はディミドラのいうとおり馬鹿なようだ。そんなのはマイナーな行為だろうし、よほどの物好きでないとしないだろうと呆れる。
「リンジー、どうしたら回避できるかしら・・・いい案はない?勢いで飛び出しちゃったけど、戻らないといけないし。でもレナードは絶対しつこいと思うし」
「そんな事したら大嫌いになるって言えば?」
「言ったわ。でもあの人、私が苦手なものがあるのを面白がって、嫌って拒否したのに、泣き顔も可愛いって、逆に目がやばいんだもの」
ディミドラの話を聞くかぎり、やはり団長は最低だと思った。好きな子に意地悪して泣かすなんて事は、大人のやる事ではない。
「団長も懲りないわね・・・なら別のプレイを提案するとか、ディミドラが好きなんだから、そんな事するなら死んでやるって短剣ちらつかせて逆に脅せばどう?」
「・・・・・・リンジーったら、怖いくらいレナードの事よく理解してるのね。確かに効果あるかもしれないわ」
「理解というか・・・単純なだけよ。扱いは簡単、あの人の弱点はデラなんだから」
理解しているだなんて心外だ。
「まあ、後半は最終手段として、リンジーなら別のプレイって何がいいと思う?」
ディミドラは意外にも前者を選んだようだ。ディミドラは嫌な事をされても、結局団長には甘いなと思った。
「そのへんは考えたくはないんだけど・・・。団長の好みにあわせるとか、普段お願いされてたけどしなかった事をするとか?スライムプレイはよくわからないけど、ローションを代わりに使ってスライム感をだすとか?」
リンジェーラはあまり考えたくはなかったが、ディミドラのためだと思い、考えて案をだしてみる。
「なるほどね・・・確かに懇願されたけど拒否したものはいくつかあるわ」
ディミドラは考え込んで、何やら決めたようだった。
「ありがとうリンジー!参考になったわ。とりあえずやってダメなら最終手段をとってみる」
ディミドラは意気込むと、さっと帰ってしまうのだった。
翌日にはゾディアス様から、今回の騒動の発端を聞かされたのだが、討伐の帰りの休憩中、スライムがいるのを見た団員が話しているのを団長が耳にしたのが原因らしかった。
スライムの体液は、ローションの代わりに野外でするのには丁度いいやら、刺激が違うので、喜び方が違うやらと話していたそうだ。だが、それはやはりマイナーで・・・本命には絶対したら嫌われるよなというしめくくりだったそうだ。
団長はこの話が終わる前に行動に移したための、今回の騒動につながった。
更に後日談は、ディミドラからしっかり聞かされたのだが、ローションまみれにされ、一緒にお風呂に入るで、団長は満足したそうだ。
まあこの話を、ゾディアス様も団長から聞いて、リンジェーラに提案してくるのは、また別の話・・・。
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