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81.ダンス

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 リンジェーラ達が会場へ入ると注目が集まる。婚約の前に噂になったからだろうか・・・。もちろんリンジェーラ達だけではなく、ディミドラ達も注目を浴びている。


 ディミドラは普段王都には滅多に来ないため、団長を狙っていた女性達からしたら、いきなり出た婚約者になるのだから、リンジェーラよりも注目度が高いと思う。

 
 互いの色を身につけて、婚約者としての立場で出席したのだから、注目が集まるのは理解していたが、やはり人気な2人なため、だいぶ女性達からの嫉妬が混じる視線が多いようだった。


 団長やゾディアス様は、視線を気にすることなく堂々とエスコートをしてくれ、嫉妬の視線から守るように遮ってくれる。

 入場後はすぐに、団長やゾディアス様の周りは騎士団のメンバーが寄ってきて固められる。何故かリンジェーラには、示し合わせていた様に見えた。


「副長、団長、婚約おめでとうございます」

「さすが団長!辺境伯のご令嬢と婚約だなんて、羨ましいです」
 
「いつの間に婚約者なんてつくってたんですかーッずるいです!」

「むっちゃタイプ」

「・・・はぁ」

「おめでとうございます!誰か紹介して!幸せを分けて下さい!」

「・・・振られたけど、好きだなぁ」

「・・・いい」


 そして皆んなが婚約のお祝いの言葉を述べてくるが、ちらほら祝いの言葉ではないものも混じっていた。


 団長はまんざらでもないような顔で、ディミドラの腰に手を回して、笑顔のディミドラに手をつねられている。


 ゾディアス様は変わらずな表情でよくわからなかったが、リンジェーラに向けられる視線は柔らかくて、リンジェーラも見つめ返すのだった。
 
 
 参加者は全て入場し終わったようで、皇太子殿下があいさつをしはじめる。
 この国の皇太子殿下は金髪に碧眼で、獣人達並みに見目が良く皇太子狙いの令嬢達から熱い視線が集まっている。
 リンジェーラは話した事はないが、沢山の令嬢達が皇太子を囲っているのは見た事があった。

 皇太子狙いではない令嬢達が、チャンスはないかとばかりに周りに、こちらにも集まってきていた。・・・婚約者を伴っての場にも関わらず勇気がある。


 タイミングよく、音楽が流れ出し、リンジェーラはディミドラと顔を見合わせ頷いた。令嬢達に囲まれる前に逃げようと・・・。


「ゾディアス様、踊りに行きませんか?ゾディアス様と一緒に踊りたいです」
 リンジェーラはゾディアス様を見つめながら、自分から誘った。

「ああ、もちろん」
 


「レナードは?私をダンスに誘わなくていいのかしら?」
 ディミドラは団長を名前で呼び、自分からは誘わず、団長に誘わすように問いかける。


「もちろん誘うに決まっているだろう。デラは俺のパートナーだからな、俺以外と踊るのは許さない」
 きちんと誘えてはいないが、ディミドラはホール中央へ手を引かれて行った。


「貴方達も、周りの綺麗なご令嬢達を誘ってはどうかしら」
 リンジェーラは周りへのフォローも忘れずに声をかけ、ゾディアス様にエスコートされて、団長達に続くのだった。

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