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79.兄の心配
しおりを挟むあの日から数日たち、ゾディアス様とリンジェーラは無事に婚約をした。
婚約したが、あの時にシャガート様とのやりとりもあり、すでにゾディアス様と婚約する噂がまわり、知れ渡っていた。それに見送りに行く間も見られていたようで、ゾディアス様がリンジェーラに対する態度まで、しっかり噂されていた。
リンジェーラにとって特にあれから問題になる事はおきてはいない。ゾディアス様からも、男爵夫人の話は聞いていなかった。
あの日は帰って、すぐに父と兄に例の男爵夫人の事を報告し、調べてもらっている。父からは、番う覚悟を決めたのなら、早めにゾディアス様に番の件を話した方がいいと助言もされた。
リンジェーラもわかってはいるのだが、タイミングというのもあり、なかなか話が出来なかった・・・。
リンジェーラが悩んでいると、団長が辺境に向かったという情報が父からもたらされる。
団長は3日以内とあの時言っていた・・・。意味はわからないが、ディミドラ不足で我慢ができなくなる、という意味だったのかなと思った。
だいぶ時間は稼げたとは思うが、リンジェーラはディミドラの身を案じずにはいられなかった。団長の番に対する執着は恐ろしいなと感じていたからだ。
番に対しては執着が強く、周りが見えなくなると思うと、獣人の本能が恐ろしい・・・。それはゾディアス様にもいえるだろうが、ゾディアス様は番よりリンジェーラを選んでくれている。
だが、リンジェーラが番と分かれば団長のようになってしまうのだろうかと思うと不安を感じてしまっていた。
いつかは番だと話さなければいけない・・・。そう思うリンジェーラのもとに、皇太子の誕生日パーティーの招待状が届いたと、兄がやってくる。
「リンジー、このパーティーはパートナーが必須だ。ゾディアス様と行くのだろう?」
兄はリンジェーラにも手紙を手渡してきた。
「そうですね。パーティーの事は聞いていましたし・・・婚約してはじめてのパーティーですから、ゾディアス様と行きますけど」
「ドレスはどうするんだ?」
兄は何かを気にしているようだ。もしかして・・・まだドレスを作っていないと思っているのだろうか。
「心配しなくても大丈夫ですよ。ゾディアス様に連れられてお店に行きましたから。既に採寸をしてドレスを作ってもらっています。デザイン画見ますか?」
リンジェーラはゾディアス様の色を取り入れたドレスにしていた。ゾディアス様のもリンジェーラの色が入っている。
「ならよかったよ。彼はこういう事には疎いと思ったからね。準備しているならいいよ」
兄はデザイン画を見ながら、どこか寂しそうに笑った。
「お兄様の考えは外れてはないですよ。団長がデラのために動いている話を聞いて、私にどうしたらよいか聞いてこられましたから」
ゾディアス様は頼りにはなるが、こういう事には疎いようで、今回は団長の行動が役に立った。
「そうか・・・。あまり女性関係の話は聞かなかったからな。こちらからも、今後のために助言しておくよ」
兄はそう言うと、リンジェーラの頭を撫でて部屋を出ていくのだった。
リンジェーラは、もらった招待状を見て、決心する。パーティーの時にはゾディアス様に、勇気を出して真実を話そうと・・・。
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