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77.番を偽る女

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 部屋から出て、ゾディアス様がどこにいるかはわからないが、可能性のある場所を探し回った。だがやはりどこかはわからなくてみはらしのよい中庭で待ってみた。


 ただまつというのは、リンジェーラには長く、ただ不安が増強するのを感じた。


「おや、またお会いしましたね。そのように憂いた表情でどうされたのですか?」
 リンジェーラに話しかけてきたのは、兎獣人で3人目の妻にとリンジェーラを望んだ宰相補佐の人だった。


「ただ、人をまっているだけです・・・」


「そうですか。では私もご一緒しましょう。憂いを帯びた貴方は捕食されてしまいそうですからね」
 リンジェーラの表情に不安が現れていたのだろうか、この間と同じ感じになった。


「それで、お手紙をお送りしましたが、よい返事は頂けそうでしょうか?」
 3人目の妻にと望むことに対してのだろうが、リンジェーラは首を横にふる。


「そうですか・・・返事は急ぎませんから気長に待ちますよ。心変わりしたら返事を下さい。因みに誰をまっているのですか?」
 彼はあきらめないようだ。リンジェーラは彼の名前さえしらないというのに・・・。


「貴方には、関係ありません。放っておいてもらえませんか・・・」


「私の事はぜひシーヤと呼んで下さい」
 目の前の彼はリンジェーラのいうことは聞かずに、名を呼んでほしいという。絶対に愛称だとリンジェーラは思った。


「それは、愛称でしょう・・・そんな間柄ではありませんので呼べません」

「奥ゆかしいですね。私の未来の奥さんは・・・とても可愛らしい。ならばシャガートで構いません」
 こっちは構う・・・。この人はどんな思考をしているのだろう。普通に拒絶しているだけだというのに、やはりかわった獣人だ。


「名前を呼ぶ機会があれば、考えておきます」
 しつこく言われても嫌なので、適当に受け入れた風で返事をしておく。



 彼の相手をしていると、待ち望んだゾディアス様を見つける。だが、彼の隣には貴婦人がエスコートされていた。
 その様子を見て、ゾディアス様は口では番よりリンジェーラだと言ったが、番かもしれないという人を邪険にはできないのだと思った。
 

「おや、あれは・・・男爵夫人ですね。確か最近男爵が亡くなったと聞きましたね」
 彼はリンジェーラに、エスコートされる女性の情報を提供してくれる。


「何故夫人がゾディアス殿といらっしゃるのか・・・不思議ですね」
 彼はリンジェーラの反応を伺うようにしてくる。


「・・・あの人は、ゾディアス様の番だと名乗りでてきたみたいですよ。本当かは知りませんけど」
 リンジェーラは嘘だと知っているが、偽物だと言い切れば、めんどうが増えるので、黙っておく。


「そうですか・・・貴方の浮かない表情の原因がわかりました。話しかけないのですか?待っていたのは彼でしょう?」


「・・・・・・」
 ゾディアス様がきちんとエスコートしているのを見て、話かける勇気はリンジェーラにはなくなってしまった。ゾディアス様のすがたを見るまでは、嘘をあばこうと思っていたのに・・・。


「弱気の貴方もいいですが・・・本来のあなたの方が似合っていますよ。貴方のために一肌脱ぎましょうかね」
 彼はそういうと、少しかかんで、失礼しますねというと、リンジェーラをかかえあげた。


「きゃッ、いきなり何を」
 リンジェーラはいきなり男の人にかかえられて、驚き声をあげる。



「私は気を利かせているのですよ。少しくらい役得をさせて下さいね」
 そういいながら、かかえあげたリンジェーラのお尻を撫でてくるのだった。


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