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75.新たな問題
しおりを挟む結局あの後、ゾディアス様にはこっそり帰ってもらった。もちろん父達にはばれていたようだが、咎めないようにお願いをした。
そして、ゾディアス様との婚約の話を進めたいと父に伝えた。
婚約の話をするまでに、ゾディアス様に番の話をしなければいけないと思っている。だが、今まで黙っていたリンジェーラに対してゾディアス様がどのように思うかが不安になった。
番だというだけで愛されたくないと、リンジェーラは自分を優先させてゾディアス様に黙っていた。謀っていたことになるのだから・・・真実を知ってゾディアス様が、どのように思うかなんてわからないのだ。
リンジェーラが番だったならとゾディアス様は言ってくれた・・・。だがそれはリンジェーラが番じゃない場合の言葉で、番だとわかっていたのに、ゾディアス様の気持ちを蔑ろにしたと、幻滅されるかもしれない。
そう思うと怖くて、いつ話したらいいのかと、告白された日から日にちがたってしまうのだった。
リンジェーラが悩んでいる間にも、時間はすすみ、いつものように魔導師団に配達に行くと・・・団長が待ち構えていた。
魔導師団に行く前の待ち伏せである。嫌な予感しかしない。
「遅かったな・・・話がある」
団長とは約束はしていないはずなのに、遅かったなとか、あいかわらず偉そうだなと思った。
「私にはありませんけど・・・配達があるので通してもらっても?」
「お前にも関係はある事だ・・・。配達したらすぐに戻ってこい。ここでまつ。逃げるなよ」
団長は何やら、獲物を逃さない目をしている。
仕方がないので、リンジェーラは言われたとおりにしておいた。だが、何かあればいけないと思い、師団長へ言付けを頼んで団長のまつ場所に急いだ。
「ちゃんときたな」
リンジェーラが急いで団長のところへ行くと、壁によりかかり偉そうに腕組みをして待っていた。
「言われたとおりに・・・それで?」
リンジェーラは早く団長の要件をすませてもらいたくて問いかける。
「ここでは話せん。ついてこい」
仕方がないため、団長についていく。向かった先は応接室で、部屋に入るなりいきなり本題に入ってきた。
「ディミドラから連絡が何もないが・・・元気にしているか。あと3日のうちに彼女に顔を出すように言っておいてほしい。もうもたん」
3日・・・何がもたないのだろうか。だが、ディミドラは辺境へ帰っている。あの日から5日はたっただろうか・・・父親と話はできたのだろうかと思考する。
「ディミドラは怒っていましたよ・・・。団長と既に婚約を結ばれていることに対して」
「何故怒る必要がある・・・番なのだから当たり前の事だ。それに彼女の初めてを奪ったのだから、責任をとるためにもすぐに婚約したのは普通の事だろう。番じゃなければ婚約もしない奴がまわりにはいるがな」
団長はやはり自分勝手だ。ディミドラときちんと話して彼女の考えを、思いを少しも理解できないのだろうか・・・。
「ゾディアスだとしてもそうだろう・・・お前と婚約していないとはな。だから助言してやったんだ」
婚約の話が団長からというのは理解しているが、ちっともありがたいと思わなかった。
「いらないお世話をありがとうございます。私達はなるようになりますから。これ以上団長に世話をやいてもらう必要はありません」
ゾディアス様を娼館に連れて行ったのは、かなりの余計なお世話だ。団長は至らないことしかしないと、リンジェーラの団長に対しての評価は低い。
「結果的には、あいつに自覚させるいい機会だっただろう・・・。あいつがお前に惚れているのはわかっていたからな。鈍いあいつにはちょうどいいやり方だ」
団長は、わかっていたと言った。
「だとしても・・・今後はやめてください」
「お礼の一つくらい言ったらどうだ。番が現れていないタイミングで、最高にラッキーだっただろう。番が現れればしまいだからな、処理をするなら早い方がいい。俺としてはせっかく番の存在がわかっているのに、勿体ないことをするのが理解はできないがな。それよりも今は早めに処置をしてもらったほうがいいぞ。ゾディアスの番を名乗る女が現れたからな・・・」
ゾディアス様の番は自分なのに、団長の発言にリンジェーラは困惑の表情を隠せないのだった。
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