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69.後悔

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 リンジェーラが目が覚めると、屋敷内にあるリンジェーラの部屋だった。馬車に乗った記憶がリンジェーラにはない。
 兄が抱えてくれていたから、運んでくれたのだろう・・・。


 昨日の事が目に浮かび、また涙が出そうになった。きっと、あれからゾディアス様は、リンジェーラ以外の人と行為をしたのだろう・・・。


 ゾディアス様は、リンジェーラと番の匂いがあれば、行為ができると確かめ、抱けないリンジェーラより、抱ける人の所に行ったのだ・・・。理にかなっていたとしても、そんな行動にゾディアス様が出るとは思わなかった。 
  
 他の人とできるのであれば、リンジェーラはいらないと言われるのではないかと・・・そう思うと、ゾディアス様に会うのが怖くなった。


 リンジェーラは自分の考えで番と名乗り出ず、ゾディアス様の心を欲した。だか、その選択が間違いだったのではないかと思い、リンジェーラは後悔しているのだった。



 リンジェーラは何もする気がおきずに、テラスから外をながめる。


 部屋には兄が様子を見にきてくれたが、リンジェーラは何も語ることはなかった。
 こんな状態では、ゾディアス様がいわれていた婚約の話などできはしないし、考えられもしない。

 過去をどうこう言う気はないが、今現在はリンジェーラと向き合ってくれていると思っていたため、失望したと言う気持ちも大きかった。

 
 昼食を食べるために、兄に部屋から連れ出されたが食欲は湧かなかった。でも兄の手前なるべく食事を口にする。会話も何を話したかよく覚えていない。


 あまり考えたくなかったので、昨日調合する予定だった薬の作成にとりかかった。時々思い出してしまうが、雑念を振り払うように調合に集中する。


 気付けば夕方になっていて、思ったよりも集中していたみたいだった。父が帰ったと知らせを受けて出迎えに向かう。


 父の姿を捉える前に、父と兄の会話が聞こえてきた。


「リンジーに婚約の打診がきた・・・3人目の妻として迎え入れたいと。宰相補佐のヴィラン殿からだ」

「3人目の妻だと・・・馬鹿にしているのか?」


「どうやら真剣なようだったよ。リンジーに惚れたのだとね。どうやら街で会った時の慈悲深い対応をみての決断だそうだ」


「そんなのはどうでもいい・・・3人目というのが気に食わない。あの子は唯一に愛されるべきだ。既に他にも妻がいる奴にリンジーをたくせるわけがないだろう」


「それは私も同意だよ・・・。彼はすぐに返事をくれとは言わなかった。何年か待つ気はあると言われたよ」


「待つだと・・・リンジーが靡くと思っているのか」


 聞こえてきた会話にリンジェーラは溜息がでる。あの時の彼は家に打診をするほど本気だったんだなと・・・もしゾディアス様に愛されなければどうするのか、その先を考えた事はなかった。


 貴族ならば、本来結婚は自由とまではいかない・・・このように当人以外で話が進む。ディミドラの方も同じだったように。


 だか、父達はリンジェーラを娘として迎え入れたが、結婚を強要した事はない。しなくてもいいと、言ってくれるくらいだ。


 父を出迎えるのはやめて部屋に戻ろうとしたのだが、父達以外の今は聞きたく無いと思う声が聞こえてくるのだった。

 
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