70 / 113
69.後悔
しおりを挟むリンジェーラが目が覚めると、屋敷内にあるリンジェーラの部屋だった。馬車に乗った記憶がリンジェーラにはない。
兄が抱えてくれていたから、運んでくれたのだろう・・・。
昨日の事が目に浮かび、また涙が出そうになった。きっと、あれからゾディアス様は、リンジェーラ以外の人と行為をしたのだろう・・・。
ゾディアス様は、リンジェーラと番の匂いがあれば、行為ができると確かめ、抱けないリンジェーラより、抱ける人の所に行ったのだ・・・。理にかなっていたとしても、そんな行動にゾディアス様が出るとは思わなかった。
他の人とできるのであれば、リンジェーラはいらないと言われるのではないかと・・・そう思うと、ゾディアス様に会うのが怖くなった。
リンジェーラは自分の考えで番と名乗り出ず、ゾディアス様の心を欲した。だか、その選択が間違いだったのではないかと思い、リンジェーラは後悔しているのだった。
リンジェーラは何もする気がおきずに、テラスから外をながめる。
部屋には兄が様子を見にきてくれたが、リンジェーラは何も語ることはなかった。
こんな状態では、ゾディアス様がいわれていた婚約の話などできはしないし、考えられもしない。
過去をどうこう言う気はないが、今現在はリンジェーラと向き合ってくれていると思っていたため、失望したと言う気持ちも大きかった。
昼食を食べるために、兄に部屋から連れ出されたが食欲は湧かなかった。でも兄の手前なるべく食事を口にする。会話も何を話したかよく覚えていない。
あまり考えたくなかったので、昨日調合する予定だった薬の作成にとりかかった。時々思い出してしまうが、雑念を振り払うように調合に集中する。
気付けば夕方になっていて、思ったよりも集中していたみたいだった。父が帰ったと知らせを受けて出迎えに向かう。
父の姿を捉える前に、父と兄の会話が聞こえてきた。
「リンジーに婚約の打診がきた・・・3人目の妻として迎え入れたいと。宰相補佐のヴィラン殿からだ」
「3人目の妻だと・・・馬鹿にしているのか?」
「どうやら真剣なようだったよ。リンジーに惚れたのだとね。どうやら街で会った時の慈悲深い対応をみての決断だそうだ」
「そんなのはどうでもいい・・・3人目というのが気に食わない。あの子は唯一に愛されるべきだ。既に他にも妻がいる奴にリンジーをたくせるわけがないだろう」
「それは私も同意だよ・・・。彼はすぐに返事をくれとは言わなかった。何年か待つ気はあると言われたよ」
「待つだと・・・リンジーが靡くと思っているのか」
聞こえてきた会話にリンジェーラは溜息がでる。あの時の彼は家に打診をするほど本気だったんだなと・・・もしゾディアス様に愛されなければどうするのか、その先を考えた事はなかった。
貴族ならば、本来結婚は自由とまではいかない・・・このように当人以外で話が進む。ディミドラの方も同じだったように。
だか、父達はリンジェーラを娘として迎え入れたが、結婚を強要した事はない。しなくてもいいと、言ってくれるくらいだ。
父を出迎えるのはやめて部屋に戻ろうとしたのだが、父達以外の今は聞きたく無いと思う声が聞こえてくるのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
918
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる