68 / 115
67.酒場
しおりを挟む酒場に入ると、リンジェーラと仲がよい3人の冒険者メンバーが揃っていた。
「こんばんは」
「あっ、リンジー。いらっしゃーい。待ってたよー」
既に飲み始めており、挨拶も軽い。リンジーにいち早く気づいたのは、女性冒険者で1番護衛をお願いしているメイベルだった。
「ん?・・・ああ、リンジーと・・・お兄さん。こんばんは」
メイベルの隣には、彼女のパートナーであり、彼女の兄のアーロと、メイベルの事が好きだけど、メイベルが鈍くてなかなか仲が進展しない哀れなバルが並んで座っている。
「今日は奢りってことで、先に注文させてもらってまーす」
貴族相手でも、メイベルは萎縮せずリンジェーラ達とは気軽な間柄だ。
「メイベル、今日はリンジーだけじゃないんだから・・・」
アーロは兄らしく礼儀は弁えているため、いつもメイベルを嗜めている。
「構わないよ。こういう場では普通に話されるほうが良い」
兄はよくわかっている。ここは貴族社会ではないのだから、ここの仕様に合わせるべきだ。
「兄が言いっていうなら、いいのよ。気にしないでねアーロ。勿論バルもね」
バルは頷き、アーロも畏まりながらも了承する。
酒場に来てみたかったのは、純粋に雰囲気を感じたかったのと料理が目的だ。酒場の料理は冒険者に向けたものが多く、お酒やつまみの種類も多く揃えられていた。
護衛をしてもらう人達が話をしていて、興味がわき、いつか来てみたいと思っていたのだ。
「メイベルは何を飲んでいるの?」
「んー?エールだよ。香りと深みがいいの。私はこれが1番好き。リンジーも飲んでみる~?」
メイベルはリンジェーラにエールを勧めてくる。
「だめだ・・・」
だが、兄はリンジェーラの手に渡る前に阻止してきた。
「もう、お酒だって飲める歳なんだから、ちょっと味見くらい、いいじゃないですか」
リンジェーラは兄に抗議する。
「エールはアルコール度数が高い。初心者のお前には、カクテルくらいの低いものからにしなさい」
兄は相変わらず過保護だが、飲むなとは言わないところがリンジェーラには甘いと思う。
兄に言われて仕方なくカクテルを適当に頼んで飲んでみる。甘いのからさっぱりな味のものがあるが、リンジェーラは甘いのがおいしいと思った。
見ていた兄は、甘いのが好きなら、苦味のあるエールやビールは無理だと言ってきたので、兄が飲んでいたエールを奪って一口飲んでやった。
だが、兄のいう通りで、苦くてお酒初心者の自分には無理な味で顔を顰めてしまうのだった。
今日はカクテルと料理を堪能する事にし、みんなで楽しく過ごした。
食事中に絡まれる事はなかったが、給仕をするお姉さん達から男性陣はアプローチをされていた。
さりげなくボディタッチをしていて、リンジェーラとしては勉強になったが、兄やアーロは、妹の前でやめてくれと、かわしてしていた。
兄達が断り、バルが標的に変わると、給仕の際にさりげなく胸をチラ見せをしてきた。だが、メイベルとの間に入られたため、胸が邪魔だと悪態をついて追い払っていた。
皆んな容姿がいいためか、絡まれなれているようで、あしらい方も躊躇は一切ないのだった。
6
お気に入りに追加
977
あなたにおすすめの小説
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!

『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜
水都 ミナト
恋愛
マリリン・モントワール伯爵令嬢。
実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。
地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。
「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」
※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。
※カクヨム様、なろう様でも公開しています。

婚約破棄された悪役令嬢ですが、訳あり騎士団長様に溺愛されます
平山和人
恋愛
悪役令嬢のクロエは、婚約者であるラインハルト王太子から突然の婚約破棄を言い渡される。しかもその理由は、王宮に仕える公爵令嬢リリアナへの乗り換え――クロエが彼女をいじめたという濡れ衣まで着せられていた。
「こんな女とは結婚できない!」
社交界の前で冷たく言い放つラインハルト。しかしクロエは、涙を流すこともなく、その言葉を静かに受け入れた。――むしろ、これは好機だとさえ思った。
(こんな裏切り者と結婚しなくて済むなんて、むしろ嬉しいわ)
だが、父である侯爵家はこの騒動の責任を取り、クロエを国外追放すると決めてしまう。信じていた家族にまで見捨てられ、すべてを失った彼女は、一人で王都を去ろうとしていた。
そんな彼女の前に現れたのは、王国最強と名高い騎士団長、セドリック・フォン・アイゼンだった。冷酷無慈悲と恐れられる彼は、クロエをじっと見つめると、思いがけない言葉を口にする。
「……お前、俺の妻になれ」
冷たい瞳の奥に宿るのは、確かな執着と、クロエへの深い愛情。彼の真意を測りかねるクロエだったが、もう行く場所もない。
こうして、婚約破棄された悪役令嬢クロエは、訳ありな騎士団長セドリックの元へと嫁ぐことになったのだった――。

皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる