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60.雨宿り

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 ゾディアス様に抱えられて、街まで戻ってきた。門番の人がゾディアス様に抱えられているリンジェーラを見て、声をかけてくる。

 だが、怪我をした訳でもないので、ゾディアス様は問題ないとだけ言って、横を通り過ぎる。


 雨宿り出来そうな、屋根がある場所でようやく下ろしてもらえた。

「雨は強くはないが、多少は濡れる。長い時間当たれば身体も冷えるからな。迎えの馬車をよんでくる。ここで待てるか?」
 ゾディアス様はリンジェーラに外套をかけながら聞いてくる。


「はい。それは構いませんが・・・外套はゾディアス様が羽織って行って下さい。雨の中に行くなら濡れてしまいます」
 リンジェーラは、かけられた外套を外そうとするが、ゾディアス様の手が、リンジェーラの手に重なり、制される。


「大丈夫だ。俺はやわじゃないからな。風邪を引くといけないから使ってくれ・・・。それに、可愛いものは隠しておかないと、いない間に絡んでくる奴がいたら困るからな」
 ゾディアス様はリンジェーラが見惚れるくらいの、笑みを向けてくる。


「ッ~~」

   ゾディアス様の笑みをまともに見てしまい、言葉が出ず頷くことしかできなかった。


 ゾディアス様はすぐに戻ると言って、行ってしまう。リンジェーラは、ゾディアス様に可愛いと言ってもらえた事を思い出し、おしゃれしてきてよかったと思うのだった。


 なかなかゾディアス様の好感を得るのは、好みを掴みにくいため難しい。なるべく作った自分ではなく、ありのままの自分を好きになってもらいたい。
 今まで、好きな人なんて出来たことがなかったしアプローチはされても、したことがなかった。だから、リンジェーラはどうアプローチしたらいいのか、アプローチの方法が思いうかばない。

 とにかく、なるべく一緒に過ごす事くらいしか思いうかばないのだった。



「おや・・・?彼の匂いがするかと思えば、あなたは・・・」

 思惑していると、独り言をいいながら、こちらを見てくる獣人がいた。獣人独特の白髪で、肩まである髪はきっちり揃っており、すらりとしたスタイルの、非戦闘タイプであろうモノクルをした知的さを感じる人だ。
 宮廷で見かけた事があるが、誰かはよくわからない。


「あの、何か・・・?」
 知らない人ではあるのだが、宮廷の人だろうし、仕方がないので聞いてみる。


「ゾディアス殿の匂いががすると思ったのだが、彼はいないのですか?」


「今、迎えの馬車を呼びに行ってくれていますが・・・」
 話しかけてきた彼は、リンジェーラに対して興味があるわけではないようだ。


「ゾディアス殿がですか・・・ふむ、ならば私も彼が来るまで、ご一緒しましょう」
 何故か知らない人と、一緒にいなくてはいけなくなった・・・。何か話かけられるわけでもなく沈黙が続く。
 ただ単に、たまたま一緒に雨宿りしている人の光景だろう。ちゃんと距離も3人分くらい空いている。


 リンジェーラは早くゾディアス様が戻ってこないかと思っていたら、目の前に望んでもいない、待ち合わせの時に絡んできた人が現れたのだった。


 





 
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