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34.反撃

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「貴方達はご自分の心配をした方が宜しいでしょう。人の心配ではなくてね・・・。私に構っている暇があるなら、貴方達こそお相手をみつけた方がいいのでは?」
 リンジェーラは彼女達に言い返した。


「身分を弁えない貴方がゾディアス様の相手なんてッ」
 令嬢の1人が身分を口にする。


「身分ねぇ・・・それをいうなら、今私は伯爵令嬢だわ。例え市井で生活していた過去があったとしてもね・・・、今の身分は、貴方達より上よ。男爵令嬢に、子爵令嬢の皆さん?名前は覚える気がないからしらないけれど・・・既にあなた方だって、綺麗な身ではないはずでしょう?噂になっていたわよ。いろんな獣人騎士達と関係を持っているって・・・それに、この前ゾディアス様が宣言してくれた時に、ガゼボで致していたのって・・・貴方、でしょ?」
 リンジェーラは1人の子爵令嬢に、しずかに視線を向けた。


 視線を向けられた子爵令嬢に、周りの令嬢達からも視線が集まる。
「3人の獣人騎士達と、貴方が、庭で相性を確かめ合っている最中に出くわしてしまって、相手も獣人かと思ったわ。庭でするなんて野生じみていて、私には真似できない」 
 リンジェーラは冷ややかな目線で蔑む。


「そんな人が子爵令嬢だったのも驚きだけれど、何人も相手にしているのを見ると、貴族令嬢だというのに、節操なんてあったものじゃないわね。子が出来なければ、貴方こそ嫁の貰い手がないのではなくて?」


「ッ」
 言われた子爵令嬢は、リンジェーラを睨みつけてくる。

「それに、貴方・・・あの時、獣人達を惑わす香を持っていたでしょ」
 リンジェーラは彼女に近づき、耳もとでささやいた。


「あの時不思議な香りに気づいたけれど、それどころではなかったから・・・。いつも強引な彼だけれど、あの時はやけにおかしかった。今でも貴方からその香りがする・・・ずっと、持っているのね」
 リンジェーラは匂いが彼女からするのに目を細める。


「あんただって匂いつけてるでしょッ。あの時ゾディアス様に効かなかったのは、あんたの匂いが臭いからよッ。今なら絶対に彼を落とせるんだからッ」
 リンジェーラはゾディアス様のことを言われて、苛立ってしまう。


「でしたら、試してみてはどうですか・・・。匂いで好かれたとしても貴方自身が求められない虚しさが平気なら、効くかもわかりませんけどね」
 リンジェーラは結局、獣人に好かれる自分の匂いをゾディアス様に嗅がせようとはしなかった。好かれるのは匂いだけだとわかっているし、番が現れたら、さらに虚しいだけだ。


「そんなに言われるならッ、やってあげますわ」
 リンジェーラにのせられたのがわかっていないのか、彼女は騎士達の観覧できる演習場に向かって行く。

 一緒にいた令嬢達は、彼女がそこまでしていたのは知らなかったようで、最後まで見届けると、彼女の後を息巻いてついて行くのだった。



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