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26.口付け *
しおりを挟む「口付けなんかしたら・・・まだ勤務中だから、その先は我慢がしなくちゃいけないのに・・・我慢出来るのですか?」
リンジェーラも、彼らに本当の意味がわからないようにゾディアス様に甘く聞きかえした。
口付けしても、匂いに我慢できるのかと・・・。
「我慢出来るさ・・・その先は帰ったあとで付き合ってもらう」
本当はそういう意味じゃないが、リンジェーラは鼓動が早くなり顔を赤らめた。ゾディアス様はリンジェーラの反応に目を細め口角をあげた。
リンジェーラはゾディアス様の表情に悔しくなり、ゾディアス様を逆に驚かせてやろうと、精一杯恋人の振りをする行動にでる事にする。
「なら・・・いいですよ。好きにして下さい。でも責任はとりませんからね」
リンジェーラは甘える様に、ゾディアス様の首に手をまわして身を寄せ、上目遣いで見上げ、少し目を伏せる。
ゾディアス様はリンジェーラを抱えたまま、顎を引き寄せ唇を重ねてきた。角度を変えられながら優しく啄まれて、ゾディアス様の舌がリンジェーラの口内を、歯列をなぞってくる。
一応遠慮してか、初めてでもなんとか息ができるくらいのペースだ。自分が獣人と口付けをするなんと思いもよらず、しかもゾディアス様な事なのが信じられない・・・。
ゾディアス様は伏しめがちに、リンジェーラと視線まで絡めてきて雰囲気がとても甘い・・・本当の恋人のような感じだ。
ゾディアス様の口付けの仕方に終始ドキドキしっぱなしだ。
でもやっぱり、見られている視線が気になり、唇が無意識に離れてしまいそうになった。けれど、ゾディアス様は気づいたのかリンジェーラの頬から首元に手を添えて引き寄せた。
「んんッ」
先程の遠慮が嘘の様に、ゾディアス様の舌が口内に入り込み、リンジェーラの舌を絡めとってくる。舌先を吸われてゾクゾクしてしまった。耐えられない刺激にゾディアス様の胸板を叩く。
「もうッこんなにされたらッ・・・私が我慢出来なくなっちゃいます」
彼らにばれないように、ゾディアス様に抗議する。
「可愛くて、ついな・・・許せ」
だが、ゾディアス様は甘い視線を向けてきて、あまり見られない笑みを浮かべた。ゾディアス様の笑みにリンジェーラは、顔が熱くなるのがわかり、ゾディアス様の首にしがみついた。
「これ以上は、そんなに可愛くおねだりしても、無駄だからな。仕事が終わるまでは、この続きは我慢してくれ」
ゾディアス様は、しがみついて顔が見えなくなったリンジェーラの頭部に口付けた。
リンジェーラは、ゾディアス様に抱きつきながら、これで彼は納得しただろうか、終いだろうかと考える。
「それで、納得できそうか・・・?これ以上は見せつけてはやれん行為だ」
ゾディアス様が微動だにしないジェイクに、声をかけた。
「ッ、はい。・・・そんな仲なら、副長のだというなら、もう手はだしません」
しっかりと恋人に見えた様でリンジェーラは、安心する。これでこれ以上の行為をしなくてすむし、騎士団には副長との関係が広まるだろうから、絡まれなくてすむ。呼び出しさえもなくなるかもしれない。
ジェイクが納得し諦めた事で、彼らはそそくさと、この場を立ち去っていくのだった。
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