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23.魔笛
しおりを挟む師団長室から退室して、気分は最悪のまま、自宅に帰るために中庭を通った。普段なら通らないが、近道と思い通ってしまったのがいけなかった・・・。
中庭の道からは見えにくいガゼボで、複数の獣人騎士が数人集まっていて、1人の女性とお取り込み中の真っ最中を見てしまった。
リンジェーラはこんな中庭でとは思いもよらず、足早に見なかった事にして通りすぎようとした。
しかし、いつも何かと絡んでくる、獣人のジェイクがそのメンバーにいたようでリンジェーラの手を掴んで引き留めた。
「おいおい、何処いくんだよ。こんなとこ通って、交ざりたくて来たんだろ?」
彼はニヤニヤして、いつものようにまとわりついてくる。
「そんなわけないでしょ、急いで帰ろうしてるだけだから、手を離してッ」
リンジェーラはこの場から離れたくて堪らなかった。彼に手を掴まれているため動けず、むしろどんどんガゼボに引きづられていってしまう。いつもより強引だ。
2人の男女が交じり合っていて、周りはそれを見ていた。相性を確かめ合っているのだろうが・・・なんだか不快な匂いがした。昼間からこんなところでやめてほしいと思う。
リンジェーラはその行為をみたく無かった。
「ほら、お前との相性も確かめてやるよ。今は伯爵令嬢だが、市井育ちなんだし経験くらいあるんだろ?あそこじゃ、皆んな獣人の番になりたくて、寄ってくるくらいだしな」
いつにもまして、彼は卑猥で強引で、乱暴だった。彼らの行為を見て気が高ぶっているのだろう。
いつものように、撃退スプレーをお見舞いしてやろうとしたのだが、彼はリンジェーラが行動するより早く、リンジェーラの両手を片手で後ろに拘束した。
「おっと。また、あれをする気だったろ。でも残念だったな・・・二度は食らわない。この間のお礼に、多少の嫌な匂いは我慢して、ちょっとだけ味見してやるよ」
「頼んでないッ、やめてッ」
リンジェーラは、拘束されたままブラウスの前を肌けさせられた。
リンジェーラの白肌に下着に支えられた膨よかな胸が、晒される。
「やっぱいい身体・・・ん?なんだ・・・犬笛?」
彼が、リンジェーラの胸元にあった魔笛を摘んだ。ゾディアス様に借りて返すのを忘れていたため、出会ったら返そうと身につけていたのだ。
リンジェーラはチャンスだと思い、素早く行動した。彼が指で摘んでいる魔笛を咥えて、勢いよく息を吹きこんだ。
これをくれたゾディアス様に、助けを求めるために・・・。
目の前の彼は犬獣人だから、彼にも音は聞こえたのだろう。顔を歪めて魔笛をリンジェーラの口から素早く外し、周りを見渡した。
だが、誰もくる気配がなかったため、拘束していた手は解かずに行為を続けようとする。
だが、彼がリンジェーラに近づこうとした時、彼は横から伸びてきた大きな手で、顔面を鷲掴みにされるのだった。
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