獣人の番!?匂いだけで求められたくない!〜薬師(調香師)の逃亡〜【本編完結】

ドール

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20.呼び出し返し

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 王都へ帰り、辺境伯領でのことを父に報告した。パーティーでの事と、ディミドラ嬢の事を・・・。
 父は直ぐに対処してくれた。ちなみに彼は以前確かにうちに申し込みに来ていたらしく、条件を出すと渋い顔をしていたという。


 父がくれたドレスは、いい人以外も惹きつけてしまったようで父は申し訳なかったと言った。リンジェーラは気にしてはいなかったが、謝る父にそれならと、次のドレスは肌を隠すタイプをお願いしておいた。


 数日後には、団長から呼び出しの手紙が来たが・・・、場所は以前と同じ師団長室を借りた。借りられる物ではないのだが、師団長にも魔法具が役に立ったとお礼をいいに行った際、パーティーでの詳細を聞かれ、半ば無理やり報告させられた。


「それで・・・やつは、ディミドラ嬢を連れ去り、君を1人にさせたのだな」
 師団長は、リンジェーラを1人置き去りにした事を怒っている。


「まあ・・・そうですね」
 間違いはないので肯定しておく。

「そのせいで、リンジーは酷い目にあったと・・・」


「まあ・・・そうですね」
 さらに肯定。
 

「それなのに、やつはリンジーを呼び出すだと・・・最初の手紙には騎士団にと来いと書いてあったのだったな」

「まぁ・・・そうですね。でもそれはお断りして今日に至ります。敵の巣窟に行くなど、そこまで馬鹿じゃありません」
 理由を話しているにも関わらず、獣人が多い騎士団に招くとは・・・悪意を感じた。


 まあ・・・悪意を向けられたら、向け返そうではないかと、リンジェーラはちょっとした仕返しを実行中だ。
 

「リンジーは馬鹿ではない。馬鹿はやつだ・・・。それにしても、時間を指定した奴がまだ現れないとは・・・」
    師団長は時間にルーズな人は嫌いだから、さらにお怒りだ。15分はすぎている。まあ・・・リンジェーラの仕返しのせいではあるのだろうが・・・。


 師団長が椅子から立ち上がると同時に、師団長室のドアがノックされた。
 師団長がドアを開けると、しかめ面の団長が立っていた。


 その表情は、リンジェーラの仕返しが関係ありそうだった。団長の頬が赤くなっていたからだ。でも打たれた様な感じの赤さではなく何かがついている。


「何か・・・ついてますが、何かありました?」
 リンジェーラは、笑いを堪え、嫌味の様に団長の頬の赤みを指摘すると・・・睨まれた。


「まだ、ついているか・・・。さっき、ここにくる時に不意に口付けられた・・・不快だ。まだ匂いが残ってる。ちょっと顔を洗わせてもらうぞ」
 団長はそう言い、顔を洗いに行ってしまった。


 リンジェーラの仕返しとはそういうことだ。普段女性を侍らせていた団長は、まだ番を見つけたとは公表しておらず、彼女達とは縁を完全には切っていない。

 今日ここに、団長がくる事を何人かの女性に、それとなく聞こえるように話していたので、最近関係を持っていなかった彼女らに待ち伏せされたのだ。
 複数の女性に話していたので、少しのいざこざはあるだろうと思ったが・・・番以外には、口付けされるのも嫌だとは意外だった。


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