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17.パーティー 後編 下
しおりを挟むリンジェーラは抵抗しながらも、やはり男の力には敵わず、段々と会場から見えない茂みに連れて行かれそうだった。
こんな時に思い出すのは、獣人なのに優しく対応してくれる彼だ。こんな事なら、彼のそばにいれば良かったと思った。
「・・・ゾディアスッ様」
リンジェーラが、副長の名を呟いた時、リンジェーラに触れていた目の前の彼が離れ・・・吹き飛んだ。リンジェーラは背後から抱きしめられ、身体に回された腕に安堵を覚えた。
「すまない、待たせた」
背後からゾディアス様が優しく声をかける。
どうやら、ゾディアス様は彼が離れた一瞬を狙い蹴り飛ばした様だった。もうすでに、目の前の彼は気絶している。防御もしていない人族が獣人の攻撃に耐えるのは無理だろう。
「震えているな・・・」
ゾディアス様が来た事で、安堵し震えが出てしまった。
「大丈夫です・・・ッ。安心して気が抜けただけなので」
リンジェーラは自分の身体を抱きしめ、震えを止めようとした。
「無理をするな・・・部屋まで送る。なんなら、部屋の前で見張りでもしてやる」
ゾディアス様はリンジェーラのために提案してくれる。
「はい・・・その前に」
リンジェーラは、ゾディアス様に支えられながら、気絶した彼の元へ行き小さなスティクタイプの魔法具を額に当てた。
「何を・・・?」
「忘却のための魔道具です・・・。師団長から頂いてまして、もし襲われて反撃しても、忘れさせて問題にならなくするためにと・・・」
師団長はリンジェーラのために、忘却の術式を施した魔道具を持たせてくれていた。彼らだけでは心配だと言って、元々作ってくれている最中だったのを急いでくれた。
「物騒な物をもらったな・・・」
「これで、何故彼がここで怪我をして気絶しているのか、思い出す事はないでしょう・・・。副長が怪我を追わせては、問題になるかもしれませんから。本当なら、私が仕返ししたかったのですが・・・これ以上ない成敗でしょうから、やめておきます」
リンジェーラは、さすがに一発で気絶させられる威力の蹴りをもらった彼に、ほんの少し同情してしまった。
「すまないな・・・面倒をかける」
ゾディアス様も、彼を見てやり過ぎてしまったと、思ったのだろう。だが、彼は助けるためにしてくれたので、悪くない。
「いいえ・・・私の為にしてくれたのですから、隠蔽くらい問題ありません」
「隠蔽か・・・ならば、共犯だな」
ゾディアス様はフッと笑われる。
「誰か来るといけませんから、もう行きましょう」
そう言ったが、1人では立てず、支えてもらいながら部屋まで連れて来てもらった。
その間ずっと周囲には悟られない様に、仲睦まじく寄り添うふりをしたのだった。
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