獣人の番!?匂いだけで求められたくない!〜薬師(調香師)の逃亡〜【本編完結】

ドール

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12.パーティー前

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 パーティーまではあと数時間。普段は、あまり着飾らないからかリンジェーラ担当の侍女は張り切っている。


 長旅で自分も疲れているだろうに、リンジェーラの身体をほぐしてマッサージしていく。いつもは、軽くしかしない化粧をバッチリされて、髪も両サイドを編み込まれてハーフアップにされた。自分ではできない仕上がりだ。

 首元のチョーカーには、差し色に黄色い花を付けてドレスと合わせ、香りはいつものではなく、自分の匂いを誤魔化せるくらいの、獣人が怪訝な顔をしない程度のものにしている。
 一応、護身用にいつものスプレーを、ちゃんと忍ばせるのも忘れていない。


 ドレスはハイウエストで、普段は着ない胸元がいつもよりは、開いたタイプだ。胸元は黒よりの灰色で、リンジェーラの肌の白さが際立つ。ウエストから下は薄い紫色で雰囲気が柔らかく、控えめになっていた。
 背中も見えるが、髪をハーフアップにしているため見えづらいので妥協する。

 このドレスは父が手配していたらしく、いい人がいたら縁を繋いでおいでと言われた。まだ16歳だというのに気が早い。


 それに、私が結婚できる人の条件は、私を理解してくれ、守ってくれる父達のような人じゃないといけないので、なかなか見つからないと思う。
 何で見極めるかはやはり、魔法が長けた人なら可能性は高いだろうが・・・。パーティーで見つかるはずはないし、今日はパートナーがゾディアス様なので、無理だろうと思う。


 準備が整うと丁度、ゾディアス様が迎えにこられた。団長はディミドラ様の所に迎えに行ったみたいでいない。2人きりだ。

「とても似合っているな・・・。だが胸元が強調しすぎではないか」
 ゾディアス様は褒めてくれるが、リンジェーラが気にしている所を指摘してきた。


「・・・私もそう思います。・・・ですが、これは父が用意してくれたものですので、私に決定権はありません。気になるなら見ないように努力してください」
 折角のドレスアップに小言の様な事を言われて、少し冷たく言い返してしまう。


「誰もみたくないとは言っていない・・・いや、見られても嫌じゃないならいい、忘れてくれ」
 ゾディアス様なりのリンジェーラの事を気遣っての指摘だったのだろう。ゾディアス様は顔を背けてしまった。そのわかりづらい気遣いに、笑いそうになった。


「かまいませんよ。ふふ、ゾディアス様なら見ても」
 ゾディアス様に悪戯心がわき、ついゾディアス様の腕に自分の腕を絡ませてみた。


 ゾディアス様は反応よく此方をむき、ちゃっかり胸元を見て、また顔をすぐに逸らしてしまった。だが、腕は振りほどかれない。

「女性をエスコートするのには慣れていない。不満があれば言ってくれ・・・」
 ゾディアス様はそう言われたが、きちんとリンジェーラの歩幅に合わせて歩いてくれた。エスコートに慣れてないと言われたが、さすが爵位持ちの獣人貴族だ・・・問題などなく、エスコートとしては完璧だった。


 
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