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7.騎士団長の秘密

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 リンジェーラは師団長に支えてもらいながら、師団長室のテラスへ案内された。後ろには騎士団長がついてきている。

 師団長にイスにする様に促され、温かい紅茶をいれてくれた。師団長は防音の魔法をきちんと施して話し始める。


「それで、何の説明をお望みなんですか?」


「もちろん、この娘についてだ」
 リンジェーラは不安になった。


「この子は、ウチが贔屓にしている薬師だが?宮廷薬師であるベルタス伯爵の娘、実際は養女だが・・・きちんとした血縁者だ」


「それは知っている。この娘が初めて来た時に、団員達が話していたからな・・・だが、聞きたいのは公表している事ではない」


「何を、お気づきになられたと・・・?」 
 師団長は、静かに問われる。 

「・・・・・・血の香りだ」
 団長が言った言葉に、身体が反応してしまい、椅子が小さく音を立てた。

「そうですか・・・、その事でしたら他言無用の契約魔法を結んで貰わないといけませんね・・・。これは、彼女の事でありますし、貴方は彼女に信用がない・・・。貴方に話すには彼女の了承も必要です」
 団長がリンジェーラに視線を向けてくる・・・。リンジェーラとしては秘密を知る人は少ない方がよかった。
 それに、彼は騎士団長ではあるが、獣人だったから・・・。そこが一番不安だった。
 

「そのように、威圧しないで下さい。彼女は、猛獣のような強引な男性は嫌いなんですよ」
 にっこりと師団長が団長に告げる。


「お前はさらりと毒づくな・・・・・・、ならば俺も秘密を話す・・・これならどうだ」


「自分の秘密をバラしてでも、彼女の秘密を知りたいのですか?まったく、酔狂ですね。それに貴方の秘密なんて知っても、彼女の得にはなりません」
 師団長は、団長が言う秘密には本当に重要性があるかと言っている。

「俺はこれでも譲歩している・・・なら先に話を聞いてからでもいい。だが、こちらも他言無用だ」
 団長はさらに譲歩し、先に秘密を話すと言われた。さすがにここまでされると、断りにくい・・・、リンジェーラは頷き、返事をした。


「誰にも言ってはいなかったのだが、俺に人族の番ができた。だが、子ができたわけではない」
 騎士団長に番・・・、獣人だし、騎士団だからできても不思議はないだろう。師団長を見ると目を見開いている、そんなに意外だったのだろうか。


「そこの娘は理解していないようだな、お前から説明するか?」

「あー、そうですね。確かに貴方にしては本当に重要な秘密なようだ。他言しないと約束しよう。リンジーもだよ」
 師団長は、リンジェーラに視線を向ける。


「はい・・・。あの、でもどうして重要な秘密になるのですか?」


「騎士団長は上位種の獣人だ。子を成すことが一族では更に重要視されている。だから、たくさんの女性とお付き合いする必要がある。子を成すためにだ・・・」

「はい・・・」
 上位種は子を成すのが求められるのか・・・ならば、副長もそうなのかと思い浮かべてしまう。


「子がいないのに番と彼は言った。もうその女性以外とでは子を成すつもりはないと言っているんだ。その女性が子をなせなくてもだ。子を成す事を重要視されている上位種の彼が、子が出来たわけではないのに、番の宣言をすればたいへんな事だ」
 子を成すことが、重要視され、それを求められている上位種の獣人に、まだ子も成していない番ができたと・・・それは確かに相手の女性への圧が心配だ。


「それにだ・・・俺は番だと思っているのだが、初めてが番の匂いにあてられてだな・・・急にコトを急いたものだったから、あまりよく思われていないんだ」
 団長はしどろもどろに言った。

「「は?」」

「まあ・・・一目惚れ的な感じでだな。襲ったような・・・イメージになるな」
 

「「犯罪・・・」」
 リンジェーラと師団長の呆れたような声が重なるのだった。


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