7 / 114
6.騎士団長
しおりを挟むドアを押さえつけている人物をチラリと確認する・・・。やはりドアを押さえつけていたのは、騎士団長の手のようで、頭上から団長の息づかいがする。
「ドアから手を・・・離していただけますか」
リンジェーラは声が震えない様にお願いする。
「何故逃げようとする?」
逃さないとでも言う様に低く声が耳に響く。
「逃げてなんかいません。師団長に呼ばれていて・・・時間に遅れているので、急いできただけです」
リンジェーラは逃げたくて堪らなかった。チョーカーには獣人が嫌いな匂いを仕込んでいたが、血が滲んだ事で効果に不安がよぎった。あの時を思い出し、身体が震えだしてしまいそうだ・・・。
「そうか・・・先程はうちの団員が申し訳なかったな・・・。俺が傷の手当てをしてやろう」
団長は強引にリンジェーラの腰を引き寄せた。手だけは死守しようと、治癒魔法を速攻で自分にかける。しかし、傷は治っても血は消えてはくれない。
「やッ、やめて下さいッ、離して、傷はもう治しましたからッ」
リンジェーラは、腕をひっぱられ、バレてしまう恐怖に涙目になった。
「レナード、無理強いはやめろ」
ゾディアス様も、追いかけてきてくれたようで、団長の肩を掴みリンジェーラを離すように言ってくれた。しかし団長は口角を上げた。
「ほう・・・俺に指図するのか?」
2人は睨み合い、間には不穏な空気が流れる。騎士団長は白虎の一族の上位種で黒虎の獣人だ。
2人が争えば大惨事になってしまうと思っていると、ドアが内側から開いた。
「魔導師団の詰所前で誰が騒いでいるのかと思えば・・・何をしているのですか・・・」
ドアが開けられ、師団長が顔を覗かせた。リンジェーラに回された団長の手を見ると、眉間に皺を寄せる。
「その子はウチの専属だ・・・手を出すのは許さないよ」
普段温厚な師団長が、リンジェーラが聞いたこともないような声色で忠告を言い放つ。
「・・・どんだけ箱入りなんだ。だがな・・・説明してもらわないといけない事ができた・・・。この娘と俺も邪魔させてもらおう。もちろん、風通しがいいところでな」
団長は、師団長が了承するまで、リンジェーラの腰から手を離そうとしそうになかった。
「いいでしょう・・・話だけ聞いてあげます。質問に答えるかは内容次第です」
師団長が仕方なしに了承すると、リンジェーラの腰に回されていた手が離れて、今後は師団長に腰をひきよせられた。
ゾディアス様が何か言いたそうだったが、リンジェーラは今の状況に耐えるだけで精一杯だった・・・。
師団長が来てくれた事で、状況が最悪ではなくなったと安堵したが、身体の震えがでてきてしまい、師団長にそのまま寄りかかってしまうのだった。
0
お気に入りに追加
934
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる