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6.騎士団長

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 ドアを押さえつけている人物をチラリと確認する・・・。やはりドアを押さえつけていたのは、騎士団長の手のようで、頭上から団長の息づかいがする。 

「ドアから手を・・・離していただけますか」
 リンジェーラは声が震えない様にお願いする。


「何故逃げようとする?」
 逃さないとでも言う様に低く声が耳に響く。


「逃げてなんかいません。師団長に呼ばれていて・・・時間に遅れているので、急いできただけです」
 リンジェーラは逃げたくて堪らなかった。チョーカーには獣人が嫌いな匂いを仕込んでいたが、血が滲んだ事で効果に不安がよぎった。あの時を思い出し、身体が震えだしてしまいそうだ・・・。


「そうか・・・先程はうちの団員が申し訳なかったな・・・。俺が傷の手当てをしてやろう」
 団長は強引にリンジェーラの腰を引き寄せた。手だけは死守しようと、治癒魔法を速攻で自分にかける。しかし、傷は治っても血は消えてはくれない。


「やッ、やめて下さいッ、離して、傷はもう治しましたからッ」
 リンジェーラは、腕をひっぱられ、バレてしまう恐怖に涙目になった。


「レナード、無理強いはやめろ」
 ゾディアス様も、追いかけてきてくれたようで、団長の肩を掴みリンジェーラを離すように言ってくれた。しかし団長は口角を上げた。


「ほう・・・俺に指図するのか?」
 2人は睨み合い、間には不穏な空気が流れる。騎士団長は白虎の一族の上位種で黒虎の獣人だ。


 2人が争えば大惨事になってしまうと思っていると、ドアが内側から開いた。


「魔導師団の詰所前で誰が騒いでいるのかと思えば・・・何をしているのですか・・・」
 ドアが開けられ、師団長が顔を覗かせた。リンジェーラに回された団長の手を見ると、眉間に皺を寄せる。


「その子はウチの専属だ・・・手を出すのは許さないよ」
 普段温厚な師団長が、リンジェーラが聞いたこともないような声色で忠告を言い放つ。


「・・・どんだけ箱入りなんだ。だがな・・・説明してもらわないといけない事ができた・・・。この娘と俺も邪魔させてもらおう。もちろん、風通しがいいところでな」
 団長は、師団長が了承するまで、リンジェーラの腰から手を離そうとしそうになかった。


「いいでしょう・・・話だけ聞いてあげます。質問に答えるかは内容次第です」
 師団長が仕方なしに了承すると、リンジェーラの腰に回されていた手が離れて、今後は師団長に腰をひきよせられた。
 

 ゾディアス様が何か言いたそうだったが、リンジェーラは今の状況に耐えるだけで精一杯だった・・・。
 師団長が来てくれた事で、状況が最悪ではなくなったと安堵したが、身体の震えがでてきてしまい、師団長にそのまま寄りかかってしまうのだった。


 
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