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2.救世主
しおりを挟む10歳の初潮が来たあの日・・・。孤児院で、お祝いにハンカチを貰った後、街で花売りの仕事をしていた。
いつも、花を売っている時は、特に近寄ってこないはずの獣人達が近づいてきた。そして、リンジェーラの匂いを嗅いできたと思ったら・・・路地裏に連れ混まれたのだ。
いきなりの事に、リンジェーラは驚きと恐怖で動けなかった。幼いということもあり、獣人達は手を出してくる事はなかったのだが、至る所の匂いを嗅がれたのだ・・・。
途中でなんとか逃げだそうとして脚を擦りむき、リンジェーラが落としたハンカチで獣人の1人が血を拭った。だが、その獣人は怪我をしたリンジェーラの脚の傷を舐めだした。
その時、獣人達は血に反応しているのだと理解した。そして、血を舐めている獣人が、自身のズボンに手をかけようとした所・・・勢いよく横に吹き飛んだ。
「「俺の娘(妹)に何してるッ」」
2人の男の人がリンジェーラの元に駆けつけてきて、獣人達を魔法で吹き飛ばし、助けてくれたのだ。
それが今の父と兄で、彼らは私の救世主だ。父と言っても、実は母の兄で叔父らしかった。兄は従兄弟という事になる。
見た目も母と似ていて、髪色も母と同じ金髪だ。
母の出生が貴族だと聞いてはいた・・・。父も貴族だったと言っていたが爵位が低くく、母は父よりも身分の高い家へ嫁ぐ様に言われ、2人の仲を認めてもらえなかったので、駆け落ちをして平民になったらしかった。
母や父の結婚を反対していた祖父が亡くなった事で、母達を探し始める事ができるようになったと聞いた。
娘を残して、母達は既に他界していた事を知り、私を絶対に自分の家族にすると、孤児院の居場所を突き止め向かっている所だったようだ。
馬車で孤児院に向かっている際に、母の幼い頃とそっくりな娘が花を売っているのを見て、馬車を止めた際、路地裏に連れ込まれるのを見てしまい、馬車から駆け出したと話してくれた。
そして、その日直ぐに孤児院で手続きをして、叔父は新しい父になった。
宮廷薬師をしている父の家には、植物がいっぱいだった。数日は獣人への恐怖で部屋に引きこもったが、父や兄が沢山の薬草や、ハーブを周りに置いてくれ、獣人が嫌いな匂いだと教えてくれた事で庭に出れるようになった。
庭にはハーブが沢山だったから、安心できた。
それに、伯爵家の使用人は全て人族だ。獣人が嫌いな匂いが多く普段から寄り付かないらしかった。
獣人はハーブの匂いが駄目だと知ってから、自分で率先して世話をしたり、調香してみた。
父は、リンジェーラのために新たなハーブ園を作り、真ん中に大きなユーカリの木を植え、その横に二階建ての調香小屋を作ってくれた。小屋というには、勿体ない庶民の一軒家だった。
小屋の周りの壁を自分で白く塗り、自分で道のタイルを塗ったりして、カラフルにしあげた。
そうして、気を紛らわて日々を過ごした・・・。
そして、私が安心できるように、父はさらに、さまざまな柑橘系の木を庭にたくさん植えてくれた。私が柑橘の果物が好きだと言う事にして・・・。
今もその嘘は続き、常にハーブと柑橘系の匂いをまとっている。
本当は、獣人を遠ざけるために・・・。
私を助けてくれた彼らは、安心できる新たな居場所を与え・・・知識を与え、私の救世主達は家族になったのだった。
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