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プロローグ
しおりを挟むリステュール大国には、多くの獣人が存在し、人族と共存して生活している。
獣人を虐げ、異端だと受け入れていなかった国々の中で、リステュールは獣人達と歩む道を選び大国となった。
建国王の愛する者が獣人であったためと伝えられているが、獣人と人では子が出来にくく、今の王家には獣人の血は混じっていない。
それでも、獣人は自分達を受け入れてくれた国に対し、礼を尽くすため、王家に仕えるものが多かった。
都市部には獣人が多く、今も国の守護者として宮廷騎士団の役職を担っていたり、種族の特性を活かして補佐や探索など様々な仕事をしていた。
彼らは、人族と共存する中で、人族に近い形態になっていった。20歳までに耳や尻尾が退化し、完全に人化する。人化すれば見分けは付かない。
獣人と人の違いをいうならば、獣人は五感が鋭く、身体能力がずば抜けていたが、魔法は使えなかった。大抵の獣人は騎士団に属し、身体能力を生かした仕事をする。
人族は魔法が使えるため、優秀な者は、宮廷魔導師団に属していた。
獣人は、匂いを嗅ぎ、相性を確かめ、番を選ぶ・・・本能に従う種族だ。また、獣人は愛情深く、獣人に見染められ番う者は、大切にされるため、人族の女性は番に選ばれたいと望む者が多かった。
だが、獣人と人では子が出来にくいため、種を残すという本能が勝る獣人は、子ができない場合、人族が唯一無二の番になる事はあまりなかった。
獣人同士で番ばいいのだが、獣人は退化したのが原因か、女児より男児の出生率が格段に高く、男女比に差がつくようになっていた。現在番えない者が多く、獣人の数は少なからず減ってきているのだ。だからか、この国の女性の考え方には、獣人の子を孕めば、その相手の番になれると考え、安易に身体を差し出す傾向にあるのだった。
騎士団には所属する7割が獣人で、騎士団長は白虎の一族。副長を務めるのも白狼の一族だった。2人は建国時から国に忠誠を誓った一族で侯爵の爵位があたえられており、人気の獣人達だ。
本当は獣人から、好かれる匂いをもつリンジェーラだが、ある理由で、獣人が嫌悪する匂いをまとっているため、獣人がいると衝突も多く、よく副長のゾディアスが間に入る事が多かった。
獣人であるゾディアスは、他の獣人と違いリンジェーラに対し態度を変えなかった。そんな副長と接していく事で惹かれている事に気づきながら、獣人に対するリンジェーラの心境は変化していく。
だが、ある事が原因で疑惑が生じていく事になるのだった・・・。
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