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70.騒動後
しおりを挟む殿下達の婚約騒動が終わり、やっとキール様と2人の時間が過ごせると思っていたが、その時間はなかなか訪れなかった。
まだまだ、殿下達の騒動は続いていた・・・。
主に今度は、他の令嬢達との関係らしい・・・。今まで殿下が婚約者を決めずに夜会などのパートナーを、婚約者候補として扱っていたための付けがきたのだと、シェリー様は言われる。
しかしそれは、殿下ではなくシェリー様に向けられたものになった。ごく数人ではあるが、シェリー様に抗議が来たのだ・・・。
殿下は初めから、心はシェリー様にだけあったと謝罪したまではよかったのだが、シェリー様が殿下の心をわかっていて、殿下を弄び、令嬢達の貴重な時間を奪ったと責められたらしかった。
もちろん、そんな事はないと言った所で彼女達は納得しない・・・。
彼女はそう思ったのかもしれないが、なぜシェリー様の責任になるのかシルフィには理解できない。
好きな人の気を引くためには自分の時間を与えないといけないし、与えたからと好きになってもらえる保証などないのだから・・・。ならば最初からパートナーを彼女達は断るべきだったのだ。
賢い令嬢達ならば、そのよう事は言わない方が悪評もたたず、次のパートナー探しができるというのに・・・。
抗議した令嬢の数名は、本当に殿下の婚約者の座を狙っていた者達だったのかもしれないが・・・。だからとシェリー様に責任を取らせるだなんて有り得ないことだった。
だが、そのあとに続いた言葉で、目的が違うことがわかったらしい。
令嬢の1人が、責任として、殿下の代わりに、パートナーとなる素敵な人を、紹介してほしいと言われたのだ・・・。
シェリー様に自分の兄、次期公爵であるユーシス様との仲をとりもてということらしかった・・・。
随分と図々しい内容であったが、抗議に来た他の令嬢達も同じような感じだったらしい。
さすがに、シェリー様と殿下はこの件に関して、話は聞いたが取り合わなかった。分不相応な物言いに逆に令嬢達に悪評がつく事になるのだった。
「大変でしたね・・・」
シェリー様の話を聞いてシルフィは労いの言葉をかける。
「本当にね・・・図々しすぎて、兄に直接冷遇してほしいと話してしまったわ」
「まあ、ユーシス様にですか。でも、女性に優しいユーシス様に冷遇するなんて態度がとれるのですか?」
女性には常に優しいと噂の公爵令息だ・・・。
「お兄様は私の味方だから、必ずしてくれると思うわ・・・。兄は優しくて、デュークよりも王子様らしいとは思うけれど、令嬢達に冷たくする方が面倒って考えてるところがあるだけだろうし、優しい方が何かと社交会では使えるからね。それに、そういう仮面があった方が、兄が好きな人に近づきやすいんでしょうしね」
「ユーシス様にも好きな方がいらしたんですね」
「まあ、誰かは内緒だけどね。兄を理解している人なら観察してたらわかるわ。お母様も気づいてるはずだし。それに、無愛想だったら、父みたいっていわれるから嫌なんでしょうね・・・。昔から父に似ているって言われてるから」
ユーシス様には、シリウス様に似ているというのは言わない方ががいいようだ。自分も気をつけようと思った。
***
その後、シェリー様と殿下は無事に婚約し、学園を卒業後に結婚となる事になった。もちろんシルフィもだ・・・。キール様とはあれから順調に逢瀬を重ねて、ぎりぎりの範囲で触れ合いもして結婚まで頂くのは我慢してもらうのだった。
学園を卒業後、殿下とシェリー様はご結婚され、シェリー様は皇太子妃になった。殿下が国王になるのは、もう少し後らしい。
シルフィも学園を卒業後、キール様と一緒になり侯爵家を継いだ。シルフィはすぐに懐妊し、キール様に似た男の子を産んだ。髪色はシルフィと同じで、大きくなるにつれて理知的な子になった。
父は宰相として活躍しつつ、今度は自分の孫に宰相を譲る気で孫への教育に力をいれていて、シルフィの周りは幸せが至る所に溢れているのだった。
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