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68.最終対決
しおりを挟むキール様と殿下は、顔を見合わせた。
地竜が地面を揺らして、氷を割り地上へ這い出てきた。キール様は効果は弱いが氷属性の魔力を剣に纏わせて斬りかかって行く。
効果は弱いが、ある程度は効いているようで、攻撃を受けた後は動きが鈍くなっている。殿下は、全身に魔力を纏わせて、身体強化をしつつ地竜の弱点を探しているようだ。
シリウス様とリーディア様は、宣言通り手出しはしようとされず周りに被害がないように手助けだけされている。
しかし、リーディア様は心配されているようだ。
「地竜はこの地では姿を見たことがなかったから、あの子は弱点を知らないはず・・・大丈夫かしら」
「戦いながら気づくさ・・・。窮地に立てば感覚は研ぎ澄まされる。でなければ、それまでだ」
シリウス様は相変わらずのいいようだ。
「意地が悪いですね」
「ディアが甘やかして良いのは、私だけだからな」
シリウス様はこんな場でも、リーディア様と甘い雰囲気になろうとしている。逆にその雰囲気をつくれるのは、特技なのかと思う感心してしまうほどだ。
「お母様は、お父様を甘やかしすぎですッ。大切な勝負の最中に、そんな甘い雰囲気を出すなんて、信じられません」
シェリー様は真剣に殿下を見ながら、不謹慎だと注意される。
「そうね・・・シリウス様、おふざけが過ぎます。シェリーには大事な人の勝負なのですから、真面目にして下さい」
シリウス様は腰に回された手を、渋々解かれる。
甘い雰囲気は回避され、キール様に集中する。周りは大半が避難しており、この場にいるのは戦い慣れている者達の姿だけのようだ。
キール様はどうやら注意を殿下に逸らじてもらいながら、隙を伺い狙っているらしい。戦いを見ても、何をするつもりかはシルフィにはわからなかったが、リーディア様が解説してくれる。
注意を逸らし、弱点の一つである目を狙っているようだと・・・。だが地竜も、自分の弱点は理解しているようで、尾で攻撃を回避したりしていた。
地竜は頭も悪くないため、戦いなれていないと体力だけが削られていくらしい。弱点がわかっても、当たらないと倒す事はできないがどうするつもりだろうか・・・。
キール様が氷魔法で動きを鈍くして、殿下が尾を剣で受け止めた。再度キール様が氷魔法を纏わせた剣で目の片方を貫いた。
地竜は、片目を潰されて殺気立ち、尾で殿下を薙ぎ払う。殿下は飛ばされ、片膝を着きながらも、体勢を整えまた地竜に向かっていった。
片目を潰されて視界が狭くなった方から、地竜の頭上に飛び、地竜が口を開いた所に剣を突き立てた。
「キール!」
殿下はキール様の名を呼ばれる。
キール様は心得ていたようで、直ぐに剣目掛けて雷の魔法を放つという連携プレイを行った。
地竜の弱点は口の中もだったようで、魔法が効いたのか一撃で動かなくなった。
魔法が放たれる際に、殿下はタイミングよく離れたため魔法は当たらなかったが、剣を突き立てるときに地竜の牙に触れたのか腕を怪我していた。
地竜が力尽きたのが確認され、シェリー様は殿下に駆け寄り、治癒魔法をかけられるのだった。
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