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67.異変

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 立て続けに何度も、雷が天から落ちる。段々と振動が強くなり此方に近づいてくるようだった。
 周りの人達も察したようで、顔から危機感を感じているのがわかった。

 特に、討伐から帰ってきた者達は、何やら知っているのか話をしており、辺境伯へ報告に行くような事を言っているのが聞こえてきた。


「何かあったのでしょうか」
 シルフィは彼らに近寄り、情報を求めた。


「実は、先程立ち入り禁止の洞窟があったんだが・・・そこからでてきた奴がいて、何か慌ててたんだ。問題があったとしたら、そいつが何かしたせいかもしれないと思うんだか」
 確かに、立ち入り禁止の場所なら、何かありそうだと考えるのが普通だろう。


「洞窟は立ち入り禁止とは聞いてはいたが・・・何のために禁止されているかは聞いていなかったから・・・好奇心のあるやつが入って事がおきたのかもしれない。そういうわけだから、辺境伯へ報告しに行ってくる。何かあると行けないから騎士達の側にいた方がいい」

 彼らはそう言い、屋敷の方へ向かって行った。


「シェリー様、彼らのいうように、移動しましょう」
 シルフィはシェリー様に声をかけた。


 その間にも振動は近づいてきている。視界の端にキール様が見えた気がして、そちらに目を凝らした。

 キール様の姿を捉える前に、すぐ近くに振動が来たかと思うと、足元の地面が窪む。地面の下に何かいるのだと、理解したときには地面が崩れていった。


 キール様のシルフィを呼ぶ声が聞こえる。


 シルフィは地面か崩れる浮遊感に、咄嗟に練習していた魔法を発動した。
 自分だけではなく側にいたシェリー様の手を引いて、地面に飲み込まれないように、なんとか身体を風魔法で浮かせることができた。

 地面が崩れ、土の中に大きな口を開けた生き物がいた、落ちていたらと思うと血の気が引く。それはシェリー様も同じようで、顔面蒼白だ。


 キール様が地面に向かって氷の魔法を放った。


 穴が氷で埋まったが、土の中の生物は動いている・・・。キール様と殿下がいる方に移動して、その場を離れた。

「大丈夫か」
 キール様が、片手で抱き寄せるように受け止め地面に下ろしてくれる。シェリー様は殿下が抱きとめる。


「はい。なんとか・・・」
 大丈夫と返事をしたかったが、身体が、声が震えた。


「大丈夫とは言えないようだな・・・あれがまた動き出す前に、ここを離れろ・・・アレは地竜だ。雷は奴には効かない・・・鱗が弾く。氷は鈍らせられるが仕留められはしない」
 キール様は歯痒そうに顔を顰められ、シルフィの頬を撫でる。


「全力でやるが・・・、危険なこの場には居させたくない。シェリーと場所を移動してくれ」
 キール様は不甲斐なさそうにされていた。地面の中にいるため、どこが安全かわからないが、とにかくキール様達が戦いやすいように、この場を離れなければと思った。


「彼女達は私に任せておきなさい」
 そこへ、リーディア様がシリウス様と転移魔法で現れる。リーディア様はとても凛々しい出立ちだ。

「アレはなんとかしろ・・・お前達でな。」
 シリウス様は、難題を二人に指示され、傍観の姿勢だ。リーディア様には戦わせまいと、リーディア様の腰に手を回して、捕まえているようだ。


 これが、討伐戦での二人の決着になりそうだ。地竜にはキール様の魔法は効果が殆ど効かない。殿下との勝負はいつの間にか公平な条件になっていた・・・。地竜を目の当たりにした者としては、不安が募る。

 できれば、もっと安全な対決方法にしてほしいと・・・。


「あなた達は、私とシリウス様が守りますから、彼らの勇士をしっかり見守っていてあげてちょうだい。お姫様を守るナイトは、世界で1番強いって決まっているのだから」
 リーディア様は私たちに聞こえるくらいの声で囁かれるのだった。

 
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