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53.提案
しおりを挟む上から見ていた事に、シリウス様は気づいておられた。キール様が呼ばれ、一緒に下に降りる。
シェリー様は、シルフィに見られていた事を、気にした様子はなく、巻き込んでしまった事を申し訳なく思っているような表情をしていた。
「チャンスはキールとの勝負だ。勝てば婚約を認めてやる。キールと互角でもなければ、シェリーは託せない。守るためには、様々な力が必要だ。地位は初めからあるからクリアだが、時には知力、度胸、非情さ・・・も必要になるだろう。物理的な力だけが必要な訳ではないが、示すには1番わかりやすいだろう」
シリウス様は、自分の子に戦えと言ってきた。シルフィには理解できない考えだ。
「待ってください。私はキール様の婚約者として・・・キール様が人を傷つけるための決闘はしてほしくありません」
今のシルフィはきちんとしたキール様の婚約者だ。意見をいう権利はある・・・。
普段ならこんな状況で意見など言えないが、キール様が望まない事をさせられるなら止めたかった。
「ほう・・・ならば、このチャンスはなくなる」
シリウス様は非情な事を言われる。シェリー様がじっとシルフィに視線をむけるが、怒りは伝わってこなかった。
「私はキール様に人を傷つけてほしくありません・・・。しかし、人を傷つけないのであれば、勝負をしてもいいと考えます。例えば・・・2人が剣を向ける対象が人ではないものなら・・・認めます。奇しくも今の時期は辺境伯から余興の手紙が来ていましたから、其方で勝負をしてはどうでしょうか」
宰相である父から参加をどうするか聞かれていた・・・。行った事はなかったが、丁度よいのではないかと思い提案する。
「キール・・・。お前の婚約者は実に賢いな・・・実は私も同じことを考えていた」
シリウス様は、先程とは違い、満足そうな笑みを浮かべられている。
「同じこととは・・・どういう事でしょう」
シリウス様は、2人を戦わせるつもりだったのでは、なかったのだろうか・・・。
「私は初めから2人で決闘をしろなどとは言っていない・・・ということだ。どのようにとらえるか、意図的に言葉は選んだがな」
シリウス様は、誰がどう反応するか試していたのだろうか・・・。自分とキール様の婚約は了承されたが、認めるられる婚約相手にはなっていなかったのかと考える。
「勝負はあちらでの魔物の討伐・・・どちらが大物を仕留めるかだ。数にすればキールが有利だからな・・・」
「では父上・・・辺境伯へ参加の返事をお願いします。シルフィ嬢も一緒に来てくれると嬉しい・・・」
「はい。まだ返事は出されていなかったかと思いますので、父に話をしておきます」
辺境伯領での勝負・・・提案をしたのはシルフィだ。それにキール様が関わるのだから、しっかり見届けようとシルフィは思うのだった。
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