好きな人は姉への求婚者!?〜魔導騎士編〜【完結】

ドール

文字の大きさ
上 下
50 / 72

49.2人の時間

しおりを挟む


 姉達と別れ、庭のガゼボにお茶の準備をしてもらったので、久々にゆっくり2人で話をする事にした。


「シルフィ・・・身体は、もう大丈夫か?」
 キール様は、身体を気遣ってくれる。あの次の日には来てくれていたみたいだったが、姉に追い出されたのだと話してくれた。


「大丈夫です。起きたら、足に力が入らなかったくらいで、次の日はなんともありませんでした。ずっとお姉さまが追い返していてすみません」


「大丈夫だ。君の婚約者だからな・・・追い返されても毎日行くよ。次の日には普通に過ごせるだろうと母が言われていたが、シルフィは母の時より若いからな、この目で顔を見るまで心配だった」
 キール様はシルフィの頬を撫でる。


「ご心配おかけしました。あの・・・キール様のお母様もご経験があったのですか?」
 聞いてはいけないかもしれないと思ったが、気になり聞いてしまう。

「ああ・・・、母もあの魔物と遭遇し、父に介抱してもらったと聞いた」


「そうなのですね・・・お二人はそれが縁なのですか?」


「母の兄、私の叔父でもあり、騎士団のジルベルト=フォード公爵と父はライバルだったんだ。剣術と魔法でお互いトップにいる2人だ。初めはライバルの妹くらいにしか思っていなかったようだが、母は父が好きだったようで、頑張ったと言っていたな・・・。だがライバルと妹が婚約して、父はシスコンでもあったから、激怒したようだ。それまでは母にはある程度緩和した態度だったようなのだが・・・態度が冷たくなったと聞いた。そんな時に遭遇した魔物だったようだ。父が母への好意はあったみたいだが、自覚はしていなかったらしい・・・父は鈍いからな。母の前では、今は溺愛という言葉が似合うくらいだがな・・・」
  キール様は苦笑いされる。

 たしかに、公爵家でみた2人は、そんな感じだったなと思う。シルフィが恥ずかしくなるくらいには・・・。


「それで、よくいる魔物なのですか?」


「いや、魔法しか効かないタイプで、現れるのは稀だ。花畑があれば必ず根絶やしにしなければ、生命力が強いから、また被害が出る。まさか、あの場所で群生しているとは思わなかった。母が仕方ないとはいえ、一帯を焼き切ったからな・・・残念がっていた」


「そうですね。せっかく教えて頂いた場所でしたのに、残念です」
 あの景色を思い出し、少し寂しい気持ちになった。


「今度は教えて貰った場所ではなく、2人の場所を見つけに行こう」
 キール様は、座っていた椅子から、身を乗り出してシルフィに軽く口付けた。


「それで・・・致し方なかったとはいえ、俺とした行為は嫌ではなかったか?」
 

「えっ!?」
 キール様は、いきなりあの日の行為について聞いてくるのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。 既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。 未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。 後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。 欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。 * 作り話です * そんなに長くしない予定です

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく

おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。 そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。 夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。 そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。 全4話です。

処理中です...