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41.遠乗り
しおりを挟む婚約式が無事に終わり、キール様から連れて行きたいところがあるからと、遠乗りのお誘いがあった。
キール様は馬に跨がられ、手を差し伸べてくる。手を引いて引き上げられ、横抱きで座らされた。
キール様の力は強くて、軽々と引き上げられる。馬に乗ったことはないため、この乗り方にはさすがに驚いて、声がでてしまった。
馬に乗ってはじめての感想は、思ったより高くて怖いと感じた。見るのとでは違い馬は大きく、がっしりしていて驚いた。
キール様の愛馬は黒い毛並みでとても艶があり、凛々しく大人しいようだった。シルフィが怖くないようにじっとしてくれているようだった。
この場でもお姉様達は、先にシルフィを抱えて乗せた方が怖がらせなかったのではないか、絶対に怪我をさせないように注意するようにキール様に言っていた。
「きちんと無事に送り届け下さいね。婚約したからと手荒にされては困りますからね」
リズリーお姉様は女性の扱い方については厳しい。
「もちろん、承知しています。遅くならないうちに、かならず送り届けます」
「怪我にも気をてけてくださいね。馬から落とすなんて事もないようにお願いしますわ」
「はい。決して離しませんので」
キール様は姉の小言にちゃんと対応してくれる。
「それから」
「お姉様!もう十分です。キール様は私を大事に扱ってくれますから、そんなに心配されないでください。キール様は信頼できる方なんですから、お任せして大丈夫です」
「でも・・・一応言っておかないと・・・」
姉はしゅんとしてしまった。
「姉上達は、シルフィが大切で仕方ないようだ。心配するのもわかるから、私を庇ってくれて嬉しいが大丈夫だ。ありがとう」
キール様はシルフィの姉を気遣い言ってくれる。
「キール様は優しんですから・・・」
姉の事を気遣い、シルフィの気遣いにも嬉しいと言ってくるキール様の優しさに胸がときめいた。
「・・・そんなとこも、好き」
シルフィは誰にも聞こえないくらいの声で呟いた。
「では、遅くならないうちに行きます」
キール様は、シルフィに捕まるように言い、出発した。
丘の辺りにくると、少しペースをおとされる。
「耐えられそうか?そこまで遠くは無いのでゆっくり行こう」
「はい。大丈夫そうです。クッションまで準備して貰ってますからキール様に捕まってれば安心です」
今日は軽装で来ていたため
「それはよかった。シェリーが気を遣ってくれたんだ。自分が乗った時は痛かったそうだからな・・・殿下に連れまわされたらしい」
あの殿下なら、女性に配慮する発想が足りないのも納得する。
「それと・・・先程の返事だが・・・」
「返事?」
シルフィは、何か質問をしただろうかと、首をかしげキール様を見上げた。
「・・・俺も、好きだ」
キール様がシルフィの耳元で囁いた。
「きっ、聞こえて・・・」
先程シルフィが小さく呟いたのを、キールの耳はひろっていたようだ。
「もちろんだ・・・」
キール様は馬の歩みを止め、俯いたシルフィの顔をあげさせて口付けて来た。
「んッ」
キール様からのいきなりの行為に戸惑いながらも、婚約者になったのだから、拒む理由もなく受け入れる。
口付けを受けながら、キール様への好きな気持ちが高まるのを感じた。馬上だという事も忘れて長らく口付けを交わすのだった。
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