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34.婚約の了承

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 部屋をノックしたのは姉達だった。シルフィはドレスを整えて鍵を開けた。

 いきなりキール様が、シルフィの部屋に侵入した事を怒っている様子だ。
「いきなり、妹の部屋に侵入するとはどういうつもりですのッ」

 1番怒っているのはアメリアお姉様だった。


「魔法まで使うなんて・・・」
 けれど、シルフィの表情を見て姉は口煩く言うのをやめた。


「どうやら・・・良い返事が貰えたのかしら?」
 リズリーお姉様がキール様に話しかけた。


「伝えましたが、了承はまだです。もう少しだけ時間を頂けますか?」


「仕方ないわね・・・。こんな時間ですから、早めにして頂戴。フィー、話がついたら応接室に一緒にいらっしゃい」
 リズリーお姉様は渋々了解され、出て行かれた。


 キール様はシルフィの前に来て、膝をつく。
「先程の返事を頂いてもよいだろうか」

「返事・・・?」


「・・・求婚したいのは君にだと、言ったのだが、その返事がほしい」


 シルフィはキール様が言った事を理解して顔が赤くなった。


「えっと、あのっ、本当に私でいいのですか?」
 

「勿論だ。俺が求めているのはシルフィだと示したつもりだが・・・足りなかったか?」
 キール様は先程までの事を言っているのだろう。シルフィの手を取り口づけてくる。

「だっ大丈夫ですッ、充分・・・・・・伝わりました」
 シルフィは赤くなり、目を伏せる。


「そうか、俺はまだ、伝えたりないが・・・」
 キール様は、シルフィの手に口付けながら見上げてくる。

「キール様ッ、揶揄わないで下さい」

「では、求婚を受け入れ、俺と婚約をするのを了承してくれるか」
 じっと見つめられる。

「はい・・・」
 シルフィは恥ずかしげに微笑んで返事をした。


「・・・ありがとう、絶対に大事にする。では・・・姉上達に報告しに行こうか」
 キール様にエスコートしてもらい、応接室に向かう。


 姉達と父が応接室で待っていた。父は少し怖い顔をしている気がする。
「話はついたようね」
 姉はキールとシルフィの顔を見て言った。

「「はい」」

「それで?」

「無事了承して貰いました」

「キール様のお申し出を受けたいと思います」
 2人は顔を見合わせる。


そこで父が口を開く。
「キール殿は、娘とどのように婚姻されるおつもりか?あちらの公爵家をつぐのは兄であろう。うちの侯爵家に婿入りされる気はあるのか?」

「私は公爵家を継ぐつもりは、もとよりありません。優秀な兄がいますから、結婚して子ができれば家督は兄になります。婿入りは可能ですが、自分は当主としての教育は受けてはいません」


「ならば、当主の仕事はシルフィールでも問題はないな」


「宰相の自慢の娘さんでしょうから、負担でなければ」
 キール様はシルフィの様子を伺うように視線を向けてきた。


「キール様は嫌ではないのですか?女が仕事なんて・・・」
 男性からしたら、女性が仕事をするのを嫌がるのが普通だ。


「得て不向きがあるからな・・・シルフィが得意な事は任せるよ。一緒に学ばせてくれ。あまり役にはたたないかもしれないが・・・努力する」


「キール様・・・ありがとうございます。よろしくお願いいたしましす!妻として私もキール様に尽くします!」
 シルフィは嬉しくなり、つい強気な発言をした。

 姉達はシルフィが幸せそうで、終始温かくみつめるのだった。
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