31 / 72
30.家族会議
しおりを挟む夜会での出来事は、そうそうに姉達の耳にも入り、家族会議になった。珍しく父も揃ってだ。
「シルフィール・・・夜会での出来事は聞いた。お前の幼馴染のカイルの事も然り、殿下の事も噂になっている。詳しくお前の口から聞こう・・・」
父は怒ってはいないが、振り回されたようで、疲れ切っている様に話を切り出した。
「夜会には、今回キール様がパートナーとしと参加して下さいました・・・カイルは、断っていたのにも関わらず会場でも話しかけてきて・・・追いかけられてしまったので、指輪を使いました」
「キール様がいたのに追いかけられたのッ!?」
アメリアお姉様がつっかかってくる勢いで反応した。
「えっと、いろんな方々に囲まれてしまっていて、ひきはがされてしまって・・・キール様が守ってくれていなかったわけではありません。不意をつかれただけで」
「でも・・・フィーが危険な目に合うのを防げなかった訳でしょう」
姉達は顔を見合わせている。
「そうかもしれませんが、はぐれた後も、見つけ出してくれましたし、彼と決着がつけられたのもキール様のおかげだと思います。カイルに怯まずに言いたいを言えたのは、キール様が側にいてくれたからですから・・・」
またしても姉達は顔を見合わせている。
「キール様がカイルに何か言ったんじゃないの?」
マライヤお姉様が聞いてくる。
「言ってもくれましたが、私にも言わせてくれました」
シルフィは自慢げに返事をする。
「・・・守ってくれるだけじゃなく、シルフィ自身できちんと見切りをつけさせてくれる・・・いいんじゃない?」
「守るだけが男じゃないわよね、戦わせてくれる男ってのも、この子には必要だったのよ」
「ん?」
シルフィは姉達が何のことをいうのか意味がわからなかった。
「私達の意見は賛成とするでいいわね」
リズリーお姉様がそういうと、アメリアお姉様、マライヤお姉様は頷かれた。
「お父様、キール様は合格ですわ。求婚を許可します」
リズリーお姉様が言われた言葉で、シルフィは言葉失った。
「そうか・・・お前たちが認めると言うのが第一条件だからな。後は彼次第だな」
父も賛成のようだ。姉達が許可した・・・キール様の求婚を姉達は受ける気になったという事だ。キール様の今までの行動が姉達に試されていたものだったということに、シルフィは絶望した。
あとは、彼次第だと父は言った・・・キール様が、どの姉を求めるのか・・・何も考えたくなかった。
只々、姉達に今度は本当に裏切られたと思い、シルフィは席を立った。無言で部屋を後にし、逃げる様に自室に戻り鍵をかけベッドにダイブした。
最初からわかっていたはずだった。キール様は姉達の誰かに求婚をしに来ていたのを・・・。それを自分がキール様を好きだからと姉に相手をするのを、代わってもらっていただけなのに・・・。
姉達は私に彼を振り向かせるための時間はくれたが、結局は彼を求婚者として認めてしまった。
シルフィに対しての返事としては、もう時間は終いだと・・・。
キール様がどの姉を好いていたのか、知りたかったが・・・今はもう知りたくもなくなっていた。
キール様はシルフィといる時は姉達の話はしなかった。シルフィだけを相手してくれていたと感じるが、目的は違う。
シルフィがどんなに頑張ろうと、キール様の心を変えることはできないのだと・・・。次にキール様が来た時にはきっと、求婚を了承することを話されるだろう。もう、キール様には会いたくないと思ってしまった。
姉達の誰かが、キール様の隣に立って、見つめられている姿が浮かぶ。
姉達がやってきて、ドアをノックし何か言っていたが、耳を塞いで、聞こうとはしなかった。それだけ、姉達の声をききたくなかったのだ。
姉が去って、シルフィは泣き疲れて眠ってしまうのだった。
0
お気に入りに追加
335
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結済】姿を偽った黒髪令嬢は、女嫌いな公爵様のお世話係をしているうちに溺愛されていたみたいです
鳴宮野々花@軍神騎士団長1月15日発売
恋愛
王国の片田舎にある小さな町から、八歳の時に母方の縁戚であるエヴェリー伯爵家に引き取られたミシェル。彼女は伯爵一家に疎まれ、美しい髪を黒く染めて使用人として生活するよう強いられた。以来エヴェリー一家に虐げられて育つ。
十年後。ミシェルは同い年でエヴェリー伯爵家の一人娘であるパドマの婚約者に嵌められ、伯爵家を身一つで追い出されることに。ボロボロの格好で人気のない場所を彷徨っていたミシェルは、空腹のあまりふらつき倒れそうになる。
そこへ馬で通りがかった男性と、危うくぶつかりそうになり──────
※いつもの独自の世界のゆる設定なお話です。何もかもファンタジーです。よろしくお願いします。
※この作品はカクヨム、小説家になろう、ベリーズカフェにも投稿しています。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
恋に恋するお年頃
柳月ほたる
恋愛
王城で開催される舞踏会で社交界デビューを果たした伯爵令嬢・エウフェミア。
しかし予想外に殺到するダンスの申し込みに疲れ切って大広間から逃げ出した彼女は、迷った先で絵本に出てくる王子様そっくりの見目麗しい男性と出会う。
2日後に出征するという彼にすっかり心奪われてしまったエウフェミアは…。
素直で天真爛漫な箱入り娘と、彼女を手に入れたくて堪らない王太子様の、甘い恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる