29 / 72
28.出歯亀後編 *R18
しおりを挟むキール様が現れて、耳から手を外す。
「見つけられてよかった・・・心配した。だが・・・こんな所にいるとわな」
キール様は小さい声で話しながら、苦笑いされる。
「迷ってしまった様で・・・。こんな所に来てしまいました。見つけてもらえてよかったです。ここを動けなくて困ってしまって・・・」
「そうだろな・・・。あれを見たら、まぁ・・・そうなるだろう。さすがに驚いた・・・」
キール様は驚いたとは言われるが、表情は困った様な顔をされている。ちらりとシェリー様達がいる方を見られた。
まだあちらはあちらで、2人の世界のようだ。
「デュークッ、もうッ、いいかげんにして。唇が腫れちゃうじゃない」
「・・・別に嫌じゃないだろ。もっと堪能させないと、また触るぞ」
「でもッ、んんっ」
いつの間にかシェリー様はドレスをきちんと着ていたが、ベンチに座る殿下の膝にかかえるように座らされていた。
「はあ・・・やっとといった感じだが、見るのはきついから早くこの場からは去りたいところだな」
キール様はすぐにシェリー様達から視線を逸らした。シルフィも顔を伏せながら、キールの顔を伺い見る。
「キール様は・・・怒りはしないのですね。てっきりシェリー様に手を出されているのを見たら、斬りかかられるかと・・・」
「シルフィ嬢は、いったい私をなんだと思っているのかな?」
「・・・シスコン・・・では?」
「・・・そんな認識か・・・。だが、それは・・・違う。私は妹が好きな相手がまともなら祝福してやれる。シスコンは兄上とシエルの方が重症だ。恐らく、この後婚約になるまでが大変だろう」
「ユーシス様と、シエル様がですか・・・?」
「さらにいえば・・・父上もだろうな」
「シリウス様ですか・・・」
「幼い頃に皇太子殿下が、シェリーの髪をペンキで塗ってな・・・。髪を切らなくてはならなくなった。父上達はかなり怒って大変だったんだ。それから父上は皇太子殿下を目の敵にしている。恐らく、婚約は荒れるだろう」
「・・・殿下はなぜそのような事をしたのでしょう」
「あいつは、昔からシェリーの気を引きたくて揶揄ったりしていたから、その時も似たような理由だろう」
キール様が立ち上がろうとされた時、シェリー様が小さな悲鳴をあげた。視線をむけた先には皇太子殿下によって、ベンチに押し倒されているシェリー様がいた。
「やっぱり・・・我慢できない」
殿下はシェリーの首元に顔を埋めて、スカートの部分に手をかけようとしていた。
それ以上は、さすがにだめだと思っていたら、隣に居たはずのキール様の姿がなくなっており、殿下の背後に回られていた。
「そこまでだ。調子に乗りすぎるな」
「・・・キールか。わかったから、突きつけている刃物をしまえ」
キール様はいつの間にか出したナイフを懐へしまわれた。
「お前らの家系は物騒すぎるな・・・」
殿下はシェリー様を抱き起こして、立ち上がらせた。
「どこから見ていたかは知らんが、いい趣味とはいえんな」
「見たのは口づけあたりだ・・・人目がないとはいえ、お前こそ行動は慎んだ方がいい。お前のためじゃない、妹のために言っている。変な噂がたったら困るからな。そんな噂がたったものを皇太子妃にはできないぞ」
「・・・・・・そうだな、軽率だった。認める。次から気をつける。人目のないところでに」
殿下はいいかけるが、キール様はちゃんとした手順をふんでからいちゃつけと言われる。
「・・・お前みたいにか?そうなったら先は長そうだぞ。お前も、俺もな。特にお前より俺はかなり難易度が高い。手順ふむんだから、絶対に協力してもらうからな」
殿下はいいきると、シェリー様の腰に手をかけ連れ立って行かれた。
「今からが大変だな・・・私達も戻ろう」
キール様はため息を付くと、シルフィを立たせてくれ、会場へエスコートしてくれるのだった。
0
お気に入りに追加
335
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。
平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる