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25.ダンス
しおりを挟む殿下達が会場入りすると、会場の視線を集める。
シルフィは視線の多さに不安になった。キール様の隣に自分では相応しくないのではないか・・・、殿下の隣のシェリー様の様なドレスでも、やはり自分はダメなのではないかと・・・。
「どうした?」
キール様が声をかけてこられる。
「いえ・・・ちょっと」
「大丈夫だ。何かあれば守る。手を」
キール様は腕をさしだされ、エスコートする大勢だ。シルフィはキール様の腕に手をかける。
キール様と会場入りして視線を集めたが、キール様がしっかりとエスコートしてくれたので、安心でき耐える事ができた。
令嬢達の視線の殆どがキール様に向けられていたと思う。キール様は、黒で統一された服で、ワンポイントに金色と紫色の刺繍や装飾をつけており、いつもより大人びて見えた。
紫の刺繍は、シルフィの瞳の色と合わせてくれている。
皇太子殿下が会場入りした事で、ダンスのための音楽が流れ出した。キール様はシルフィの手を取りダンスを申し込んでくる。その自然な動作にシルフィは見惚れてしまうが、しっかりと手はキール様の手にひきよせられた。
キール様は目を細める。最近キール様が目を細め嬉しそうにするのが好きだ・・・。たまらない気持ちになる。
キール様のリードは完璧で、見惚れてダンスが疎かになっていたシルフィのミスもガバーしてくれた。
会場で、皇太子殿下とシェリー様が踊る姿も注目を浴びているようで、音楽以外の雑音が聞こえない。
シェリー様と並びドレスが舞う様に広がる。お互いの、ダンスの回転を逆にしているため、広がったドレスが重なり合うように見え今回のコンセプトの蝶の羽をイメージさせた。
気づいた者たちは、感嘆のため息をもらしている。
ダンスの最中シェリー様と視線が合い、にっこりと微笑まれた。
その瞬間なぜか、皇太子殿下が此方を振り返り、鋭く睨んできたと思ったら、シルフィの顔を認識すると、すぐに鳩が豆鉄砲をくらったような顔をし、安堵のため息をつかれた様子だった。
シルフィは皇太子殿下に睨まれ、驚いたが、なんとかダンスは止まることなく踊り続けられた。
ダンスの後に、先程ダンスに不自然な時があったがと、キール様に聞かれて、皇太子殿下の行動を説明したところ、何か理解した様で、言葉を濁された。
「そうか・・・まあ、勘違いしたんだろう。驚かせられたな」
勘違い・・・。殿下が何故睨んできたのか、その前の変化といえば・・・シェリー様が微笑まれた事・・・それを殿下は見られて、シェリー様の視線を振り返り睨んだが、相手はシルフィだった。ということは・・・シルフィは殿下の行動を考察し、察するのだった。
「はい・・・殿下の行動には驚きましたが、ダンスが踊りきれてよかったです。」
2人が話していると、殿下とシェリー様と近づいてきた。殿下はシルフィの耳元で、先程はすまなかったと言われた。
「いいえ、驚きましたが大丈夫です。お気になさらないでください」
シルフィも小声で返事をした。
シェリー様は何を話しているのか聞きとれずに、訝しげな顔をしていた。
キール様は、聞こえたようで、頷かれている。
「殿下・・・勘違いもほどほどに」
「わかっている」
「あら、何の話ですか?」
シェリー様が自分だけ理解できないため、聞いてこられた。
「別になんでもない・・・行こう」
殿下は、シェリー様をエスコートしようと腕をだされる。シェリー様の瞳が揺れたような気がしてシルフィは一歩前にでた。
「先程のダンスの事ですよ。このドレスがシェリー様とのダンスで見事にコンセプトの表現が出来ていたことをお褒め頂きました」
シルフィは咄嗟にそう説明し、皇太子殿下に視線を向けた。
「まあ、そうだな・・・。そういうことだ。お前達も夜会を楽しんで帰ってくれ。行くぞ」
殿下はシェリー様を促し離れて行った。先程よりはシェリー様が幾分かはよい表情ではあったのでよしとするのだった。
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