上 下
16 / 72

15.帰宅

しおりを挟む

 2人が盛り上がる中、リーディア様に離れた場所に手招きされた。

「ああなったら、中々話は終わらないの。私の娘なのにレティシアの娘みたいでしょ。落ち着くまで私と少し話でもしましょうか」

「はい」

 リーディア様はバルコニーの席に案内してくれ、2人より先にお茶を頂きながら話をした。

 
 話をしていると、急に地面が光って見目麗しいローブ姿の男性が現れた。リーディア様を見つけると、ただいまと抱擁され口付けられる。リーディア様は驚いた様子もなく、受け入れられ、おかえりなさいませ、シリウス様と微笑まれた。

 目の前での出来事に唖然として固まってしまう。帰ってきたシリウス様に気づいて、シェリー様とレティシア様がバルコニーにやって来て、またやってると呟いた。


「おかえりなさいお父様、怪我はありませんか?」
 シェリー様が今だ抱擁してある2人に声をかける。

「ただいまシェリー、この私が怪我をするわけがないだろう。父がいなくて寂しくなかったか」
 シリウス様はシェリー様にも抱擁しようとしたのか、手を広げて近づいて来られる。

「ならよかったです」
 しかし、シェリー様は華麗にかわされた。


「それで?お兄様は一緒ではないのですか?」
 シェリー様がシルフィも気になっていた事を聞いてくれる。

「キールは・・・少し手当てをうけて帰ってくる」
 シリウス様は少し言いにくそうに言った。


「えッ」

 シルフィは、キールが手当てを受けた事を聞いて、つい声を出してしまう。
 シリウス様が声をあげたシルフィに視線を向け、誰だと問いかけられた。


「ご挨拶がおくれてすみません。マクスウェル侯爵家四女、シルフィール=マクスウェルと申します」

「ああ、宰相のご令嬢か・・・。四女ということは、指輪を頼まれた娘だな」
 シリウス様は、指に視線をやる。

「今日は外しておりますが、普段は付けさせてもらっています」
 シルフィはシリウス様に見られて、緊張してしまった。  


「それより、キールは怪我をしたのですか」
 リーディア様がシリウス様へ不安気に声をかけた。シリウス様は対した怪我ではないと言われている。

 仲間を庇っての怪我だと言われていてるが、シリウス様は厳しくも、怪我を負わず仲間を助けられなかったのは奴の技量の無さだと言われていた。

 だからと言って、実の息子に対して冷淡すぎやしないかと感じる。
 シェリー様が横に来て、シリウス様は妻に息子より自分の方を気にかけてほしいから、いつもあんな感じなのだという。

「お兄様は相変わらずね・・・。さっさと夫婦水入らずで過ごしたいから、一人で戻ってきたんでしょうね」
 レティシア様がシリウス様の考えている事を考察する。
 

 そんな話をしていると、シリウス様はリーディア様と帰ってきた時と同じようにどこかに転移された。

「それで、いつもあんな感じにお母様を連れて、どこかに消えちゃうのよね・・・」
 シェリー様は呆れたように説明してくださった。


 バルコニーでは、リーディア様が居なくなったが、レティシア様とシェリー様でキール様が戻るまで話をしながら待った。
 昼前になり、馬車が門前で止まり、キール様が降りてきた。いつもは馬に乗っているが、怪我で乗れる状態じゃないのだと察する。

 キール様の横には、肩を貸すように女性騎士が居た。シルフィは、それを見て庇ったという仲間とは彼女の事だと思った。

 
 キール様が仲間思いなのはわかるが、シルフィは助けたのが女性だと知ると複雑な心境になった。しかし、それはすぐに解消される。ドアが開いてシエル様がキール様に近づいていき、なぜか、キール様を突き飛ばした。

 なぜ兄であり、怪我人にそんな事をするのかと怒りが湧く。シエル様の前に女性騎士が庇うように前に出て何やら口論になっていた。


 その様子を見て居たシェリー様が何やら呟いた。
「シエル兄様はお父様そっくりで嫌になっちゃうわ・・・。さあ、シルフィ嬢、キールお兄様をお出迎えに行きましょう」

 そして、シェリー様に促されて、キール様の元に向かったのだった。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

催眠術にかかったフリをしたら、私に無関心だった夫から「俺を愛していると言ってくれ」と命令されました

めぐめぐ
恋愛
子爵令嬢ソフィアは、とある出来事と謎すぎる言い伝えによって、アレクトラ侯爵家の若き当主であるオーバルと結婚することになった。 だがオーバルはソフィアに侯爵夫人以上の役目を求めてない様子。ソフィアも、本来であれば自分よりももっと素晴らしい女性と結婚するはずだったオーバルの人生やアレクトラ家の利益を損ねてしまったと罪悪感を抱き、彼を愛する気持ちを隠しながら、侯爵夫人の役割を果たすために奮闘していた。 そんなある日、義妹で友人のメーナに、催眠術の実験台になって欲しいと頼まれたソフィアは了承する。 催眠術は明らかに失敗だった。しかし失敗を伝え、メーナが落ち込む姿をみたくなかったソフィアは催眠術にかかったフリをする。 このまま催眠術が解ける時間までやり過ごそうとしたのだが、オーバルが突然帰ってきたことで、事態は一変する―― ※1話を分割(2000字ぐらい)して公開しています。 ※頭からっぽで

王女の影武者として隣国に嫁いだ私は、何故か王子に溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
王女アルネシアの影武者である私は、隣国の王子ドルクス様の元に嫁ぐことになった。 私の正体は、すぐにばれることになった。ドルクス様は、人の心を読む力を持っていたからである。 しかし、両国の間で争いが起きるのを危惧した彼は、私の正体を父親である国王に言わなかった。それどころか、私と夫婦として過ごし始めたのである。 しかも、彼は何故か私のことをひどく気遣ってくれた。どうして彼がそこまでしてくれるのかまったくわからない私は、ただ困惑しながら彼との生活を送るのだった。

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@10/25シーモア発売『王子に婚約
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

初恋をこじらせた騎士軍師は、愛妻を偏愛する ~有能な頭脳が愛妻には働きません!~

如月あこ
恋愛
 宮廷使用人のメリアは男好きのする体型のせいで、日頃から貴族男性に絡まれることが多く、自分の身体を嫌っていた。  ある夜、悪辣で有名な貴族の男に王城の庭園へ追い込まれて、絶体絶命のピンチに陥る。  懸命に守ってきた純潔がついに散らされてしまう! と、恐怖に駆られるメリアを助けたのは『騎士軍師』という特別な階級を与えられている、策士として有名な男ゲオルグだった。  メリアはゲオルグの提案で、大切な人たちを守るために、彼と契約結婚をすることになるが――。    騎士軍師(40歳)×宮廷使用人(22歳)  ひたすら不器用で素直な二人の、両片想いむずむずストーリー。 ※ヒロインは、むちっとした体型(太っているわけではないが、本人は太っていると思い込んでいる)

【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!

はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。 伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。 しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。 当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。 ……本当に好きな人を、諦めてまで。 幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。 そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。 このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。 夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。 愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

処理中です...