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3.姉達の会話

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 お茶会後、姉達はシルフィールにキールの見送りをお願いし、その間に進捗を話していた。


「キール様に、そろそろ、シルフィとも話しをさせてほしいとお願いされたわ」
 先程まで、話しをしていたリズリーが、キールから申し出があった事を伝える。


「あら、まだ早いんじゃないかしら。先程だって、女性に対してまだ配慮がたりないのだから、急ぎすぎよ」
 三女のマライヤが反対を口にする。


「けれど、デビュタントの日にあの子を助け出してくれた事は、評価してもいいと、私は思っているんだけど・・・あの日、私達では助け出すのは難しかったのだから」
 長女のリズリーは評価していた。


「それだって、実際は妹のシェリー様が背中を押してくれたと、彼は言っていたわよ」
 マライヤは腕組みをして、自分から行動できない人は駄目だという。


「まあ、嘘をつかずにきちんと話すのは高評価よ。きっかけはそうだとしても、あの子と会話したのはデビュタントが初めてだったらしいけど・・・、彼はもっと前からあの子を知ってたみたいだし・・・」

「そうみたいね、聞いているわ。あの子ったら、父に連れられて行った王宮の庭で読書しながら、片手間に父の部下に、アドバイスをもとめられて相手してあげてみたいなのよ・・・。父もなんで連れて行ったのか・・・連れてくなら側で隠しておいてほしかったわ」
 マライヤは呆れたようにため息をつく。

「キール様は、色んな文官が読書中のシルフィの所にかわるがわるやってきては、暗い顔を明るくして戻っていくのが不思議で眺めていたらしいわ。話してる内容が仕事のアドバイスだったらしくて驚いたですって」
 リズリーは、文官にも頼られる優秀な妹を、さすがだと思った。

「それで、あの子を気にかけだしたとか・・・変わってるわよね。普通なら気にもかけないわ。認識阻害の指輪もしてて、容姿だって平凡に映っていたはずなのにね・・・。まあ、外見にひかれたのではなく、あの子自身を見てくれて求婚してくるのだから、外見だけで群がってくる男よりマシなんでしょうけどね」
 マライヤはため息をつく。

「それでも私はまだ、認めないわよ!彼の本性なんて分からないじゃない!話す事を許可すれば、男性なれしてない、うちの可愛いシルフィはたぶらかされてしまうわ!それに、指輪を外している時のシルフィを助けてから、求婚してくるなんて!やっぱり外見に惹かれたとしか思えないわ、見かけたのもたまたまで、話をしているだけかもしれないじゃない!」
 今まで黙っていた、アメリアが猛反対する。
 

「あらあら、うちで1番のシスコンは、厳しいわねえ。ではどうしたらいいのかしら、リア・・・」

 リズリーが、ため息をつきかけると、かけてくる足音が近づいてきた。ドアを開けてシルフィがリズリーに抱きつく。

「フィー?どうしたの?廊下を走って来るなんて・・・可愛いいんだから」
 シルフィは顔をあげず、耳が赤くなっていた。

 アメリアが、リズリーからシルフィを剥がすように離れさせ、顔を覗き込む。
「フィー?顔真っ赤だけど・・・・・・彼に何かされたんじゃないでしょうね・・・」

 シルフィは首を横に振って、否定するがアメリアは納得せずに問いただした。

 少しずつ話し出したシルフィの内容は、どうやらキール様に可愛いと言われた事、去り際に手の甲に口づけされたという事だった。

 アメリアは、シルフィに手を出されて怒り心頭だが、リズリーは、それくらい普通の事だと宥める。
 リズリーがアメリアを宥めるための今の発言で、今度はシルフィの目から涙が溢れだし、姉達は焦るのだった。「」
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