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13.優先順位
しおりを挟むレミリアは屋敷に帰ってきて、心ここに在らずで夕食を食べ、入浴を済ませ、どう寝たかもわかぬまま翌日をむかえた。
そして、いつの間にかいつもとは違う、ハーフアップにされた髪型で、制服をきているのに驚く。
いつもは整えるだけで、長い髪は下ろしたままで行くためレミリア付きの侍女には残念がられるのだが、今日は曖昧な返事でもしてしまったのか、侍女に好きなようにされた様だった。
ルシウスには、おろしたままの方が良いと言われた事があるため戻したかったのだが、いつも通りに戻してと言う間もなく、ルシウスが迎えにきてしまった。
「いいな・・・とても似合ってる」
だが彼はレミリアを見て、いつもと違う髪型に気づき、似合っていると言ってくれる。
それだけでレミリアは嬉しくて口元が緩みそうだ。髪型を変えてよかったとさえ思い、侍女にちらりと視線を送ると、鼻高々で誇らしげな表情だったので笑いそうになった。
「ちょっと考え事をしていたら、いつの間にか侍女がこの髪型にしてくれていたみたいで、似合っているようならよかったです」
「考え事か・・・」
ルシウスはレミリアに近づき、いつものようにエスコートするため手をとられたかと思うと、レミリアの手を自身の顔に近づけ、それが俺の事なら嬉しいと、手の甲に唇を落とした。
ルシウスの行動は予期できないものも多く、またレミリアは顔を赤くして何も考えられなくなり、気付けば既に馬車に揺られ学園についてしまっているのだった。
だが、そんなレミリアのふわふわした幸せな気持ちは、すぐに打ち消された。
ルシウスが馬車を降りるレミリアに手をさしのべたのに、レミリアが手を取る前に・・・彼は踵を返すようにあの子をみつけ駆け寄って行ってしまったから・・・。
彼の手を掴み損ねたレミリアの手は、虚しく宙を彷徨い、行き場をなくして、重力に逆わずに下げられる。
「ルシウス・・・」
レミリアは離れていくルシウスの背中を見つめながら・・・やはり自分は選ばれないのだと悲しくなった。
ルシウスがあの子のもとに駆け寄って行ったのは、令嬢達が彼女を壁に追い詰めるように囲い、今にも彼女に手をあげようとしていたからのようだ。
ルシウスがあの子を助けようと行動したのは、正しいものである事は違いないだろう。だがそれでも、レミリアはどんな理由があろうとも、自分以外を優先されて、少なからずショックをうけるのだ。
・・・そしてそんな自分は、なんて冷たい人間なのだとも思うのだ。
レミリアよりあの子を優先させたルシウスは、彼女達の間に入り背にあの子を庇い、令嬢達を威圧していた。まるでこの前、レミリアが泣かされたと勘違いした時にみせたのと同様にだ。
例え手をあげられそうなのを見たとしても、彼女でなければ、ルシウスは庇いはしなかっただろう・・・。婚約者である自分を放置していくということは・・・レミリアよりあの子の方が大切で、優先されるのは彼女なのだと思わざるをえなかった。
レミリアの目にルシウスがあの子を守る姿を映しながら、心の中では、やっぱり・・・と、いつもの卑屈な自分がつぶやいた。
ルシウスに口付けられたのは、レミリアが婚約解消を言ったがため・・・関係の改善をしようとしただけなのだと・・・そこにはやはり何もないと突きつけられたようで、自身の熱が引いていくのを感じた。
今後、ルシウスがあの子とどうなるつもりなのかはレミリアにはわからない・・・。
婚約を解消しないということは、在学中だけの関係として割り切るつもりか・・・または結婚はレミリアとして、あの子との関係は続けていく気なのかも・・・しれないのだ。今の現状を見ても、後者の方が可能性としては高いだろう。
きっとルシウスと結婚して夫婦関係になっても、今みたいに彼が優先するのはやはりあの子で・・・。
レミリアはこの気持ちを何度も味合わないといけなくなるのかと、それを自分は耐えねばならないのかと・・・。
彼の隣で妻としての肩書をもつことはできたとしても、やはり自分は本当に愛されはしないのだと・・・。
ルシウスがあの子を側に置くなんて考えたくなんてない。もちろんそれを見せられるのも絶対に嫌だ・・・自分はそれほど彼を愛しているから嫉妬する・・・無駄な嫉妬だとわかっていても。
それでも、彼の隣には彼女がいる・・・。
レミリアはどうしたらいいのかわからなかった。彼の隣にいるためには、偽りの関係を受け入れられなければならないのに・・・けれどそれはレミリアにはたえがたかった。
嫉妬で醜くなるなるであろう自分を彼に知られたくない。けれど本当は彼の側にいたいと心では思っているのだった。
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