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64.私達は注目の的
しおりを挟むディミドラ達が会場へ入ると注目が集まる。さすが人気の彼というべきか、女性の視線が圧倒的だ。
ディミドラは普段王都には滅多に来ないため、彼を狙っていた女性達からしたら、いきなり出た婚約者になるのだから、注目されてもしかたないと理解している。
リンジェーラ達も婚約の前に溺愛していると噂があったので、同じように注目を浴びているようだった。
彼らは周りの視線を気にすることなく、堂々とエスコートをしてくれ、嫉妬の視線から守るように遮ってくれる。
入場後すぐに、彼らの周りは騎士団のメンバーが寄ってきて固められた。・・・何故か示し合わせていた様に見える。
「副長、団長、婚約おめでとうございます」
「さすが団長!辺境伯のご令嬢と婚約だなんて、羨ましいです」
「いつの間に婚約者なんてつくってたんですかーッずるいです!」
「むっちゃタイプ」
「・・・はぁ」
「おめでとうございます!誰か紹介して!幸せを分けて下さい!」
「・・・振られたけど、好きだなぁ」
「・・・いい」
そして団員達が婚約のお祝いの言葉を述べてきた。ちらほら祝いの言葉ではないものも混じっているが、彼はまんざらでもないような顔で、ディミドラの腰に手を回してきたので、ディミドラは笑顔でその手をつねっておいた。
リンジェーラ達は互いに見つめあっていて、思いあっているのが伺えた。
参加者が全て入場し終わったようで、皇太子殿下があいさつをしはじめる。
この国の皇太子殿下は金髪に碧眼で、獣人達並みに見目が良く皇太子狙いの令嬢達から熱い視線を集めていた。
実はディミドラには、皇太子との婚約の打診もあったのだが、タイプではないし彼はディミドラの条件を満たせなかったので断った過去があった。
皇太子の視線が少なからず、こちらに向いている気がしたがディミドラは気づかないふりをした。
そんな中、皇太子狙いではない令嬢達が、チャンスはないかとばかりに周りに、こちらにも集まってくる。・・・婚約者を伴っての場にも関わらず勇気があるなと感心してしまう。
タイミングよく、音楽が流れ出し、リンジェーラはディミドラと顔を見合わせ頷いた。令嬢達に囲まれる前に逃げようと・・・。
「ゾディアス様、踊りに行きませんか?ゾディアス様と一緒に踊りたいです」
リンジェーラがゾディアス様を見つめながら、ダンスに誘った。
「ああ、もちろん」
「レナードは?私をダンスに誘わなくていいのかしら?」
ディミドラはリンジェーラ達を見ながら、普段は彼の名前を呼ばないが、あえて口にし自分からは誘わず、彼から誘わすように問いかける。
「もちろん誘うに決まっているだろう。デラは俺のパートナーだからな、俺以外と踊るのは許さない」
きちんと誘えてはいないが、彼はディミドラの手を取りホール中央へすすんでいった。
「貴方達も、周りの綺麗なご令嬢達を誘ってはどうかしら」
ディミドラ達のあとに、リンジェーラは周りへのフォローも忘れずに声をかけ、ゾディアス様にエスコートされて、あとに続くのだった。
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