64 / 75
63.彼女のドレスアップ
しおりを挟むパーティーまでの数日間、専属の侍女に念入りに全身を磨かれたり、ディミドラのために用意された別のドレスや、新しく作られたという庭を見せられた。
彼からは以前宝石店で見せられたブラックダイヤモンドのアクセサリーを贈られたりと、退屈しない日をおくった。
その間屋敷から出る許可はでず、リンジェーラに会いに行く事は許されなかったので、手紙で戻ってきた事を連絡しておいた。まだ彼は、リンジェーラに対抗心でも燃やしているのだろう。
パーティーには、彼から送られたあのドレスを着て着飾り、会場に到着する。彼にエスコートされて馬車から降りると、リンジェーラと待ち合わせをしているであろう副長が既に居たので、声をかけた。
「お久しぶりです。リンジーを待っていらっしゃるのですか」
副長はこちらを見て短く返事を返された。どうやらリンジェーラが来るのを待ち侘び少し緊張している様子だった。
「ご婚約できてよかったですね。お祝い申し上げます。リンジーと一緒に会場入りをする約束をしていますので、リンジーが来るまでご一緒させてください」
もちろんディミドラの側にはピッタリと彼がくっついていて、彼女の名を呼ぶたびに眉をピクリと動かしていた。
今回リンジェーラは副長と通じ合ったので、婚約を受け入れ、これが婚約して互いに、はじめて公のパーティーになる。
婚約をしたが、リンジェーラはまだ番なのだと、話せずにいるようで、今日この期に話をしてみると手紙に決意が書いてあった・・・。
そして、人気が高い彼らとの婚約は、どうせ注目をあびるだろうから、入場は一緒にと約束をしていたのだ。
彼を交えて、たわいない会話をしていると、伯爵家系の馬車が到着し、リンジェーラが姿を現した。
リンジェーラのドレスは、ゾディアス様の瞳の色で、黄金色の生地にスモークグレーのフリルが、オーバースカートのように重ねられているプリンセスラインのドレスだった。
ゾディアス様を思わせる仕上がりのドレスは、リンジェーラにとてもよく似合っている。
ただ露出具合は、リンジェーラの希望にはそっていないようだ。
あまり露出を好まないはずの彼女のドレスは、今回ホルターネックで胸元がシースルー、それに刺繍が施されているものであったからだ・・・。
刺繍がされているため、シースルーだけよりは露出は控えられているのだろうが、彼女が自分で選んだのではないとわかる。
リンジェーラの姿がみえると、副長はすぐに彼女の側に行き手をさしだしていた。
リンジェーラは副長の手をとりながら、彼に見惚れ、副長に何やら囁かれていて照れている様子が微笑ましかった。
「リンジー」
ディミドラはリンジェーラに、声をかけ我に帰ったような顔をした。リンジェーラはディミドラに気づかず、副長しか視界に入っていなかったようだ。
「ふふッ、気づいてなかったって顔ね」
ディミドラはリンジェーラに近づき小声で話しかけ、婚約おめでとうと言った。
「近すぎだ」
だが、すぐに彼がディミドラをリンジェーラから引き剥がしにきてしまう。
「もう・・・ちょっとくらい待てないのですか?会話していただけでしょう」
ディミドラは彼に呆れてしまう。待てができないなんて犬以下だ。
「・・・ああ、駄目みたいだ。俺は心が狭いからな」
彼は開き直って、ディミドラの腰を引き寄せる。その力強さにどれだけ独占欲が強いのだろうとため息が出てしまうのだった。
0
お気に入りに追加
584
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
獣人公爵のエスコート
ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。
将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。
軽いすれ違いです。
書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
番探しにやって来た王子様に見初められました。逃げたらだめですか?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はスミレ・デラウェア。伯爵令嬢だけど秘密がある。長閑なぶどう畑が広がる我がデラウェア領地で自警団に入っているのだ。騎士団に入れないのでコッソリと盗賊から領地を守ってます。
そんな領地に王都から番探しに王子がやって来るらしい。人が集まって来ると盗賊も来るから勘弁して欲しい。
お転婆令嬢が番から逃げ回るお話しです。
愛の花シリーズ第3弾です。
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる