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55.彼の特別
しおりを挟む結局、彼の獣耳を堪能しながらディミドラも頂かれてしまった。いつもよりもしつこい愛撫に、荒々しい抽送で何度も絶頂に達せられた。
退化しているからか、今までとは違った感じで、ディミドラもつい絆されてしまったようだ。
行為自体は明け方まで続いたが、結局ディミドラは、最後まで彼の持久力についていけず、彼の退化が治る前に気を失ってしまうのだった。
そして気がつけば翌日の昼前で、彼の腕の中で目が覚める。彼にはもう耳や尾はなくなっていて、ちょっと残念な気持ちになる。
彼の腕に抱かれて目覚めたのは初めてではないが、いつもとは違った感覚がしてむず痒かった。
「目が覚めたか?」
彼はディミドラが目を覚ますと、起きていたのかディミドラの額に口付けてくる。
「は・・・い」
ディミドラの声は少し掠れて声が出しずらかった。すぐに彼はディミドラのために用意していたとわかる水を差し出してくれる。
ディミドラの声を掠れさせたという自覚があるのだろう・・・用意がいいことだと思った・・・慣れているとも。
きっと彼は、今までも関係があった女性達と、同じような事をしたことがあるのだろうと思った。ほんの少しでもディミドラはそのように考えてしまい、気分が悪くなる。
「大丈夫か?求めすぎてしまった自覚はあるが・・・」
彼はディミドラの表情の変化に気づいたのか、優しく問いかけてくる。彼の甘い表情に、もう無いはずの獣耳が思い出された。
「そうですね・・・でも耳がなくなってよかったですね」
ディミドラは耳がなくなった彼の頭に手を伸ばして撫で、もう獣耳がない事を確かめた。
「まあな・・・あのままでは仕事にも戻れないからな。無理をさせてすまない」
「あの姿で戻れば、他の令嬢達がさらに貴方に好意を抱くでしょうね」
ディミドラはつい口から、嫌味のような言葉がでてしまう。
「・・・嫉妬か?俺はデラに好意を抱いてもらえればいい」
彼は嬉しそうに笑みを浮かべながら、軽く口付けてきた。
「んッ。今までの相手にだって、していたのでしょう・・・こんな風に飲み物を用意してあげたり」
ディミドラは彼の腕に抱かれながら、口付けを受けたが顔を逸らす。
「したことはないぞ?朝まで一緒に過ごしたのはデラだけだ」
彼はディミドラにだけだと言った。
「なら、今まではどうしてたのですか?」
この期に、彼の今までを知りたいと思った。
「・・・あまり女性に喜ばれる事はしていない」
彼は話すのを渋った。
「それでも、貴方にはいつも相手を務める人達がいたのでしょ?」
たくさんの女性達が何人も・・・。
「今日はヤケに聞いてくるな・・・興味を持って貰えて嬉しいが、聞いて面白い話ではない」
彼は話したくないようだ。
「そうかもしれませんが、婚約者なのですから知っておいて困る事はないと思います。これから周囲に婚約を知られるのだったら尚更です・・・」
知らないと知っているでは、これから彼の婚約者としてディミドラが相手しないといけない面倒事の対処が違ってくる。
「・・・くる者は気がのれば相手をして、必要な時は適当に呼び出したりはしていたが・・・誰かを贔屓していたりはしていない。やる事をやれば、すぐに帰っていた」
「デートとかは?」
「どうだろうな・・・食事をしてから相手をしたくらいの記憶しかないな」
内容を聞くに、彼がいいたくなかった理由は、自分が最低な男だとわかってのことだろう。
「・・・よく分かりました」
「幻滅したか?だがこれからはデラだけだと約束する。愛しているのは」
「わかっています。どうせ番なのですから、私しか愛せないのも理解していますし、別に心配なんてしていません」
何も心配なんてしていない。番だから彼はこれからディミドラしか愛せないのだから・・・、彼が裏切ることなんてない。
いくらディミドラが彼を嫌いで拒絶しようが、彼に嫌われることはないのだと・・・。
そう思うと、ディミドラは彼の言葉を最後まで言わせたくなくて遮り、彼の腕から抜け出すのだった。
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